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第4章
10 迷い道 迷い言
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チドリはヴァリウスが覗いていた窓の外に視線を送った。最上階にいた時の景色とはまるで違うことにホッとしていた。青々しく伸びる草花。それらを撫ぜる風を視覚で感じていた。地上に近い分、自然の豊かさを痛感していた。最上階にいた頃は、地平線まで砂漠しか見えなかった。赤茶けた砂に頼りげなく立ちすくむ木。萎れている草花。干からびた川。餌を探しに飛んで来る鳥の姿もない。
それに比べて今は小鳥は囀り、蜜蜂は花を求め飛び回り、リスやネズミ達は木の上で談笑していた。
外から来る訪問者は聖典を読みに来たり、神官の話に耳を傾けたり、美しい花畑に酔いしれたり、ティータイムには意見交換をしたりした。
外から来る者には、ぼくは立派な神官に見えるだろう。清廉潔白な神官と崇めてくれるはずだ。
「ここはぼくだけの楽園だ」
水と光と花を司る神殿。
いつまでも美しい場所。
世界中の人々の幸せを守りたいと願っていたのに、ぼくはぼくがいる場所しか守ることができなかった。祈りが通じなかった。無論、これがシャドウとの能力の差だ。世界中とか壮大なイメージを夢見ていたぼくには、目の前で転ぶ者がいても目に入らない。シャドウはマリーのことしか見えてなかったから、目先が近い。ぼくが見逃した怪我人を助けることができる。
ぼくは国土が砂に変わっても、単に一部の事象に過ぎないと放っておいた。各地の領主が嘆いても天気の動きをコントロールできるものではないと笑った。それに常に晴れというわけにもいかない。植物のためにも時に雨、曇り、雪や雹だって必要だ。
「それぐらいなんだ」がぼくの口癖。それぐらいで怯えるな。心配するな。ぼくは大神官になる者だぞ。それぐらいの事象に恐れ嘶くものか!
ぼくに任せてついて来い!と見せた背中には、多くの部下達が列をなした。私も私もとぼくの意見に賛同する者がいた。それが虚勢だと気がつく者はこの時点ではいなかった。
ただ、父と母を除いて。シャドウも心配そうにぼくを見ていた。そうこうしていたら、あの事件が起きた。シャドウとマリーを失った神殿は、あからさまにぼくを忖度してきた。大神官の息子だから忖度などなくとも進路は決まっていたが、周りはぼくをちやほやし、浮かれた。迷い道を思い浮かべたりもしたが、結局はぼくもその流れに身を投じた。
ある日、両親がぼくを呼んだ。
ぼくが誇らしく世界を救おうとしている姿に感銘したのだろう。
「お前には無理だ」
父が言った。
母も同様に頷く。
「どうして?」
息子の頑張る姿を誇らしいとは思わないの?と問うと、
「お前の行く先には絶望しか見えないからだ。お前には世界は救えない。時期にここも砂に埋もれるだろう」
各地の領主と対策を練らんといけないなと父が側近に話した。
側近は一礼をして、そそくさと出て行った。
「絶望だって?随分酷いことを言いますね。父様」
「…本当のことだ。こんな惨事になるものなら、もっと早くお前に伝えておくべきだった」
父の隣で母が涙ぐんでいた。父の暴言に心を痛めているのだろうと勝手に思い込んでいた。
「母様が泣いてますよ」
目尻の深い皺に老いを見た。いずれ、父も母も退陣する。そうしたら、ぼくが大神官になる。ここまで育ててくれた恩を返さなければならない。立派に成長した姿を見せてやりたい。
ぼくの手が母の肩に触れるか触れまいのところで、
「…ああ。血筋を絶やさぬ為とはいえ、力の無い者に跡を託さないといけないなんて…。神よ、お許しください」とぼくを見向きもせずに祭壇に向かって膝をついた。
母がさめざめと涙を流す姿は何とも異様な光景だった。
「…力が、無い?」
一人息子の立派な姿に対し、なんたる侮辱行為だ。笑って済む話では無いけれど、わざわざ泣いて嘆くほどか?
