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後々話
Tボーグと子鹿、各々考える
しおりを挟むくぐもった水音が盛んに湧いている。
水を掻く腕が重い。肺が軋む。――残り五メートル、三、二……
タッチと同時に水面から滑り上がれば、外界の音が一気に戻り、頭上から声が降ってきた。
「――いいね。三秒差」
その声に、不服そうな眼で見上げるのは隣レーンの男。
「マジで? もう少し差をつけたと思ったけど」
水奈瀬蓮が、荒い息を吐きながらゴーグルを外す。差し出されたストップウォッチの表示を見て、納得がいかない顔だ。
同じように荒い息を整えつつ示されたタイムを見て、侑司は内心驚いた。
久しぶりの個人メドレー200mは、むしろ、自己ベストタイムより数秒良かった。競った相手――水奈瀬蓮は、かつて日本選手権出場を果たした実力を持つ。上手い具合に引っ張られたのだろう。
ゴーグルを外して軽く頭を振った侑司に、頭上のTシャツと短パン姿の男――青柳謙悟が、爽やかな笑みを向けた。
「黒河って、ずいぶん肩が柔らかいね。体幹もしっかりしてるし、余計な力が入ってないからラストの追い上げが強いよ。どこかで習ってる?」
侑司が答える前に、蓮が侑司の通うスポーツクラブの名を挙げて、謙悟は目を見張る。
「ホントに? 生島や重枝がいるとこじゃん」
「名門だろ?」
なぜか得意げな蓮に、侑司は少し苦笑した。
実のところ、ここしばらくはほとんど訪れていないスポーツクラブだ。どうせこの先も通えそうになく、そろそろ退会しようかとも考えている。理由を聞かれると面倒なので、あえてここで言うつもりもないが。
「これでマスターズには興味ないとかいうんだから、勿体ないよな」
ちらりと揶揄する視線をこちらに向けた蓮のキャップ頭を、謙悟の拳がぐいと押した。
「蓮は他人のこと言ってられない。体軸がブレすぎ。手先から腕までが下がってる。肩が硬い。どんだけ泳いでないんだ?」
「仕方ないだろ。お前と違ってこっちはしがないサラリーマンだ」
「これ、200じゃなくて400だったら、蓮は完全に抜かれてたよなー」
青柳謙悟が屈託なく笑う。
青柳家の長男だという彼は、水奈瀬蓮とは幼馴染にして長年の好敵手だったようだ。こうして笑う彼は、弟の青柳伸悟よりも年下に思えるような若々しさがあった。現役を引退してここ――アオヤギ・スイミングのコーチに就任したと聞いたが、Tシャツ越しでもその体躯が見事なフォルムを保っているとわかる。
蓮の腕が水面を勢いよく叩いた。
「よし、謙悟。個メ400の勝負だ。俺と黒河で200ずつ行く」
「おいおい、容赦ないハンデだな」
突っ込んだ謙悟は、それでも問うような眼でこちらを見る。
もちろん異存はないと、侑司は頷いた。
しかしその十分後、侑司・蓮VS元オリンピック代表・青柳謙悟の個人メドレー400m対決は、十秒以上の差をつけて、青柳謙悟が悠々とゴールした。
「――黒河。まだ時間があるなら、メシ、食いに行こうぜ」
プールから上がって更衣室へ向かおうとする侑司に、蓮が声をかける。
一瞬、ちらと彼女を思ったが、まだ昼をいくらも過ぎていない。帰ってくるのは早くても夕方以降だろうと自身に言い聞かせて了承した。
今日、このアオヤギ・スイミングへ来たのは、水奈瀬蓮の誘いがあったからだ。
侑司と同じく、蓮も今日は休みだったそうで、久しぶりに泳がせてくれと旧友の青柳謙悟に連絡を取ったところ、そこで侑司の話が出て、ダメもとで誘ってみるか、となったらしい。
連絡を受けたのが午前十時前、ちょうど本社でひと仕事を終えていた侑司は、しばし迷った挙句、誘いに乗った。
「――今日、葵は? 店は休みなんだろう?」
