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松穂

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第2部

歯を剥く弟、水奈瀬萩

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 低く轟くエンジンを切ってバイクから降りた水奈瀬萩は、フルフェイスのヘルメットを外し軽く頭を振って、黄昏の中に佇む小ぢんまりとした建物を見上げた。
 冬の日暮れは早い。仄暗い空の下、その外壁は寒々しい風にさらされているが、ほんわりと灯された外灯は色味が温かかった。窓に下げられたシェードの隙間からも、柔らかく心地よさそうな光が漏れている。
 だがしかし、入口の木製ドアには《Closed》の小さな看板。物言わぬそれは、さりげなくもきっぱり「ま~だだよ」を突きつけてくる。
 腕時計を確認すれば、ディナータイムオープンまであと約三十五分……わかっちゃいるけど、切ない。
 ――腹減った……昼飯、ピザ一枚だけだったもんな……あんなのすぐ消化しちまうぜ……
 ぼやきながら無意識に腹をさする。ちなみに昼飯となったピザ一枚とは、宅配ピザの “Lサイズ” 一枚だ。ついさっきまで一緒にいた友達からは「燃費の悪い身体だな」と心の底から同情された。
 ボケっと突っ立っていれば一際冷たい風が吹きつける。萩はヒュッと身をすくめると、店裏に続く小路に走りこんだ。

 勝手知ったる何とやらで、萩が店の裏口に回れば薄暗い中に浮かぶ白い人影。見知った人間だと認識するや否や、萩は歓喜の声を上げた。
「――よぉ、遼平!」
 顔を上げたコック着姿の遼平は、驚いたように目を見張った。手には大きなゴミ袋を持っている。ゴミ出しに行く途中だったようだ。
「……萩」
「ちょうどよかった! 葵、いる? 久しぶりに飯食いに来たんだけどさー、ちょっと早すぎた。外で待つのさみぃし、中で待たせてくんない?」
 寒さをアピールするように小刻みに足踏みして見せれば、遼平はゴミ袋を足元に置いて気まずそうに目を伏せてしまう。
「ナンだよ、仕事のジャマなんかしねーよ? あ、葵に叱られるって? へーきへーき、オレが叱られっからさ。開店まであと三十分くらいだろ? ちょっとの間だけ事務室の隅っこで待たせてよ。じゃなきゃオレ、凍えちまうよー、……遼平?」
 萩は、おや?と首を傾げた。その場に立ちつくし俯き固まっている遼平を覗き込む。
「……どーした遼平。具合でも悪いのか? あ、今インフルエンザが流行り始めてるんだぞ? ダルかったら葵に言って――、」
「――いないんだ」
「え?」
 聞き返す萩に、遼平は白い息を吐き出した。
「……葵は今日、店にいない」
「……ウソ、休み? だって今日、土曜だろ? 土日祝日に休みなんて、滅多にな――」
 言いかけた萩は、ギョッとする。
 遼平がその目元を歪めたかと思うと、いきなりガバッと頭を下げた。

「――ごめん、萩。……俺、また葵を守れなかった」


* * * * * 


 ――くっそ……っ! どういうことだよ……っ
 萩の乗ったバイクは、街道のネオンを背後に飛ばしながらさらに速度を上げる。

『……おとといの夜、店に、変なFAXが来て……、葵のこと、酷く書いたやつ……、あんなの嘘だ……嘘だけど……でも、あれは……、葵の昔のことを、知ってるとしか思えなくて……』

 甲高く苛立たしげな大型車のクラクション、間一髪際どいタイミングで交差点を右折する。グリップを握るレザーの手袋が痛いほど軋む。視界が狭まりすべての音がくぐもる。

『……みんなが言ってるんだ。店長が危ない、誰かに恨まれてるって。こないだのクレームも、単なる嫌がらせじゃない、誰かが店長を潰そうとしてる、って……』

 心拍が上がる。呼吸が浅い。全身の毛が逆立ち、その五感は――否、第六感まで――フルに研ぎ澄まされる。信号のタイミングを読み、後方車の気配を読み、一瞬のうちに飛んでいく道路案内標識を読む。

『……元はと言えば、俺のせいなんだ。俺……ずっと自分のことで頭がいっぱいで……俺がもっと、しっかりしてたら、店がヤバいことにはならなかった……葵が苦しむことだってなかったんだ。……あのFAXだって、俺がもっと、葵の周辺に気を配っていたら……ゴメン、萩……俺、葵を守れなかった……』