ぼくには何にもわからなかった。両親の大げさにも取れる振る舞いに、頭が追いつかない。
「まだわからないのか?…お前には神を崇める才が無いということだ。世界中の人々を救いたいだなんて笑わせてくれるわ。己がいる場所でさえ危ういのに。
…祈りなど、届くはずがない」
父は母の肩にポンと手を置き、一緒になって頭を下げた。いずれ大神官になったら、己れの息子が立つ場所に向かって、
「…シャドウが息子ならよかったのに」とあり得ない言葉を口にした。
「…なんです、それは。…酷いな。笑えないよ」
今やシャドウは罪人だ。ぼくを裏切り、幼きマリーを巻き添えにして下界の夢を植え付けた。挙句、2人して逃げた。結局は捕まってシャドウは追放。マリーは禊と称した軟禁状態。
「罪人に跡目を継がせようとお考えですか?」
この時のぼくはシャドウに対する気持ちは、親友とか仲間だとか生易しいものじゃなかった。罪人と容易く口に出していた。
「下界に意識が動いたぐらいで罪人扱いなど、馬鹿馬鹿しい。あれぐらいの歳では一度ぐらい心が揺れることなどよくある話だ」
「シャドウは神殿を裏切ったんですよ!」
「なあに。一度下界に下りたところで何も変わらない。現実を見たら目が覚めるだろうよ。神殿がいかに神聖で無欲な場所だということが。
今は欲の毒に犯されているだけだ」
父は母を立たせてぼくの前を通り過ぎた。
「しかし、いなくなった者をいつまでも思っていても仕方がない。今は目の前にあるものを片付けなければならない。お前にも手伝ってもらうぞ」
父は机の上に出していた地図を渡してきた。
「旅支度をしろ」
「は?」
「砂漠化がどこまで広がっているか己れの目で見てこい」
「ぼくがですか?」
調査隊なら他にもいるはずだ。
「砂漠を無駄に広げたのはお前だ。己れの目で己れの無力さを感じて来い」
言われなくても気が付けと後頭部に重い痛みがのしかかった。頭の中が揺れている。ぐわんぐわんと目まで回ってきた。
父から何を言われたか頭に入って来ないのだ。立ち去った父の後を母も追いかけた。ぼくと目が合うと何とも例え難い顔を向けてきた。
「恨むなら…私を恨みなさいね」
「なぜ、母様を?」
「…私もかつて、下界に心が揺れた者の1人だから。私の弱さと迷いをあなたに引き継がせてしまったのだと思うと心苦しいわ」
「それでいてあの様な言葉を私にぶつけたのですか?私に跡目を継がせるのが不服だと。…随分、身勝手な方だ」
「全ては神殿の為です。血筋を絶やさぬ様務めるのが今後に繋がるのです。良い巫女を妻にしなさい。マリーが駄目なら他のでもいいわ」
「…待ってください!何を馬鹿な話をしているのですか?」
「お前自身に力がないのだから、良き伴侶を迎えねばならないのは至極当然のこと。お前だけではこの神殿は保たないわ」
良く考えなさいと母もまた父と同じ方向に歩いて行った。2人が出て行った代わりに女官が来た。母の側近の中年の女官だ。
「旅のお支度が整いました。外に馬も出ております」
ぼくに渡すとそそくさと出て行った。父の側近と同じような速さで。あれもこれも、すべてがお見通しよと言わんばかりの視線だけを残して。
目の前が真っ暗になった。当然か。
何を言われたかまったく理解が出来ないのだから。とりあえず出かけるか。砂漠の進行状態はぼくも気になっていた。
外に出ると馬具が付いた馬が一頭。ぽつんといた。見送りもお付きの共もいない。
ぼくの背中を頼もしげに押していた同志達の姿もない。青々しく茂ったペシュカの実だけがぼくを見ていた。姫林檎ぐらいの大きさだ。秋になり実が熟すと赤くなり甘い果汁が滴り落ちてくる。冷やして食べるとうまいんだ。ぼくとシャドウの大好物だった。唾が口の中に溜まって来た。秋になるのが今から楽しみだ。食べるのはぼくだけだけど。
馬は一歩一歩と踏みしめながら、ゆっくりと歩いた。視察に行くはずなのに追放されたみたいだ。外套を着ていても背中が寒いんだ。いつまでも草の上を歩いていたいのに、敷地外に出たら一面砂に覆われていた。
「圧巻だったよ」
まさかここまで砂漠が広がっていただなんて思わなかったから。悠長に構えていたわけでもないけど、側から見ればぼくは本当に役に立たない口ばかりの神官だったってことだ。悔しいけど、そういうことなんだよね。思うことはタダ。しかし思われることはタダでは済まない。努力も才能も必要だった。
「努力も才能もあると思っていたけど、蓋を開けたら中身が無かった」
種だけでは何が実るかわからない。花詞典で調べても、出て来ないような種でも花が咲けばいい。咲かねばただの種だ。地中に埋められ何年も何十年も待たねばならない。人間はそう長くは待っていられない。
