目指せ婚約破棄!〜彼女は今日も勘違いを繰り返す〜

sei

文字の大きさ
2 / 3

デート?いいえ、恋敵です1

しおりを挟む

.+゚*。:゚+◆─∞─◇.+゚*。:゚+◆─∞─◇.+

雲一つない晴天。
鳥達がさえずり青い海のような空を飛び舞う。
デートするには最高の天気だ。
川の近くに置かれた白いベンチ。
そこに座る2人の美男美女は互いを見ることなく只々前を向いて座っていた。

「よくも俺の可愛いサラを使って騙してくれましたね」
「あら、何の事だか私にはさっぱりですわ」

うふふふと笑うエリナの冷たい表情に、少し間を開けて隣に座る美青年は盛大に舌打ちをした。

(サラに呼ばれて来てみれば…)

ウェーヴパーマの掛かった金色の髪を風になびかせ、海のように青いサファイア色の瞳が前髪からチラチラと覗く。

王族の次に古く長い歴史を持つザリュース伯爵家の跡取り息子であるレオンは、苛立ちを隠す事なくエリナを睨み付けた。
五本の指に入るとされる美しい顔立ちが台無しであろう。

「貴方の本当の顔をサラに見せてあげたいですわ」
「その言葉、そのままそっくり貴女に返します」

バチバチッと笑いながら睨み合う2人。
─そう、エリナはレオンの事など好いていないのだ。
彼女の目標は、憎らしいレオンと大好きなサラの婚約破棄なのだから。
サラを手に入れる為の嘘。
人を疑う事を知らないサラの性格を利用したのだ。

「彼女のお人好しにも困ったものです」
「あら、そこが可愛らしいんじゃない」
「知ってます」

バサッと切り捨てたレオン。
彼もまたエリナが嫌いなのだ。
自身とサラの仲を引き裂こうとする邪魔な存在だからである。

「私の恋(嘘)を応援してると言う事は、貴方はサラに好かれていないのですよ。早く諦めて破棄して下さいませんこと?」
「頼まれたら断れない彼女の優しさに付け込む貴女に言われる筋合いはないですよ。それに…死んでもサラを手放す気等ありませんから」


──そう、サラと初めて出会ったあの日から、2人の争いのゴングは鳴っていたのだ。



.+゚*。:゚+◆─∞─◇.+゚*。:゚+◆─∞─◇.+



遡ること5年前。
家柄関係無く集められた子供達だけのお茶会と言う名の婚約者選びが開かれていた。
鮮やかに彩られた花たちが咲く花園の中央。
用意されたテーブル席に座らずみなは将来の結婚相手選びに大忙しだった。

大きな木の下の影になった場所に設けられた特別席に座り、優雅にお茶を啜るレオンとエリナは他人事のように眺めていた。

「好きな人と結婚出来ない世の中だなんて御可哀想ですわね」
「……婚約者のいる貴女が何故ここに?」
「あら、レオンの未来の花嫁になる令嬢を見に来たのですよ」

誰もがうっとりするであろうエリナの微笑み。
レオンは見向きもせず分厚い書物を読みながら流す。

「おい!何故平民が居る!」

突然響き渡った声に、レオンとエリナは顔を見合わせた。
同時にざわめき出した人だかりの中に、赤い頭が見えた。

「貴女、婚約者と一緒に来ていたんですか」
「あらー、説明していませんでしたか?今日の会は彼と私が企画したものなんですのよ」

エリナのにやり顔にレオンは気付いた。

(説明する気など初めからなかったですね。俺の婚約者選びを見たいが為にこんな下らない会を……はぁ…)

昔からそうだった。
目の前でお茶を啜るエリナと言う少女は、悪魔と手を組んでいるとしか思えない程の女なのだ。
そのせいで何度振り回されてきた事か……。

「止めに行きますよ」

バタンッ。と読みかけていた書物を閉じテーブルの上に置くと人だかりになっている場所へと向かった。


「誰の許可を得て来ているんだ。ここはお前のような貧乏人が来て良い場所ではない。おい!誰かこいつをつまみ出せ!」

誰も止める事もなければクスクスと笑っているのだ。
貧乏人と罵られた少女は泣いていた。

(やれやれ……)

それを見たレオンは頭を抱えたくなった。
どうでもいいが、その少女を助けようと彼の隣に立った時だった。

─バシンッ!!

目の前でスローモーションのように倒れる赤髪の少年。
次の瞬間、突然現れた別の少女に叩かれたのだと気付く。
凍り付くその場。

「私の親友を泣かせるなんて許せません!平民だからと言って酷いことをしても良いのですか?貴方に心はないのですか!」
「お前、この俺が誰か知っての無礼だろうな?俺に手を上げて親が黙っていないぞ!」

叩かれた頬を手で覆い叫ぶ少年に、怒りを露わにしている少女が鼻を鳴らした。

「偉いのは貴方ではなく御両親です。それとも貴方はそれに値するほど偉いんですか?」
「…貴方が容赦なく叩いたこのバ…ゴホンッ…この方はこの国の第一王子ですよ」

訂正したレオンは第一王子と知った少女の反応を見守る。
慌てる様子を見てみたい。

そう期待しながら──……

「だからなんですか?一番偉いから何でも好き勝手にして良いのですか?国が成り立っているのは彼女達平民の働きあってこそではないのですか?それを感謝もなく蔑むなんて……貴方が王になったらこの国は終わりですね」


彼女の言葉にレオンの身体に衝撃が走った。
この国の次期国王になる相手にも立ち向かう姿に目が離せなくなった。
彼女を見つめていると、赤い宝石のようなワインレッド色の瞳と視線が重なる。
数秒後には彼女は慌てて頭を下げ平民と罵られた少女の手を引き走り去って行ってしまった。

(会えなくなってしまう……!)

何故かレオンは言葉よりも先に追い掛けるように走り出していた。
けれど2人の姿が見付からず辺りを探す。

「どうしよう…きっと国外追放されるんだわ」

声のする茂みに気付かれないように近付く。
先程まで泣いていた少女が今度は青ざめた顔で彼女に訴えていた。

「大丈夫よ、リリアン。私が全ての責任を持つから安心して?国外追放なら私が行くわ」
「駄目よサラ!そんな事になればおじ様達が悲しむわ!」

(……サラと言うのか。綺麗な名前だ…っと、そろそろ戻らないと……)

2人のやり取りを見ていたレオンは名残惜しそうに静かにその場を離れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

婚約破棄が国を亡ぼす~愚かな王太子たちはそれに気づかなかったようで~

みやび
恋愛
冤罪で婚約破棄などする国の先などたかが知れている。 全くの無実で婚約を破棄された公爵令嬢。 それをあざ笑う人々。 そんな国が亡びるまでほとんど時間は要らなかった。

追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する

3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
 婚約者である王太子からの突然の断罪!  それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。  しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。  味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。 「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」  エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。  そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。 「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」  義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

初夜の床で「愛はない」と言った自分に返ってきたのは「愛はいらない食はくれ」と言う新妻の言葉だった。

いさき遊雨
恋愛
「僕に君への愛はない。」 初夜の床でそう言った僕に、 「愛はいらないから食事はください。」 そう言ってきた妻。 そんな風に始まった二人の夫婦生活のお話。 ※設定はとてもふんわり ※1話完結 の予定 ※時系列はバラバラ ※不定期更新 矛盾があったらすみません。 小説家になろうさまにも登録しています。

初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。

ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。 大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。 だが彼には婚約する前から恋人が居て……?

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...