隣でシャワーを浴びる蓮が声を張り上げた。先ほど水中ウォーキングのクラスが始まったらしく、シャワー室内には侑司と蓮の他に誰の気配もない。
「仕事仲間に誘われて遊びに行っている」
「へぇ、仕事の仲間ね……葵は、新しい職場で上手くやってるのか」
「ああ、よくやっているようだ。そこの上司からも、順応性が高いと良い評価をもらっている」
「それはよかった」
シャワー室を出てロッカーが並ぶ更衣室に入る。大手のスポーツクラブほどの規模はないが、整然とした室内は新しい匂いがする。つい数か月前に、リニューアル工事が入ったばかりだと聞いた。
「――で、お前も休みなんだろう? 貴重な休日だというのに、葵はお前をほったらかして遊びに出かけたわけか」
「……そういうわけじゃない」
タオルで頭を拭く侑司の脳裏に、しゅんと萎んだ彼女の表情が過った。
牧野昭美の自宅に呼ばれたという。黒河さんも一緒に、と嬉しそうに期待する顔を曇らせたのは侑司だ。仕事があると言ったのは嘘じゃないけれど、結果として嘘にしなかった、と言った方が正しいかもしれない。
けれどそれは、彼女のプライベートを、交友関係を尊重したいと思ったからだ――というのは言い訳になるのだろうか。
「……あいつは、難しいだろ」
ふと問われて、侑司は着替える手を止めた。
「我が妹ながら、いい女に育ったとは思うよ。変にスレてないし愛嬌もあるし、協調性や柔軟性もあるから大抵の人間には好かれるタイプだ。俺や萩みたいな兄弟の中っ子で、しかも周りには我の強い癖のあるヤツが多かったからな、常に周囲のバランスを上手く取ろうとする習性が身に着いたんだろう。分け隔てなく接して、人を和ませ毒気を抜いてしまうのは葵の利点だ。見た目はこの際置いておくにしても、気立てはいいし働くことの労苦は厭わないし、嫁にするにはなかなかの物件だよな」
ここまで身内を褒めちぎる男も珍しい。侑司は呆れた一瞥をくれてやるが、蓮はどこ吹く風の顔でロッカーからシャツを取り出し、音を立てて広げた。
「――だが、難点もある。あいつは、女の見せ方を知らない」
何が言いたい……と怪訝な顔になる侑司の横で、蓮は手早くシャツに腕を通していく。
「なまじ男ばかりの環境で育ってきたからか、女特有の駆引きを知らないんだよ。適度に甘えられて、たまに弱さを見せられて、無条件に頼ってくれれば、男の自尊心なんて簡単に満たされるものだ。けれどあいつは、そんな高度なテクニックを持たない。自分のことは自分で解決しようとする。持てる優しさや愛情は誰彼構わず均等に施す。愛されるための特別な工作をしない。工作すること自体が念頭にないからな」
そこで蓮は、挑発するような眼を侑司に向けた。
「だから、あいつに惚れた男は、常にいくばくかの不安を抱えることになる……本当に俺のことが好きなのか? 俺がいなくても平気なのか? 俺じゃなくてもいいんじゃないのか――そして、抑えられなくなった不安が一気に暴発する。…… “伊沢尚樹” が、典型的な良い例だ」
侑司の眉根がさらに寄った。二度と耳にしたくない名だ。
只ならぬ目線に気づいたのか、蓮はムッとしたような顔でねめつける。
「いいか、俺はお前の義兄になるんだぞ? 義兄として忠告してやっているんだ。人を焼き切るような眼で見るのはやめろ」
だったらその不快な名を出すのはやめろ、と心の中で歯噛みしつつ、侑司は荷物をバッグに詰め込んだ。
過去の一切合切を含め、彼女のすべてを手に入れたつもりだ。昔の男など気にする価値もない、この先彼女と生きていくのは自分なのだ――そう、頭で何度も繰り返してしまうのは、そこに不安があるからなのだろうか。
二度と会うはずもない男に、嫉妬するほどに……?