 ――向かうはクロカワフーズ本社ビル。
 訪れたことは一度もないが、大体の住所さえわかれば、後は勘で突き進むのみ。
 萩に備わる野生の勘ともいえる第六感は、苦境に立たされ強く激しい感情に支配されているときほど、鋭敏に精度を増すようだ。
 道路交通法にギリギリアウトなその運転が、ただの一度も然るべき取り締まりを受けないという恐るべき悪運の強さ――これも、その野生の動物がごとき本能の所以かもしれない。
 怒りに染まった萩は、バイクという四肢で黄昏の街を駆ける獣と化していた。


 グーンと鳴る自動ドアを手でこじ開けるようにしてエントランスに飛び込めば、隅にあるソファベンチに腰掛ける人物が、ゆっくりと立ち上がった。
「――もう来たのー? はっやいなぁー、どんだけ飛ばしたのさー」
 やや高めの声で、間延びしたようにダラッと喋るこの男――以前、姉の店の担当マネージャーだった杉浦崇宏。萩も顔馴染みの男だ。
 平静でいたなら、彼の面に隠し切れない疲労が滲んでいるのに気づいたかもしれないが、怒りたかぶった萩は、あいにくそこまで気が回らない。
「ひっさしぶりだねー、また背が伸びたー? まぁ、あんだけ食べてりゃデカくなるよねー」
 あははーと白々しい笑い声を上げる男を、萩は睨みつける。
 まるで萩を待っていたかのような口振りだ。遼平がこの男に連絡したのだろうか。どちらにせよ手間が省けたというものだ。怒りと興奮で上がった息を、丹田に力を込めて抑えつけた。

「――葵は? ここに来てんだろ?」
「アオイちゃんなら一時間くらい前に帰ったよー」
 チッと舌を打つ。
 くっそ、携帯に電話すりゃよかったか……ならばもう一度取って返すしかない。きびすを返そうとすれば、杉浦が「ねぇシュウちゃん」と呼んだ。
「せっかく来てくれたんだし、ちょっとそこでお話しない?」
 少しも気負った様子のない杉浦は、身構えるようにしてじっと睨む萩に屈託のない笑顔を見せる。
「そんなに警戒しなくっても、噛みついたりしないってー。さっきイケちゃんから連絡をもらったんだよ。……ヤザワっちに会ったんだって? シュウちゃんがものすっごい剣幕で本社に向かったって言うから、それを聞いたイケちゃんが念のため、俺に一報くれたってわけ。……ほらほら、杉さんがコーヒー奢ってあげるからさー、一緒にお話しようよー」
 スラックスのポケットに両手を突っ込んだ杉浦は、背を向けてさっさと歩きだし、首だけひょいと振り返った。
「FAXの件も、葵ちゃんの処遇も、全部教えてあげるよ。おいでー」
 ……おいでー、って……、俺は犬じゃねーんだぞ。
 野犬さながらに警戒心剥きだしの萩は、杉浦の背を睨みつけたまま足早に後を追った。
 ――確かに、聞きたいことは山ほどある。


* * * * *


 ――弾かれた椅子が派手な音を立てる。
「――落ち着いてシュウちゃん。……座って」
 思わず立ち上がった萩は、自分の手が小刻みに震えているのを見た。
「――これ、、、葵も見たの?」
「……残念ながら」
 ギッと奥歯が軋んだ。
「――葵のとこに、行かなきゃ……!」
「待ってシュウちゃん」
「葵がっ――、」
「――アオイちゃんのために、座りなさい」
 杉浦の目に見たことのないような鋭い光が差している。叫びたいような泣きたいような衝動を抱えつつ、萩は簡素な椅子の上へ崩れ落ちた。

 エントランスロビーの奥にある誰もいない自販機コーナーの一角。わなわなと震える萩の手に握られた白い一枚の紙。
 杉浦が見せてくれた “それ” は、萩の想像を超えて禍々しいものだった。
 先ほど遼平は、『葵を酷く中傷するFAXが店に届いた』としか教えてくれなかったのだ。どういう内容だったんだ、と杉浦に詰め寄れば、彼はそうくることを予測していたかのように、あっさりと胸元から “現物” を取り出した。
 畳まれた紙を開いた瞬間、萩の目の前は真っ赤に染まった。遼平がこの文面を口にしなかった理由がわかる。口に出したくもない。