何十年も気長に待てるほど、この国は保たないだろう。そうこうしているうちに国全土が砂と化す。
「だったら、何でもっと早く言ってくれないかなぁ」
ぼくに神官としての才能がないなら、早々と切ってしまえばいいのに。下界を夢見て出て行くのはぼくだったかもしれないのに。
「心が揺れたのはぼくも同じさ」
父と母と同じ道を行くのは当然だと思っていた。迷い道など許されないと思っていた。
「でも、実際出て行かれたら血筋が絶える~って追っ掛けて来るんだろうな。それこそ血眼になって」
窓に映る顔を見ては涙袋を下に開いた。
一度切れた血管はまだまだ消えない。
「そんな姿が目にうかぶよ」
大事な一人息子ではなく、大事な血筋を引く者としてね。
「…まったく勝手な人達だよね」
窓に映るのはチドリだけではなかった。
チドリより背の高い男の姿がぼうっと映り込んだ。
「…ね。シャドウ。久しぶりだね」
シャドウは黙ったまま、チドリを睨みつけていた。
チドリはヴァリウスが覗いていた窓の外に視線を送った。最上階にいた時の景色とはまるで違うことにホッとしていた。青々しく伸びる草花。それらを撫ぜる風を視覚で感じていた。地上に近い分、自然の豊かさを痛感していた。最上階にいた頃は、地平線まで砂漠しか見えなかった。赤茶けた砂に頼りげなく立ちすくむ木。萎れている草花。干からびた川。餌を探しに飛んで来る鳥の姿もない。
それに比べて今は小鳥は囀り、蜜蜂は花を求め飛び回り、リスやネズミ達は木の上で談笑していた。
外から来る訪問者は聖典を読みに来たり、神官の話に耳を傾けたり、美しい花畑に酔いしれたり、ティータイムには意見交換をしたりした。
外から来る者には、ぼくは立派な神官に見えるだろう。清廉潔白な神官と崇めてくれるはずだ。
「ここはぼくだけの楽園だ」
水と光と花を司る神殿。
いつまでも美しい場所。
世界中の人々の幸せを守りたいと願っていたのに、ぼくはぼくがいる場所しか守ることができなかった。祈りが通じなかった。無論、これがシャドウとの能力の差だ。世界中とか壮大なイメージを夢見ていたぼくには、目の前で転ぶ者がいても目に入らない。シャドウはマリーのことしか見えてなかったから、目先が近い。ぼくが見逃した怪我人を助けることができる。
ぼくは国土が砂に変わっても、単に一部の事象に過ぎないと放っておいた。各地の領主が嘆いても天気の動きをコントロールできるものではないと笑った。それに常に晴れというわけにもいかない。植物のためにも時に雨、曇り、雪や雹だって必要だ。
「それぐらいなんだ」がぼくの口癖。それぐらいで怯えるな。心配するな。ぼくは大神官になる者だぞ。それぐらいの事象に恐れ嘶くものか!
ぼくに任せてついて来い!と見せた背中には、多くの部下達が列をなした。私も私もとぼくの意見に賛同する者がいた。それが虚勢だと気がつく者はこの時点ではいなかった。
ただ、父と母を除いて。シャドウも心配そうにぼくを見ていた。そうこうしていたら、あの事件が起きた。シャドウとマリーを失った神殿は、あからさまにぼくを忖度してきた。大神官の息子だから忖度などなくとも進路は決まっていたが、周りはぼくをちやほやし、浮かれた。迷い道を思い浮かべたりもしたが、結局はぼくもその流れに身を投じた。
ある日、両親がぼくを呼んだ。
ぼくが誇らしく世界を救おうとしている姿に感銘したのだろう。
「お前には無理だ」
父が言った。
母も同様に頷く。
「どうして?」
息子の頑張る姿を誇らしいとは思わないの?と問うと、
「お前の行く先には絶望しか見えないからだ。お前には世界は救えない。時期にここも砂に埋もれるだろう」
各地の領主と対策を練らんといけないなと父が側近に話した。
側近は一礼をして、そそくさと出て行った。
「絶望だって?随分酷いことを言いますね。父様」
「…本当のことだ。こんな惨事になるものなら、もっと早くお前に伝えておくべきだった」
父の隣で母が涙ぐんでいた。父の暴言に心を痛めているのだろうと勝手に思い込んでいた。
「母様が泣いてますよ」
目尻の深い皺に老いを見た。いずれ、父も母も退陣する。そうしたら、ぼくが大神官になる。ここまで育ててくれた恩を返さなければならない。立派に成長した姿を見せてやりたい。
ぼくの手が母の肩に触れるか触れまいのところで、
「…ああ。血筋を絶やさぬ為とはいえ、力の無い者に跡を託さないといけないなんて…。神よ、お許しください」とぼくを見向きもせずに祭壇に向かって膝をついた。
母がさめざめと涙を流す姿は何とも異様な光景だった。
「…力が、無い?」
一人息子の立派な姿に対し、なんたる侮辱行為だ。笑って済む話では無いけれど、わざわざ泣いて嘆くほどか?