「それでも、葵はお前のことを愛しているよ。この俺が言うんだから間違いない。そして俺は、あいつの選んだ男がお前でよかったと思っている」
ロッカーを閉めようとした手が思わず止まった。
見やった蓮の顔は至って真剣、至極真面目だ。どれだけシスコンなんだ、と心底呆れる。
「妹離れ宣言か」
すると、蓮はフンと鼻を鳴らした。
「親離れ、と言ってもらいたい。親父が逝ってから、俺は父親のつもりであいつを見てきたんだ。俺の代わりにあいつを守ってくれるやつが現れたんなら、俺の役目は終わりだ。……と言っても、俺はあいつを、守ってやれなかったけどな」
自嘲的な笑みを浮かべて、蓮はスポーツバッグを手にロッカーの扉を閉めた。
この兄は今でも、妹が負ってしまった深い傷痕を憂い自責している。悔恨の念ゆえだと思えば、人並み外れた過干渉を嘲弄することはできなかった。
更衣室を出て、受付のある一階フロアに降りて、スタッフTシャツを着た小柄で快活そうな女性に挨拶をして、――青柳謙悟の母親なのだそうだ――侑司は蓮とともに外の駐車場に出た。
「この近所に旨い店がある」と言う蓮に指示されるがままSUVを発進させた時、何となく頭に浮かんだ質問が口をついて出た。
「……親父さんは、どういう人だった」
「うちの親父? そうだな……おおらかで穏やかな人だったよ。怒鳴られたり殴られたりした記憶はない。理学療法士っていう職業柄もあるんじゃないか? ――ああ、そこを左だ」
閑静な住宅街、SUVは細い路地をいくつか曲がる。
「遺影を拝見させてもらった。……お前に似ているな」
助手席の蓮はこちらを見て笑った。
「ああ、葵と二人で宮崎に行ったんだってな。お袋が喜んでいたよ」
ひと月ほど前、改めて挨拶をしに宮崎へ行った。その際、彼女の母のアパートへも赴き、小さな仏壇に手を合わせたのだが、遺影で微笑んでいる水奈瀬響介氏の面影は、ここにいる長男が一番色濃く受け継いだように思われた。
「よく言われるよ。俺が父親似で、葵と萩は母親似だ。それで、萩が母親っ子、葵が父親っ子だった」
フロント越しに、蓮の視線は遠くへ飛ぶ。
「懐かしいな。葵はちっさい頃から、親父にベッタリだった。萩が産まれたのは、葵が三歳の時……まだまだ母親に甘えたい盛りだろう? でも、お袋は赤ん坊の萩にかかりきりだ。葵なりに我慢したんだろうけど、寂しくて甘えたくて……、で、親父が仕事から帰ってくるなり、飛びついてたな。――次を右」
小さな交差点を曲がると「この道をずっと真っ直ぐな」と言って、蓮は再び続けた。
「……親父の足にくっついて離れないんだよ。だから、親父は葵の担当だった。風呂に入れて寝かしつけて。やっと寝たと思って、親父が居間でちょっと仕事をしてたりすると、決まって葵が起きてグズってな。仕方ないから、親父は背中に葵をおぶって仕事をしていたよ」
「背中に……」
「おんぶ紐、ってやつがあるだろ? アレで縛って……親父も今でいうイクメンってやつだったんだな。布団で寝付かせるのは一時間かかるのに、背中におんぶすると一分もかからないって笑ってたのを、覚えている」
黙ったままの侑司に構わず、蓮は楽しげな様子で語った。
「小学校、中学校へ進んでも、葵は変わらず “父さん大好き” だった。部活や勉強のことなんかもよく相談してたし、親父と二人だけで出かけることもあった。あれは完全なファザコンだよな。親父としても、一人娘の葵はちょっと特別だったかもしれない……――ああ、あそこだ……あの赤い屋根の中華料理店。古い店だが味は確かだ」
蓮が指し示した先に見えたのは、古くて小さな料理店だ。看板には『中華料理 香苑』とある。
店前の狭い駐車場にSUVを入れてエンジンを切った時、シートベルトを外した蓮が、じっと侑司に視線を注いだ。
「そういえば、黒河は少し、うちの親父に似ているかもしれないな……」
「似て、ないだろう……」
突然何を言い出すんだ……と、侑司が怪訝な顔で見返せば、蓮はさらにまじまじと凝視してくる。
「いや、容姿じゃない。雰囲気というわけでもないが……」
本気で考え込んでいる様子の男を残し、侑司はさっさと車から降りた。……が、頭の片隅では何かが揺らいでいる。そこにあるのは彼女の、寂しそうな――、
次いで助手席から降りた蓮は、「そうか」と何かに思い当たった顔で呟いた。
「娘が父親に似た伴侶を選ぶ……っていうのは、あながち嘘でもないんだな」
湿った生温かい風に乗って届いた蓮の声音は、どこか追慕の色を帯びていた。