「……これが、クロカワフーズの店、全部に、届いたっていうのかよ……」
 真っ黒な文字の一語一語すべてが、悪意と攻撃性に満ちている。ただの悪戯や嫌がらせとは思えない。――あまりにも、具体的過ぎる、、、、、、

 ――いったい誰だ――、葵が《妊娠》したことを知っているヤツ――、しかも《精神疾患》なんて……そこまで知ってる人間ってことか……? 
 刻まれた黒いゴシック文字が、白い紙と一緒にぐしゃりと潰れる。
 一方の杉浦は、萩の激情が通り過ぎるのを待つためか、静かに立ち上がって並ぶ自動販売機の中の一台に向かった。ポケットから出した硬貨を一枚、二枚と入れていく。

「――発信元はね、まだ特定できていないんだー。でも着信したFAXは全部回収したよ。それを見た従業員すべてに緘口令も敷いた。……それからもちろん、FAXに書かれたすべては事実無根で、この悪質な悪戯に関して会社側は断固とした処置を取る、と言い渡してある」
「……ふざけんな」
 絞り出した声までが震えていた。
「――アンタらだってホントは心の中で葵のこと、こういう女、、、、、だって疑ってんだろっ? だから葵を呼びつけて責任だかなんだかで追い詰めて……結局クビにして追い払うんだろっ!」
 力任せに握り潰した悪魔の紙を、目の前の丸いテーブルに叩き付けた。そのまま身を丸めて頭を抱え、わななく五指で髪を掻きむしる。
 杉浦は、萩の激昂にまったく動じることもなく、二本の缶コーヒーを持って向かいに腰を下ろした。

「こらこら、そんなこと誰が言ったのさー。アオイちゃんをクビ? あるわけないでしょー? アオイちゃんはね、被害者なんだ。会社としては彼女を守りたい。少なくとも、うちの上層部はそういう考えだよー」
 ほら、杉さんのオゴリー、と、頭を抱えたままの萩の前にコトリと缶コーヒーが置かれる。
 杉浦はプルタブを開けて一口すすり、鷹揚に脚を組んだ。

「今日アオイちゃんを本社に呼んだのは、一応、アオイちゃんの口からも事情を聞きたかったからだよ。それの内容の真偽を問いたいわけじゃない。……慧徳にFAXが届いた時の状況とか、他にも何か被害を被ってないか、とか。そういうのを聞きたかっただけ。……彼女の精神状態を見て、仕事の継続が可能かどうかも判断しなきゃならなかったしね。……本当はね、上の人間が慧徳へ足を運ぶつもりだったんだけど、アオイちゃんがそれを断って自分が本社ここに来るって言ったんだ。店のスタッフを気遣ったんだろうね。だから来てもらった……それだけだよ」
「……葵……葵は」
 萩は呻く。杉浦はもう一口すすった。
「……俺は今日、彼女に会ってないけど、話をした徳さん……ああ、俺のボスに当たる人ね……彼が言うには、アオイちゃん、ずいぶんしっかりしていたって。……ご迷惑かけて申し訳ありません、ってちゃんと頭を下げて、泣くことも言い訳することもなく、聞かれたことに従順に真っ直ぐ答えてくれたって。……徳さんは、アオイちゃんのその姿勢に感心してたなー」
 しんみりとしたその言葉に、萩はようやく頭を上げた。
 ぼさぼさに掻き回されたその頭を見て、杉浦は少し笑う。
「――シュウちゃん。俺はねー、アオイちゃんが、過去にどんな経験をしていても、彼女を蔑視したりしないよー? こう見えてもこの杉さんは人間観察がライフワークなわけよ。一緒に仕事をしてきて、ずっと彼女を見てきた。だからわかる。君のおねーちゃんは、どこに出しても恥ずかしくない素敵な女性だよね。優しさと思いやりにあふれ、芯の強さを持ったとびきりいい女だと、俺は思うよー」
 そんなこと言われなくたって、弟のオレが一番よく知ってるさ――、言い返したい言葉は喉の奥で詰まり、萩は柄にもなく目の奥がほんの少し熱くなった。

