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僕は静かに部屋を出た
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それから今の状況をコウちゃんが副社長に話してくれた。副社長が祖父さんと話してくれて、必要な書類は秘書さんが用意してくれた。
両親と祖父さんも揃って書類に名前を書いていく。
ここまでたったの一週間。しかも全員で会えるのが日曜日だっただけで、書類の用意はとっくにできていた。秘書さんすごい。
全部終わって部屋を出る時に副社長がドアを開けて振り向いた。
「ほぼ最後になるんだから、思ってること思いっきり言ってやれよ。外で待ってるから」
「いえ。どうこう思う程よく知りませんから」
即答してから自分の言葉にしっくりきた。そうか。だから僕はユリさんのように失望してないし、コウちゃんのように心配とか親身になるとかもできないんだ。
これは別れじゃない。だって僕たちは出会ってないから。
「それじゃあ、今まで家とお金をありがとうございました。お疲れ様でした」
一つの区切りに、僕は静かに部屋を出た。
10歳になると同時に『もういいでしょ』って、さもそれまではちゃんと親らしくしてたみたいだった両親。コウちゃんがいなかったら淋しくて恨むか感覚が麻痺してたと思う。
親子だからってだけじゃ親子になれない。僕も付き合ってるってだけでコウちゃんとずっと一緒にいられると思っちゃいけない。
それを教えてくれて、餓死と凍死を防いでくれたのは本当にありがとう。
副社長と秘書さんにコウちゃんのアパートで降ろしてもらってお礼を言って車を見送る。
「おかえり」
ドアを開けてくれたコウちゃんがすぐに部屋に戻って行く。
「早かったな。帰って来るまでに作っとこうと思ったんだけど」
コウちゃんを追いかけて後ろから抱きしめた。
「ただいま」
コウちゃんが俺の腕をポンポンと優しく叩く。
「今カスタード炊いてんだよ」
腕を離すとコウちゃんはコンロに向かった。
部屋に入ると、そんなに来たことないのに帰って来たって思う。
コウちゃんがフルーツの入った耐熱皿にカスタードを流し込む。
「冷えるまで待てるか?
アイス乗せてすぐ食べるか?」
「冷えるまで待つ。それまでハグっ」
ハグしてって言おうとして飲み込んだ。甘えてばっかりじゃ重荷になる。
「どうした?」
耐熱皿をレンジに入れて、スタートボタンを押してから僕を見る。
「しっかりしなきゃって思って。
親子だって一緒にいられないんだから、両想いになれたからって甘えっぱなしじゃダメだって決めたばかりなのに」
「全然だよ。今回なんにもできなかったし、母さんのことで嫌な思いさせたし」
「なんにもじゃないし嫌っていうか不安になったけど、この前コンビニで降ろしてもらった時に偶然ユリさんに会ってね、趣味と性格の相性が全然良くないから心配しないでだって」
「会ったのか!?」
「うん。その後すぐに父さんから電話が来て、言うタイミングが無かった」
レンジから耐熱皿を取り出して、数秒ためらってから不安そうに訊いてきた。
「他になんて言ってた?」
「一緒にいたのはただの仲間意識だって」
コウちゃんはホッとしてあっさり頷いた。
「そうだな。楽だった」
「コウちゃん僕といると苦労ばっかりだね」
「苦労だなんて思ったことないよ。そんな風に距離を置かれる方が辛い」
耐熱皿を冷蔵庫にいれて、それから僕の頭をポンポンした。
「うちの子が甘えん坊なのは百も承知だ」
うちの子って言わないでって僕が言うよりも先にコウちゃんが歩き出す。
「ほらおいで」
寝室への扉を開けて振り向いた。
「日曜はしない約束だけど色々あったからな。今日は特別。30分だけだぞ。
玄樹の抜くだけだからそのままおいで」
学校か仕事のある日の前日はしないってコウちゃんに宣言されてる。普段の日曜はどれだけ誘惑しても落ちてくれないのに、時々こうやって許してくれる。結局何かを決めるのはいつもコウちゃん。
甘えてばかりって思ってたけど、単に掌の上なだけ?