* * * * *
「いらっしゃーい! どうぞ入ってー!」
玄関のドアが開け放たれるや否や、明るく元気な声が葵たちを出迎えた。
「こんにちはー。今日はお招きいただきまして」
「ヤだ葵ちゃん、そんなに改まんなくていいから」
大きく笑いながら上機嫌で「入って入ってー」と促すのは牧野昭美女史である。
ノースリーブ、マキシ丈のワンピースはエスニック柄、長い黒髪も高く結い上げられてずいぶんエキゾチックな装いだ。現在妊娠六か月だという彼女の下腹部は、それとわかるくらいにふっくら出てきているが、元々スレンダーな体躯なので、背後から見ればまだ妊娠しているとわからないだろう。
「よぉー、いらっしゃい。駅からここまで、わかりやすかっただろ?」
そして、女史の後ろからひょこっと顔を出したのは、昭美の夫の牧野晃治。今や押しも押されもせぬ『櫻華亭』日比谷店の料理長へと就任した彼なのだが、仕事を離れれば相変わらず柴犬のような無邪気さである。
「お邪魔しまーす。牧さん、ここってメチャメチャ利便性のいい場所じゃないですか」
「ホント、地図を見るまでもなかったな。五分もかからなかったし」
早速わらわらと玄関に上がるのは、大久保恵梨と諸岡良晃だ。最寄りの駅で待ち合わせて葵とここまで一緒に来た。
「駅からは近いんだけど、色々とね」
苦笑する昭美は、「どーぞー、適当に座ってー」と居間へ三人を促す。
こざっぱりと片付いた六畳ほどのリビング、中央にあるローテーブルの上には、すでに料理の大皿がいくつも並べられている。
「うわ、すげー、これ全部、牧野チーフが?」
細目を見開く諸岡の横で、大久保も感心したように息を吐いた。
「料理が得意な旦那って最高ですよね。牧さんが羨ましい」
「大久保……あんた、飲食業の男とは結婚するもんじゃないって言ってなかった? 言ってたわよね、葵ちゃん」
「アハハ……そうでしたっけ。――あ、牧野さん。これ、お土産でーす」
「あら、気を遣わなくてよかったのに」
牧野女史と会うのは実に三か月ぶりだ。リビングに立ったままわいわいと四人の声が入り乱れる中、晃治がさらなる料理の大皿を持ってきた。
「はいよ、パスタが出来上がりー。積もる話は食べながらしよーぜ」
本日のおもてなし料理はイタリアンのようだ。テーブルにはカプレーゼやカポナータ、白身魚の香草焼き、地鶏のトマトソース煮込みなど盛りだくさんである。魚介がたっぷりシーフードパスタとクリームソースのフィットチーネを持ってきた晃治は、「今オーブンにピザが入ってるから」と言って、訪問者三名はさらなる感嘆の声を漏らした。
昨晩に多少の下ごしらえはしたものの、今日は一時間ほどで全て作ったというのだから、さすがは『櫻華亭』の料理長を務めるだけのことはある。
妊婦に気を遣って、皆がアルコール抜きのドリンクで乾杯したけれど、美味しい料理とそれぞれの近況報告に、その場は愉快で陽気な笑い声がテンション高く弾け飛んだ。
「牧さん、来月から出勤って……ホントに大丈夫なんですか? すでに結構、膨らんでるんですけど」
「大久保…… “膨らんでる” って」
フォークを持ったまま、じとっと女史の下腹部に目線を注ぐ大久保に、諸岡が突っ込んでいる。昭美は「なーに言ってんの、これからまだまだ大きくなるんだから」と言って、カラカラと笑った。
「ホントはできればこのまま、家でじっとしていてほしいんだよね。でも働くって聞かないから」
悩まし気な溜息を吐く晃治に、隣の諸岡が悲壮な声を上げる。
「俺も牧野チーフに賛成です。店で何かあったら、俺、どーすればいいんですか?」
来月から、仕事復帰予定の牧野女史は、臨月間近まで渋谷店店長の諸岡を補佐する予定だ。勤務時間は短くすると言っているが、諸岡にとって妊婦と一緒に働くなど初めての経験であり、今から戦々恐々となっているらしい。
心配症の夫が、ガッシと諸岡の肩を掴んだ。
「諸岡。何かあったら、まずは俺に電話ちょーだい。いや、仕事中は取れないから店に電話だ。それで、産婦人科の番号も教えておくからそこにも電話。それから――、」
「ちょ、ちょっと待って下さい、メモりますんで」
慌てて携帯端末を取り出した諸岡は、晃治が挙げていく連絡先を余すことなく入力している。
昭美は苦笑して大久保は半眼になり、葵はつい吹き出してしまった。
「葵ちゃん、本店はどう? 『アーコレード』とは違うから苦労することも多いでしょ」
フィットチーネを小皿に取りながら昭美がくるっとした目を向けた。葵はちょっぴり、居住まいを正す。