「……なんで、葵なんだよ……どうして葵ばっかり、こんな目に合うんだ? あいつはいつだって一生懸命で、自分のことより周りのことばっかり気にかけて……、誰かに恨まれるような人間じゃねーんだよ……なのに、どうして――、」
 言いかけた途中で、小さなひらめきが脳裏をかすった。
「まさか、……伊沢……か?」
 姉の過去の “汚点” とも言える一人の男。葵の傷を知っている、、、、、あの男なら、FAXにあった具体的ないくつもの単語を、悪意をもって連ねることもできるのではないか。
 葵とあの男は、積み重なった誤解を解いたうえで完全に決別している。今年の夏の終わりのことだ。――だが、葵はそのつもりでも、向こうがそうでなかったら――、
 まさかあの男、ヨリを戻せなかった腹いせに、こんな嫌がらせを――、

「――違うよ」
 萩の思考は杉浦の一言で断ち切られた。スチール缶片手に脚を組み、じっとこちらを見つめる杉浦は、萩の考えを読んでいたかのように言う。
「それって、アオイちゃんの元彼でしょー? 犯人はその人じゃないよ」
「……犯人、って……」
 その言い方は、まるですでに、わかっている、、、、、、ような口振りじゃないか。
 杉浦は、ちらりとガラス越しのロビーへ視線を走らせてから、手に持っていた缶をテーブルに置いた。

「――シュウちゃんには、はっきり言っておく。今回のFAX送信、犯人は社内うちの人間だ」
 お恥ずかしながらね、と杉浦は苦く笑う。
「動機はおそらく “逆恨み” だな。ギトギトにこびりついて固まった妬みや憎しみの矛先が、運悪くアオイちゃんに向かっちゃったんだ。……君のおねーちゃんは優秀だからね」
「……っ、そこまでわかってんなら、なんでとっ捕まえねーんだよっ!」
 ガオガオ吠える萩に、杉浦はケロッと言う。
「証拠がない」
「しょ、しょうこ……」
「 “動かぬ証拠” ってやつだよ。……実は今、うちの会社の中でさ、いくつかおかしなことが起こってるんだよねー、まだ断定はできないけど、今回のFAXも含めて、色んなことが根っこのところでつながっている気がするんだなー。雑草って根っこから取り除かなきゃ、また生えてくるでしょ? 犯人を捕まえるだけじゃダメなんだ。すべての罪を明るみにして、元凶を排除して、アオイちゃんの汚名を完全に晴らさなきゃ意味がない。そのために今、色々な人が陰で動いている。……ユージもね」
 萩は「あ」と口を開けた。
 姉のことばかりに気を取られていたが、FAX用紙の最後の部分……これって、ナンだ?
 ――ナンで、黒河サン……? 

「……あのさ、オレが言うのもナンだけど、あの人も巻き込まれたんだよな」
「……うーん……巻き込まれたというか……巻き込んだというか……」
 ブツブツとよく聞こえない声で濁す杉浦に構わず、萩はもう一度皺くちゃになった白い紙を広げる。
「――だって……ここのさ、最後の部分だけおかしくね? なんで黒河サンなんだ? ……なんか、ここだけ取ってつけたような、ヘンな感じ。黒河サンが葵をヒドい目にあわすなんてあり得ねーよ。そんなことする人じゃねーだろ」
 すると杉浦は、大きく見開いた目をパチパチと瞬いて、そしてFAX用紙を見た。
「取ってつけたような……、ね」
「ん? なに?」
「いやいや、こっちの話。……ていうかシュウちゃん、ずいぶんユージを買ってくれるんだねー? いつからそんなに懐いちゃったのー?」
 ニヤニヤ。人の悪い笑みを浮かべる杉浦に、萩は何だか尻のあたりがもぞもぞとなった。
「そんなんじゃねーよ。……ただ、あの人になら、葵を任せられるかなって思って……」
「あっはは、シスコンブラザーからそんな言葉をもらえるなんて、ユージも第一関門は突破じゃなーい?」
「オレはシスコンじゃねーって!」
 萩は、まだ温かさの残る缶コーヒーを憤然と取り上げ、力任せにプルタブを開けた。
「どーでもいーけどその『シュウちゃん』ってやめてくんねー?」
「んじゃ、パンダっぽく『シュウシュウ』っていうのはどう?」
「パンダっぽくの意味がわかんねーよっ」
 歯を剥きだす萩に、再び杉浦はアハアハと楽し気に笑って、笑った顔のまま言った。