「ずるい」
焦らしてやりたいけど体が勝手にコウちゃんに飛びつく。
せめて一時間はこの部屋から出られなくしてやるんだから!
両親と祖父さんも揃って書類に名前を書いていく。
ここまでたったの一週間。しかも全員で会えるのが日曜日だっただけで、書類の用意はとっくにできていた。秘書さんすごい。
全部終わって部屋を出る時に副社長がドアを開けて振り向いた。
「ほぼ最後になるんだから、思ってること思いっきり言ってやれよ。外で待ってるから」
「いえ。どうこう思う程よく知りませんから」
即答してから自分の言葉にしっくりきた。そうか。だから僕はユリさんのように失望してないし、コウちゃんのように心配とか親身になるとかもできないんだ。
これは別れじゃない。だって僕たちは出会ってないから。
「それじゃあ、今まで家とお金をありがとうございました。お疲れ様でした」
一つの区切りに、僕は静かに部屋を出た。
10歳になると同時に『もういいでしょ』って、さもそれまではちゃんと親らしくしてたみたいだった両親。コウちゃんがいなかったら淋しくて恨むか感覚が麻痺してたと思う。
親子だからってだけじゃ親子になれない。僕も付き合ってるってだけでコウちゃんとずっと一緒にいられると思っちゃいけない。
それを教えてくれて、餓死と凍死を防いでくれたのは本当にありがとう。
副社長と秘書さんにコウちゃんのアパートで降ろしてもらってお礼を言って車を見送る。
「おかえり」
ドアを開けてくれたコウちゃんがすぐに部屋に戻って行く。
「早かったな。帰って来るまでに作っとこうと思ったんだけど」
コウちゃんを追いかけて後ろから抱きしめた。
「ただいま」
コウちゃんが俺の腕をポンポンと優しく叩く。
「今カスタード炊いてんだよ」
腕を離すとコウちゃんはコンロに向かった。
部屋に入ると、そんなに来たことないのに帰って来たって思う。
コウちゃんがフルーツの入った耐熱皿にカスタードを流し込む。
「冷えるまで待てるか?
アイス乗せてすぐ食べるか?」
「冷えるまで待つ。それまでハグっ」
ハグしてって言おうとして飲み込んだ。甘えてばっかりじゃ重荷になる。
「どうした?」
耐熱皿をレンジに入れて、スタートボタンを押してから僕を見る。
「しっかりしなきゃって思って。
親子だって一緒にいられないんだから、両想いになれたからって甘えっぱなしじゃダメだって決めたばかりなのに」
「全然だよ。今回なんにもできなかったし、母さんのことで嫌な思いさせたし」
「なんにもじゃないし嫌っていうか不安になったけど、この前コンビニで降ろしてもらった時に偶然ユリさんに会ってね、趣味と性格の相性が全然良くないから心配しないでだって」
「会ったのか!?」
「うん。その後すぐに父さんから電話が来て、言うタイミングが無かった」
レンジから耐熱皿を取り出して、数秒ためらってから不安そうに訊いてきた。
「他になんて言ってた?」
「一緒にいたのはただの仲間意識だって」
コウちゃんはホッとしてあっさり頷いた。
「そうだな。楽だった」
「コウちゃん僕といると苦労ばっかりだね」
「苦労だなんて思ったことないよ。そんな風に距離を置かれる方が辛い」
耐熱皿を冷蔵庫にいれて、それから僕の頭をポンポンした。
「うちの子が甘えん坊なのは百も承知だ」
うちの子って言わないでって僕が言うよりも先にコウちゃんが歩き出す。
「ほらおいで」
寝室への扉を開けて振り向いた。
「日曜はしない約束だけど色々あったからな。今日は特別。30分だけだぞ。
玄樹の抜くだけだからそのままおいで」
学校か仕事のある日の前日はしないってコウちゃんに宣言されてる。普段の日曜はどれだけ誘惑しても落ちてくれないのに、時々こうやって許してくれる。結局何かを決めるのはいつもコウちゃん。
甘えてばかりって思ってたけど、単に掌の上なだけ?
「ずるい」
焦らしてやりたいけど体が勝手にコウちゃんに飛びつく。
せめて一時間はこの部屋から出られなくしてやるんだから!
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