「はい。カルチャーショックの連続なので毎日必死です。でも皆さんによくしていただいて。ホントに助けられてます」
「またまたケーンソーン。物覚えもいいし気配りも上等だし、優秀なアテンドで助かってる、って仙田支配人が言ってたよー?」
からかうように覗き込んだ大久保の隣で、昭美も悪戯っぽく笑った。
「私も噂は聞いてるわよ。国武チーフが葵ちゃんを構い過ぎるとか。今田顧問が葵ちゃんにピッタリ張り付いているとか」
「え、まさかコンダヌキ、葵ちゃんにまた良からぬことを……」
「い、いえ、何もされてないです。むしろ、色々丁寧に教えて下さって……」
「んふふ、今田顧問の相手してあげるの、葵ちゃんしかいないのよ」
「なーる」
的を射た昭美の注釈に大久保は大きく頷き、モッツァレラチーズとトマトを一遍に口の中へ入れた。
「そういえば黒河マネージャー、来られなくって残念だね。相変わらず忙しいの?」
人一倍の食欲を見せる大久保は次にシーフードパスタへ手を伸ばし、ごっそりと小皿に取り分ける。
「汐留の移転先、決まったそうだし、これからしばらくは大変になるかもね」
「そうですね……」
小さく答えた葵は、ぶり返しそうになる重い鈍痛を努めて抑え込んだ。
昨夜、侑司とは何となく気まずくなったままである。先にベッドへ入った葵は、しばらく悶々としながら眠れなかったのだが、結局侑司は、葵が寝付くまで寝室に入ってこなかった。
しかも、今朝葵が起きた時には、すでに仕事へ行ってしまったらしく侑司の姿はなかったのだ。葵の胸の奥に澱んだ寂しさと不安は、そのまま持ち越すことになってしまった。
焼き上がったピザを持ってきた晃治が「そうそう」と加わる。
「俺、侑司に色々訊きたいことがあったのになー」
「わぁお、これも牧野チーフのお手製ですか? 冷凍ピザじゃなくて?」
「大久保……お前、ホントに失礼だぞ。――って、黒河マネージャーに何を訊きたかったんですか?」
諸岡の問いに、晃治と昭美が代わる代わる説明するところによると、牧野夫妻は近々引っ越しをしたいらしい。
新しい家族が増えるにあたり、今の賃貸マンションは少々手狭な上、周辺地域はごみごみとした商業施設なので、子育てには向かないのだそうだ。
行く行くのことを考え、思い切ってマンションを購入したいのだけれど、初めてのことで不明な点も多い。そこで、つい最近ドーンとマンション購入した侑司に詳しい話を訊きつつ、情報収集したかったのだという。
「すみません、私、その辺のことはよくわからなくて」
葵は、侑司が万全に整えた環境の中へするりと入り込んだけだ。不動産に関する知識はほとんどない。
眉尻を下げた葵に、昭美がパタパタと手を振る。
「やだ、葵ちゃんが謝ることじゃないでしょ。いいのよー、今度晃治くんが黒河くんに直接訊くから」
「俺、大金が絡む話はあんまし得意じゃないんだけどね」
おどけるように口元をへの字にした夫に、妻はキッと目を剥いた。
「だから、私が不動産屋を回るって言ったじゃない。それをヤメてくれって止めたのは晃治くんでしょ? だったら晃治くんが動かないで誰が動くの」
「身重の身体で無茶するからだよ。こないだ検診から帰ってくる時なんか、雨が降り出した、洗濯物がヤバいって、全速力でダッシュするんだもんな」
「……牧さん。妊婦の自覚が足りない」
大久保が厳かにツッこんで、昭美は「だって」と口を尖らせる。
「妊娠中は歩き回った方がいいのよ。先生だってそう言ってたの。適度に身体は動かした方がいいって」
「飛んだり走ったりしろとは言ってないよ。ハルちゃんのおかげで俺がどれだけハラハラドキドキ……」
「牧さんに似て、強い子が生まれますねー、きっと」
「ハルちゃんに似て、美人で強くて、危なっかしい子になるんだろうな」
「え……ってことは、女の子なんですか?」
「そうなのよ、前回の検診で判明したの。女の子だって」
「牧野チーフ、今からデレデレじゃないですか」
「うん、すでに顔がデレてる」
皆の笑い声を耳にしながら、葵はぼぅっと牧野夫妻を眺めた。
そこにあるのは、幸せだ。これまで二人が紡いできた時間、積み重ねてきた愛情が、明るく輝く実を結んでいる。二人で一緒に成した実だ。きっとこの先も、たくさんの大きな幸せが生るのだろう。
葵にはとても眩しくて、ひどく羨ましい気がする。
「――葵ちゃん?」
昭美の声で我に返ると、皆の眼が葵に向いていた。
誰かが何かを言う前に、葵はすかさず手に持っていた一切れを掲げる。