「……シュウちゃん、このFAXはあちこちに送られちゃったけどさ、これを見てめちゃくちゃ激怒した人って、結構多いんだよね。みんな、こんなものを送りつけてきた犯人に、、、、、、、、、、、猛烈な怒りを感じてる。つまり、ユージとアオイちゃんの潔白を信じている人間は社内にもたくさんいるってこと。……だからさ、この件に関しては、俺を信じて待っててくれない? 必ず、犯人を暴いてアオイちゃんの汚名は晴らすからさー」
 ゴクリと嚥下したコーヒーは濃くて苦い。萩は顔をしかめて頷いた。
「わかった。……葵がクビにならないんなら」
「なるわけないってー。なんでそう思ったのさー」
「遼平がそんなこと言ったんだよ……葵が責任取らされるかもしれない、って」

 店の裏口で萩に向かって頭を下げた遼平は、苦悶に歪んだ顔で、葵は今日、本社に呼ばれていると言った。
 ……葵を中傷するFAXは他の店にも届いていて、社内は今、大変な騒ぎになっているらしい……こないだの異物混入から、慧徳の店は立て続けに問題が起こっているから、もしかしたら葵はいよいよ、何らかの責任を取らされるかもしれない……
 身を震わせて、遼平はそんなことを言った。
 だから萩は、制止する遼平を振り切ってバイクに飛び乗り、クロカワフーズ本社へ突進したのだ。
 葵が責任を取らされるなんて納得がいかない。葵が何をしたっていうんだ、葵を陥れようとするヤツは、いったいどこのどいつなんだ――、と。
 本社に押しかけたところで、実際どこの誰に訴えればいいのか――そこまで考えが及ばないところが、萩なのである。

「なるほどね……まぁ、お姉ちゃん想いなところは褒めてあげるけどさー、感情に任せた突発的な行動は危険を伴うよ? 気をつけないと」
 ここへ来るまでの道のりを、決して模範的とは言えない運転で飛ばして来た萩としては、そう言われればふて腐れるしかない。
「……遼平が、なんかメチャメチャ追い詰められたような顔、してたからさ……」
「たぶんヤザワっちは、自分に責任を感じてるんだろーねー」
「――葵を、守れなかった……って?」
 聞き返した萩に、杉浦は「あの子はそう思ってるのかな」と苦笑する。
「実はヤザワっちにね、本店への引き抜き話が上がってんの。いわゆる青田買い、みたいなもんかなー。あの子の腕は今じゃ、アルバイトにしておくには勿体ないほど上がってるからね、コックとしての素質を会社が期待して、欲しがっているんだよ」

 残っていた缶コーヒーをぐいと飲み干してから、杉浦はその詳細を説明してくれた。
 学生なのに『櫻華亭』本店から引き抜きの打診を受けたのは、クロカワフーズ史上二人目となる快挙であること……学校がまだあと一年残っているので、学生をやりながらアルバイトとして入ることになるが、このまま『アーコレード』にいるよりもっと高度な知識と経験が得られるだろうこと……さらに今よりも時給は上がり、当然クロカワフーズへの入社も約束されること……など。

