金の貧乏くじ

ritkun

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柏餅 1

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 退魔師は基本的に2人1組で動く。先輩の相棒は毎年新人から選んで一年間だけのコンビ。

 今年の新人は30人。教官が29枚の白い紙を入れた箱に、先輩が金の折り紙を入れる。100円ショップで買ってきた普通の折り紙。先輩が少し細工をしたから、先輩と相性が良くてスタミナのある人が手を入れればその手の中に入るようになっている。

 今年は不作だったそうで、任期があと4カ月ある現在すでに新人くんのスタミナが切れ始めている。

 先輩は相棒と同調してエネルギー的には一体化している。つまり二人分のスタミナを自由に使えるということ。その代わり相棒が弱れば逆に先輩のスタミナが持ってかれる。
 そろそろ持ってかれる状態になりそうで対策を検討中。

 スタミナに関しては本人が気付けば認めてくれるけど口止めされるし、気付かなければそのまま。今年の新人くんは気付かないまま終わるだろう。

 あと4か月だけでも俺が相棒に復活しようかと地区長に申し出たら、あまり長く同調したり不自然に力を使われたりするのは危ないからという理由で却下された。

 せめて普通の生活面だけでもサポートしたいと言ったらそれは任せてもらえた。今から新人くんに代わって先輩のお迎え。新人くんはその間に鍛錬の一環としての瞑想という名目でヒーリングを受ける。

 一年間面倒みてきたんだ。先輩の好みは知り尽くしている。大きな声や音、触ったりして起こされるのは好きじゃなくて、カーテンを開けるのが理想の起こし方。

 今日は曇りだから部屋の電気を暖色から寒色に少しずつ変えていく。大きく寝返りを打つまでは完全な暖色。実家と俺のアパートにある「こだま」と呼んでいた電球は無くて、リモコンで色も明るさも自由自在でタイマーまである。

 起き上がって足を床に降ろしたら暖色のまま一番明るくする。
「先輩、もうすぐこどもの日ですね」

 まだポヤ~っとしている顔に続ける。
「柏餅の季節です」
 先輩が目を開けてちょっと明るい顔になった。

「蒸し直しますから支度はゆっくりでいいですよ。そのつもりで早めに出てきたので」
「え~、なんで~?」

 サプライズをされたみたいな気持ちなんだろうな。嬉しさと戸惑いから出た言葉だと俺には分かる。
「先輩も体力とテンション上げないとって、地区長も了承済みです」
「そうなんだ~。ありがとっ」

 ありがとうの言葉が弾むのは結構嬉しい時。俺は「っしゃ!」って腰の位置で小さくガッツポーズをしながらキッチンに向かう。

 後輩として先輩を、人として弱っている人を気遣うのは当たり前だろ。それが相手に喜ばれれば嬉しいのだってそうだ。これは別におかしなことじゃないよなと無意識に作っていた拳を見つめた。

 去年は餅や餡の種類を変えながら何個食べただろうか。今日は白い餅×こし餡、蓬餅×粒餡、ピンク餅×みそ餡。全部は食べきれないだろうから残ったのは俺が食べる。

 軽く蒸し直したら去年の様子を軽く思い出してちょっと大きくする。ポケットに手を入れてポジションを調整しながら先端をベルトと腹の間に挟む。これでよっぽどのことがない限りバレないだろう。

「先輩、温まりましたよ。何から食べますか?」
「んっとね、やっぱり最初は白かなっ」
「じゃあお茶淹れますね」
 みそ餡の時はコーヒーだから念のため確認したけど、まあそんな気はしてた。

 先輩が両手を合わせる。
「いただきます」

 始まるぞ。
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