「あの、このピザ、すごく美味しいです! トッピングに何を乗せているんですか」
「ああそれはね、トマトと黒オリーブと缶詰のアンチョビ。アンチョビってお手軽にワンランク上の味が楽しめるからおすすめだよ。ただし塩っ気が強いから、使うときはちょっとでいいかもな」
「なるほど。これは絶妙の塩加減ですよ。ホントに美味しー」
大きな口を開けてピザを頬張る葵に、昭美と大久保は一瞬だけ目を見交わした。
「……葵ちゃん。もしかして私、葵ちゃんにイヤな思い、させてる?」
牧野女史がそう気遣わし気に尋ねたのは、食事が終わり片付けながらデザートの準備をしている時だ。
夫の晃治と諸岡の男二人は先ほど、昭美の「ベルガモット・ピーチティーが飲みたい! あそこの、コンビニ限定の!」というご要望(勅命)を受けて、近所のコンビニまで出かけて行った。今は、昭美と大久保、葵の三人しかいない。
「とんでもないです! 私、イヤな思いなんかしてません」
咄嗟に否定して、すぐに悟った。
昭美はわざと、晃治と諸岡を外に出したのだ。葵の様子を憂慮して。ということは、自分でも知らぬうちに、昭美を気遣わせる何かが表へ出てしまっていたのだろう。
申し訳なさと情けなさで胸が痛み、気遣ってくれた優しさが胸に沁みる。
だから、ついポロリと零した言葉は、本心なのだと思う。
「……私、羨ましいなって思ってたんです。牧野さんと牧野チーフの……、何ていうか、支え合っている関係が、すごく」
空いた皿を重ねる手を止めて、昭美と大久保は再び目を見交わす。
「……黒河マネージャーと、何かあった?」
大久保が葵を覗き込んだが、葵は曖昧に首を振るしかない。
特に何があったわけじゃない。喧嘩したわけではなく、不満があるわけでもない。
あるとすれば、それは――、
「……私は、黒河さんの重荷になっていないでしょうか」
――それは、自分自身への劣等感だ。
ほんのひと欠片、口をついて出た心苦しさは、途端に溢れて止まらなくなった。昨晩から――いや、彼と一緒に暮らし始めた時から少しずつ――溜め込んだものは、ほんの少し開いた風穴から一気に飛び出してくる。
優秀で万能な彼。優しくて懐の大きな彼。葵にとって彼は、尊敬する人であり包み込んでくれる人である。一緒にいるのは嬉しい。恋人であることは誇らしい。――けれど。
今の葵と侑司は、とても支え合っているとは思えない。葵が一方的に支えてもらっている。対等ではないのだ。時々それが、申し訳なくて心苦しくて、不安になる。
お互いの想いが通じてつき合い始めた時から、葵と侑司の天秤は侑司に傾いていた。常に彼の負担が大きいのである。新居にまつわる手続きすべてを侑司が請け負い、引っ越しの段取りも侑司がほとんど采配してくれた。新生活が始まってからも、葵が生活しやすいようにと気を配ってくれる。金銭面に関しても葵はほとんど出す必要がないうえ、家事的なことはしなくていいと言い、仕事場への送り迎えをしようと努めてくれて、元々少ない休みさえも合わせようとしてくれる。
侑司ばかりが葵のために労力を割いている。彼ばかりが葵を支えて、葵は彼を支えることができない。そこに感じるのは、彼と葵の圧倒的な差異だ。
「だからせめて、仕事だけでも早く慣れて、少しでも彼の立ち位置に近づけるようにって、頑張ってはいるんですけど、どんなに頑張っても、黒河さんとの距離は縮まりません。私がちょこっと進んでも、彼はそれ以上、もっと先に行ってしまうんです」
単なる上司と部下なら、それでいいのだと思う。差異はあって当然で、隣に並ぼうとしなくていい。ひたすらに後ろからついて行けばいい。
けれど恋人となれば、それではいけない気がする。それでなくとも葵の周りは、黒河侑司と水奈瀬葵をワンセットで見る人が多いのだから。
「……私と黒河さんを比べることが、そもそも間違っているのはわかっています。でも、同じ本店で黒河さんは支配人を経験していて、たった数年で目に見える素晴らしい結果を残していて……そう聞くと、どうしても自分の不甲斐なさが際立って見えて、情けないんです……だから、もっともっと頑張らなきゃ、って思うんですけど、結局、私は自分のことに精一杯で、黒河さんの役には立っていないんだな……って」
前に伊沢尚樹とつき合っていた時は、こんな悩みを持った記憶はなかった。当時葵は学生だったけれど、社会人であった伊沢に劣等感を抱いたことはないと思う。
同じ会社で一緒に暮らす仲――そんな近すぎる関係ゆえに、かえって二人の格差が際立って見えるのだろうか。葵は、彼と自分の間にある距離が、ひどく不安で仕方がないのだ。