「……スゲーんだな、あいつ……そんなこと全然話してくれねーから、オレ知らなかった」
 素直に感心する心に反して、つい拗ねるような口調になった萩に、杉浦がくくくと笑う。
「ヤザワっち、オクゆかしいからねー」
「それって、ミズくさいっていうんじゃねーの?」
 耐え切れないようにくつくつ笑う杉浦を、萩は缶コーヒー越しに睨んだ。
「じゃあ、あいつは葵ンとこから、その本店ってとこに移んの?」
「うーん、実はまだ、ヤザワっちから返事がもらえてないみたいなんだよねー。まぁ、来年春からでも遅くないってことだし、ゆっくり考えろって佐々木チーフも言ってるんだけど。……色々あって迷ってるんじゃないかな」
 萩の脳裏に、ついさっき会った遼平の辛そうな顔が思い浮かんだ。
「あいつ……自分のことで頭がいっぱいだった、って言ってた」
「うん、たぶんそのことで悩んでたんだろうねー。いきなり本店って言われても戸惑うだろうし、何より本店でバイトすることになったら下宿してもらうことになりそうだからさー」
「下宿、か……」
 『櫻華亭』の本店は、今いる本社ビルの表側にあるそうだ。となると、ここから遼平の自宅まで毎日通うのはキツいかもしれない。
 ここの職種は仕事終わりが遅いのだ。学校は朝早くアルバイトは深夜まで。夜は当然、電車もないだろうから、自宅から通うなら足は原付しかない。効率がよく負担の少ない下宿を勧められるのは必須だろう。
「ヤザワっちって、お母さんと二人なんだってねー。母親を一人残して下宿するっていうのは、けっこう勇気いるのかもしれないねー」
「そっか……」
 頷きつつも萩は何となく、本当に理由はそれだけなのかな、と思った。
 慧徳あそこから離れるということは、つまり、葵と離れる、、、、、ということで――
 杉浦は「それでね」と、テーブルに頬杖をつく。
「ヤザワっちが悩んでる真っ最中に湧いて出たのが、あの異物混入でしょ? アレって明らかに虚言クレームなんだけどさ、ヤザワっちは仮にも、仕込みを任されていた立場だからねー」
「ああ、わかるよ」
 真面目な遼平のことだ。自分が仕込んだ料理に異物混入があれば、真っ先に集中力を欠いていた自分のせいだと思うだろう。それが “やらせ” だとわかっても、「ナーンだ、オレのせいじゃねーじゃん。よかった」とスッパリ気持ちを切り替えることなど、簡単にはできないだろうな、と思う。……萩の知る遼平という人間は、そういう男だ。

「……サイトに載ったやつ、オレも見たよ。ずいぶんえげつねーなって思った。でも、ウソっぱちなんだろ? まさかそのせいで、遼平の引き抜きの話がなくなったわけじゃ――、」
「ないない。ヤザワっちのせいじゃないのはわかってるし、本店は今でも彼を欲しいと思ってる。それに変わりはないよー」
 杉浦の言葉に、萩はホッと肩の力を抜いた。
「じゃあ、慧徳の店が潰されるかもしれない……なんていうのも、遼平の考えすぎなんだな」
「え……何それ。どういうこと」
 いきなりトーンが落ちて、杉浦の目が怪しい光を放った気がした。萩はわずかにたじろぐ。
「い、いや、オレは知らねーって。遼平がそんなこと言ってたんだよ。クロカワフーズの中に、慧徳の店を潰したがっている人間がいる、って。みんながそう言ってるって」
 危うい沈黙が数秒間……――と、何事もなかったように杉浦はコロッと元に戻った。
「んー、たぶんそれ、カッシーが余計なことペラペラしゃべってるんだな。ネチッこい予防線を蜘蛛の巣みたいに張り巡らすやつだから」
「……かっしぃ?」
「ああ、シュウちゃんは知らないんだっけ? 柏木っていう『アーコレード』担当の新しいマネさん」
「うそっ、黒河サンじゃねーのっ?」
 だってこないだまで……と言いかける萩に、杉浦は「十一月から正式にねー」と言う。

「ちょっと社内で色々あってね。ユージはホテルの方へ戻ることになったんだ。その代わりに、新しく昇格したカッシーが『アーコレード』の担当になったのさー。……悪い奴じゃないんだけどねー、真面目すぎて融通利かないロボットみたいな男でさー。よく喋るんだけど、言わなくてもいいことまでペラペラ言っちゃうからさー。しかもネチッこいし」
「あ、今、アレが思い浮かんだんだけど。アレだアレ、SF映画のさ……金色のロボットでカクカク動いてさ」
「おー、シュウちゃんも知ってるのー? そうそうアレアレ。カッシーはアレの生まれ変わりだからねー」
「マジでっ?」
「――杉浦さん」

 突然割り込んだ第三者の声に、萩も杉浦も電気が走ったように振り返った。
 自販機コーナーの出入り口に立つ一人の男。
 向かいに座った杉浦から微かな舌打ちが届く。弛緩しきっていた杉浦が一瞬にして警戒モードとなったのが、萩にはよくわかった。
「どーも、片倉さん。全然気づかなかったなー、どこから湧いて出たのさー」
 声だけはにこやかに出しつつ、杉浦はさりげなく立ち上がりながら、テーブルの上に出しっぱなしの皺くちゃなFAX用紙を素早く折り畳んでスラックスのポケットへ捻じ込んだ。
 真っ直ぐ杉浦を見据えて大股でこちらへ向かってくる男は、どこか剣呑とした空気を纏っている。
 浅黒い肌に薄ら生えた無精ひげ、やたらと野性味を感じさせる男だ。年齢は兄よりも上か、それとも同じくらいか。オリーブ色の艶のあるダウンジャケットに濃紺のデニムというカジュアルな服装。しかしその眼が鋭い。猛禽を思わせる双眸に、萩も立ち上がり身を固くする。