――もし彼が、一方的に支えるだけの関係にうんざりしてしまったら……
だんだんと重く項垂れていく葵に、黙って視線を注いでいた昭美と大久保は、そこでシンクロしたように大きく頷いた。
「なるほどね……そういうこと」
「よくわかったわ――黒河くんが葵ちゃんのことを、真綿でやさしーく包んで、めちゃくちゃ大事にしていることが」
「え……?」
ポカンと顔を上げれば、二人の先輩は意味ありげな笑みを浮かべている。
「噂には聞いていたし、ある程度予想はしていたけど、やっぱりね、って感じ」
「そうね。黒河くんの溺愛ぶりは、今更驚くほどのことじゃないわね。どっちかっていうと、葵ちゃんの疲労度の方が心配かな」
「いえ、私は、疲れてなんかな――」
首を振りつつ否定の声を上げた葵を、牧野女史がピッと人差し指を立てて制した。
「葵ちゃんはすばり―― “六月病” ね」
「六、月病……?」
聞いたことがない症状に葵は首を傾げる。大久保も不審そうな目だ。
「五月病ならよく聞きますけどね。牧さん、即席で作りました?」
「違うわよ!」と吼えた昭美は、一つ咳払いをして講釈に入る。
「五月病は有名だけど、六月病っていうのもあるの。それも五月病と同じく、新しい学校や職場での異動、引っ越しとかの環境の変化が原因で、精神的な疲労が溜まってしまう症状なんだけど、最近の社会人は、六月病の方が多いって言われるくらいなのよ? 葵ちゃんの場合、住むところと職場が一気に変わったでしょ? 良くても悪くても、環境の変化っていうのは意外とストレスになるの。葵ちゃんが思っている以上に、葵ちゃんの心は疲れちゃっているんじゃないかな」
ふぅむ、と頷いた大久保が、さらりと黒髪を揺らして葵を覗き込む。
「どう? 葵ちゃんに自覚症状はないの? 朝、仕事に行くのが億劫になったり、食欲が湧かなかったり、夜に眠れなかったり……とか」
葵はゆるゆると頭を振った。
「仕事へ行くのがヤだなと思ったことはないです。ご飯もしっかり食べてますよ。賄いはすごく美味しいですし。夜は……」
言いかけて、そういえば、と思う。六月に入った頃から、何度か夜中に目が覚めることがなかったか。
普段は一度眠ると朝まで起きない性質なのだ。だから途中で目覚めるのは珍しいことなのかもしれない。――と同時に、五年前の災厄が思い返された。
……眠れない夜、うなされて起きる日々……何かあると、自分は睡眠に影響が出るのではなかったか。でも、そこまで病んでいるはずはない。
記憶を巡らし、葵はつい最近、夜中に目覚めた時のことを思い出してみる。
ふと目覚めたからといって、特に身体の不調があるわけではない。水を飲んだり手洗いに行ったりすることはあるが、またすぐに眠ることはできる。
ただ、抜け出したベッドへ戻る時、何となく元の位置へ――侑司の腕の中へ――戻ることに躊躇った気がする。何故、躊躇したのか自分でもよくわからない。彼を起こしたくないと思ったのか、それとも……
言葉を途切れさせた葵に、昭美が「ほら」と心配顔になる。
「心当たりがあるんでしょう? そういうこと、黒河くんにちゃんと話してる?」
大きく首を振る。
「心配させたくないから?」
コクンと頷く。
話すほどのことでもない。夜中に起きてしまうことくらい誰にでもあることだろう。毎夜ではなく、時たまそうなるだけだ。
葵は昔、一度精神的に病んだことがある。その時はほとんど毎日眠れず食べられず、外で出歩くこともままならず、本当に辛かった。それに比べれば、今現在はまともだと思う。幻聴を聞くこともないし、夢にうなされるわけでもない。余計なことを言って、さらに彼の心的負担を増したくはないのだ。
だけれど、昭美も大久保も揃って「それが間違い」と指摘した。
「いいんじゃない? 心配させて。葵ちゃんにとって黒河マネージャーは、もう他人じゃないんだし」
大久保が肩をすくめて言えば、昭美も「そうね」と同調した。
「迷惑かけたくない、心配させたくない……って気持ちは悪くないのよ? 相手のことを想ってのことだから。そこを否定するつもりはないけど、大切で大事にしたい人なら、気にかけて心配するのは当然のこと。その気遣いを拒絶してしまうのは、良くないと思う。葵ちゃんだって、黒河くんが仕事で忙しそうだったら、身体は大丈夫かな、疲れてないかな、って心配するでしょう?」
「はい……それは心配します……けど」
「だったら、黒河くんが葵ちゃんのことを心配するのも、受け入れてあげなきゃ」
受け入れる……小さく呟いた葵に、昭美は「そうよ」と笑う。
「その上で、葵ちゃんの望みもしっかり出していくべきだと思うな。もっと家事をしてあげたい、とか、送り迎えの数を減らして欲しい、とか。そうやって、お互いの嬉しいことも嫌なことも全部出し合って折り合いをつけながら、少しずつ居心地のいい関係を作っていくのよ」
「さすが、既婚者の言うことは説得力がありますね」
「うるさい」
小突かれそうになった大久保は大きくかわして「それとさ」と葵に向く。
「黒河マネージャーと仕事で対等になろうなんて思わない方がいいよ。葵ちゃんと彼は、元々上司と部下の関係から入ったんだし。自分の女が自分より仕事できるなんて、男に取っちゃプライド崩壊だもん。ああ、黒河マネージャーがどう思うかはわかんないけど? でも、大概の男ってそういうとこ気にするんだよね」
「……あんたも十分説得力があるわよ」
じとっと横目で見やる牧野女史。「結婚してませんけどね」と嘯く大久保。二人の掛け合いが面白くて、葵は思わず笑ってしまった。
葵が笑顔になったことで、二人もホッとしたようだ。何となくそこで、三人は手の止まっていた片づけを再開させる。
「アレよ、たぶん葵ちゃんの周りで、黒河くんの話をしたがる人が多いんでしょ。国武チーフとか田辺サブチーフとか、『昔の侑坊はこんなで、あんなで』とか言ってそう。それで、葵ちゃんは受けなくてもいいプレッシャーを感じているんじゃない? それも “六月病” の一つの原因だと思うわよ」
皿を重ねながら昭美が言えば、グラスをお盆に集める大久保も頷いた。
「あー、わかるかも。本店の人たちって良くも悪くもお節介な人が多いですもんね。特に厨房は古株メンバーが多いし。でも、それってからかってるだけだよ。黒河マネージャーの話を出した時の、葵ちゃんの反応を見て楽しんでるだけ。葵ちゃんは牧さんと違ってからかい甲斐があるから」
「ちょっと大久保、今日はちょいちょい、私に対して失礼じゃない?」
「なんか毒素が溜まってるみたいで。牧さん夫婦のラブラブオーラに中ったんですかね」
「私と晃治くんをサルモネラ菌みたいに言わないでくれるっ?」
再びポンポン言い合う二人に笑いながら、葵は妙に納得する自分がいた。
六月病――本当にあるかどうかは知らないが、具体的な症状名が出されたことで、逆に自分の精神状態を俯瞰して見ることができた気がする。
新しい職場に彼との新生活、早く慣れようと必死になっていたのは事実だ。仕事場で侑司の話が出るたびに、勝手に自分と比較して劣等感を抱いていたことも否定できない。
もしかしたら侑司は、そんな葵の切羽詰まった焦りを感じ取っていたのかもしれない。送り迎えをしてくれるのも、家事はしなくていいと言ったのも、葵の力量不足を鑑みたせいではなく、葵の精神状態を心配してくれたためなのかもしれない。
改めて、申し訳なさや自己嫌悪は募る。身体的不調なら、栄養や休息で何とかなりそうなものだが、精神的不調はその対処がなかなか難しい。自分自身のことなのに上手くコントロールができないことがもどかしい。どうにかして、この焦燥感や劣等感から脱却する術はないのだろうか。どうすれば……
「じゃあ、葵ちゃんに一つ、とっておきの魔法を教えちゃおう」
昭美の声で我に返った。うふふと意味ありげに笑う彼女に、葵はパチクリと瞬く。
「これを実践すれば、もしかしたら、色々なことが少しずつ、いい方向に変わるかもしれないわ。葵ちゃんにはちょっぴりハードルが高いかもしれないけど……やってみる価値はあると思うの。どう?」
コクリと喉を鳴らして、葵は大きく頷いた。
牧野夫妻のように、葵も侑司の支えになりたかった。あやふやな地盤ではなく、確固とした信頼の上に二人の関係を築いていきたい。そのためにできることは、何でもしたい。
「では、可愛い後輩のために教えてあげましょう。今日、帰ってからすぐにでも実践できる、ハルミさん一押しのミラクルマジックとは――」
芝居がかった美魔女が高らかに披露した、とっておきの魔法。
それは、確かに葵にしてみれば、ハイレベルな高等魔術と言ってもいい難題だったのである。
葵が絶句して途方に暮れた時、玄関のドアが開く音がした。ビニール袋をガサガサさせながら、男二人がリビングに入ってくる。
「――ただいまー! ハルちゃーん、雨、降ってきたー」
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