「――杉浦さん」
 もう一度そう呼んだ男は、ふと隣に立つ萩へ目を移し、少し首を傾げて探るように凝視してきた。
 ――ナニか、ついてマスか?
 無遠慮な視線を払いのけようとしたところで、杉浦が「ああこの子はねー」とやんわり間に入る。
「水奈瀬萩くん。アオイちゃんの弟だよ。……シュウちゃん、そんなに毛を逆立てなくても大丈夫よ。この人は敵じゃないから」
 杉浦が苦笑する一方で、片倉という男は少々驚いた顔をした。が、すぐに納得したように頷くと、「敵ではないけど、葵ちゃん以外の人間に味方する気はないんでね」と、再び険しい眼になる。
 ――なんだコイツ、葵と知り合いか……?
 萩はますます毛を逆立てる。基本的に人懐っこい末っ子気質が主流の萩であるが、葵が絡むとどうも懐疑心が強くなるようだ。……萩に自覚はない。
 自覚のないまま喉の奥が鳴り始めた萩を、片倉はスルっと無視して杉浦に向いた。

「――今日は黒河統括部長に会いに来たんですよ。お留守でしたけどね。……ああ、気を悪くしないで下さいよ? 杉浦さんからの “交渉” は受けますが、“窓口” は一つに絞らなきゃならないってルールはないでしょう?」
「ご随意に。間口が狭くならなきゃいいけどねー」
「こじ開けますよ。クロカワフーズさんとはいえ、俺は容赦しませんから」
 萩にはチンプンカンプンの話だ。それだけでイラっとする。
「――それはそうと、ここへ来る時、葵ちゃんを見かけたんですよ。向こうはこっちに気づかなかったようだけど」
 ピクリとわずかに眉を上げた杉浦は、しれりとした顔で「ああそうなんだ」と返す。
「何か本社に用事があったのかなー? 俺は何も聞いてないけどねー」
「誰が本社で見かけた、、、、、、、、と言いました? 俺は、地下鉄の駅へ向かう大通りで見かけたんですよね」
 さすがの杉浦も顔を不快そうに歪めた。萩のイライラは急上昇が止まらない。
「ねぇ、アンタいったいナニが言いたいの? 言いたいことははっきり言えよ」
「――シュウちゃん」
 たしなめる杉浦を押しのけ一歩踏み出そうとしたところで、片倉という男は萩に向いて小さく口端を上げる。
「顔立ちは似ている部分もあるけど……葵ちゃんとはずいぶん中身が違うようだな。それはそれで面白いけどね」
「――だからナニが言いた――」
 吼えかけた萩を杉浦が抑え、片倉は再びするりとかわす。
「――杉浦さん。今言った通り、ここへ来る途中の大通りで葵ちゃんを見かけました。ずいぶん思い詰めたような目をして、顔色も良くなかった。声をかける前に彼女は信号を渡ってしまって、結局かけそびれてしまったんですけどね。……気になりながらもここへ来て、上の社長執務室に行き、ノックしようとした時、中から聞こえてきたんですよ。男性の声が」
 杉浦の口が小さく開きかけて、それを封じるように片倉が声を張り上げる。
「『――先ほど水奈瀬店長との面接を終えました。……精神的な異常は見られません。だいぶ疲労は溜まっているようですが。……来週の月曜から出勤可能でよろしいですか? ……あのFAX用紙はすべて回収し、今は杉浦が保管しております。……わかりました、統括に回すよう伝えておきます。……いえ、被害届に関して彼女からは何も』……その男性一人の声だけだったので、電話で話していたんでしょうね。……盗み聞きなんて言わないでくださいよ? ドアは閉まっているのにずいぶんクリアに聞こえるから、こっちもビックリしたんですよ」
 そこで、杉浦は諦めたように嘆息した。
「社長室のドア、どういうわけか音が筒抜けなんだよねー……」
「……葵ちゃんに何があったんですか? “あのFAX” って、何ですか?」
「申し訳ないけど、色々と社外秘なもんでー」
「さっき社長執務室にいた “徳永ジェネラルマネージャー” さんも、まったく同じことを言ってたな。こっちの手札は全部見せたっていうのに、この期に及んで “社外秘” とは……よっぽど表沙汰にしたくないものなんだろうね――さっきそのポケットに隠した紙は」
 猛禽の目が、ポケットに突っ込んだままの杉浦の手を捉える。
 萩はすかさず杉浦の――ポケットに隠されたものの――前へ飛び出した。
「――てめぇっ、いい加減にしろよっ、ナンでそんなこと教えなきゃなんねーんだよ! 部外者のアンタには関係ねーことだろがっ!」
 余裕を見せていた片倉が一変した。
「俺は興味半分で訊いているんじゃない! 君の姉さん――葵ちゃんは今、窮地に追い込まれている! 一刻も早くそこから助け出さなきゃならないっていうのに、社外秘だの部外者だの言ってる場合じゃないんだ!」
「アンタに何ができ――」
 牙と爪を剥きあう猛獣と猛禽の間に「こらこら」と杉浦が割って入った。
「……わかったよ、全部話すから。……ったく、ひとまわりも下の子相手に突っかかるのはやめなさいっつーの。……さぁさシュウちゃん。あとはこの杉さんにお任せして、今日はもう帰りなさい」
「でもっ――」
 依然、片手はポケットに突っこんだまま、杉浦はもう片方の手で萩の肩をポンポン叩く。
「大丈夫。この人、葵ちゃんの、、、、、味方だそうだから。それに――」
 肩を叩いた手が、萩の腹を軽くボスッと小突いた。
「お腹空いてんでしょ? さっきからシュウちゃんのお腹、猛抗議してるよ」
「――え?」
 と瞬いた途端、グォォと身体を揺るがすような腹の虫。
 ……オイこら、ちょっと、恥ずかしーじゃねーか。
 盛大に顔をしかめて腹をさする萩に、杉浦はくつくつと笑う。
「ご馳走してあげたいのは山々なんだけど、杉さんは今からこのオジさんを片付けないとならないからさー」
 ムッとしたような片倉を、杉浦は軽く顎をしゃくって自販機コーナーの出入り口へ促した。
「気をつけておかえりー。安全運転でねー」
「――ちょ……っ、杉浦さん――っ、」
 抗議しかけたところで、再びグゥゥゥ……
 くっそぅ、と腹を押さえている間に、杉浦と片倉は自販機コーナーを出て、エレベーターホールとは逆にある灯りの消えた通路の奥へ歩いて行ってしまった。

 ――すっかり忘れてたっつーのに……さっき飲んだ缶コーヒーのせいだな。あれが腹ン中を刺激して、腹減ってたこと思い出したんだ。
 どうでもいい分析を施す萩の中心部では、一斉に目覚めたらしい腹の虫たちが、グォォ、グゥゥとひっきりなしの大合唱だ。つい「ちょっと待てって!」と声に出して叫んでしまう萩も、だいぶおかしい。
 一人ぼっちでその場に残された萩は、恨めしい気分のままロビーへ出て、エントランスの自動ドアに向かった。

 杉浦の話を聞き、逆上していた怒りの炎はとりあえず鎮火したが、よくわからないことばかりですっきりしない。あの片倉という男のことも気になる。
 だが、物事を理論立てて考えることが大の苦手ときている萩は、杉浦の話や片倉とのやり取りから、何かを導き出すことなどできるわけがない。
 よって、できることは限られている。

 ――まずはメシだ。そんで……葵のとこに行かなきゃ。……そーだ、明日休みだし、アパートに泊まらしてもらおっかな。……確か蓮兄、今日はイベントで遅くなるって言ってたし。……つーか、蓮兄にあのFAXのこと……、……言えるわけねーよなぁ……

 姉を思い、兄を怖れる水奈瀬萩――こうして彼は知らずうちに、再びの修羅場へ、向かうこととなる。





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※ しつこいようですが、道路交通法ギリギリアウトな運転など言語道断でございます。
  皆さま、安全運転を心がけましょう。
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