ぼくには何にもわからなかった。両親の大げさにも取れる振る舞いに、頭が追いつかない。
「まだわからないのか?…お前には神を崇める才が無いということだ。世界中の人々を救いたいだなんて笑わせてくれるわ。己がいる場所でさえ危ういのに。
…祈りなど、届くはずがない」
父は母の肩にポンと手を置き、一緒になって頭を下げた。いずれ大神官になったら、己れの息子が立つ場所に向かって、
「…シャドウが息子ならよかったのに」とあり得ない言葉を口にした。
「…なんです、それは。…酷いな。笑えないよ」
今やシャドウは罪人だ。ぼくを裏切り、幼きマリーを巻き添えにして下界の夢を植え付けた。挙句、2人して逃げた。結局は捕まってシャドウは追放。マリーは禊と称した軟禁状態。
「罪人に跡目を継がせようとお考えですか?」
この時のぼくはシャドウに対する気持ちは、親友とか仲間だとか生易しいものじゃなかった。罪人と容易く口に出していた。
「下界に意識が動いたぐらいで罪人扱いなど、馬鹿馬鹿しい。あれぐらいの歳では一度ぐらい心が揺れることなどよくある話だ」
「シャドウは神殿を裏切ったんですよ!」
「なあに。一度下界に下りたところで何も変わらない。現実を見たら目が覚めるだろうよ。神殿がいかに神聖で無欲な場所だということが。
今は欲の毒に犯されているだけだ」
父は母を立たせてぼくの前を通り過ぎた。
「しかし、いなくなった者をいつまでも思っていても仕方がない。今は目の前にあるものを片付けなければならない。お前にも手伝ってもらうぞ」
父は机の上に出していた地図を渡してきた。
「旅支度をしろ」
「は?」
「砂漠化がどこまで広がっているか己れの目で見てこい」
「ぼくがですか?」
調査隊なら他にもいるはずだ。
「砂漠を無駄に広げたのはお前だ。己れの目で己れの無力さを感じて来い」
言われなくても気が付けと後頭部に重い痛みがのしかかった。頭の中が揺れている。ぐわんぐわんと目まで回ってきた。
父から何を言われたか頭に入って来ないのだ。立ち去った父の後を母も追いかけた。ぼくと目が合うと何とも例え難い顔を向けてきた。
「恨むなら…私を恨みなさいね」
「なぜ、母様を?」
「…私もかつて、下界に心が揺れた者の1人だから。私の弱さと迷いをあなたに引き継がせてしまったのだと思うと心苦しいわ」
「それでいてあの様な言葉を私にぶつけたのですか?私に跡目を継がせるのが不服だと。…随分、身勝手な方だ」
「全ては神殿の為です。血筋を絶やさぬ様務めるのが今後に繋がるのです。良い巫女を妻にしなさい。マリーが駄目なら他のでもいいわ」
「…待ってください!何を馬鹿な話をしているのですか?」
「お前自身に力がないのだから、良き伴侶を迎えねばならないのは至極当然のこと。お前だけではこの神殿は保たないわ」
良く考えなさいと母もまた父と同じ方向に歩いて行った。2人が出て行った代わりに女官が来た。母の側近の中年の女官だ。
「旅のお支度が整いました。外に馬も出ております」
ぼくに渡すとそそくさと出て行った。父の側近と同じような速さで。あれもこれも、すべてがお見通しよと言わんばかりの視線だけを残して。
目の前が真っ暗になった。当然か。
何を言われたかまったく理解が出来ないのだから。とりあえず出かけるか。砂漠の進行状態はぼくも気になっていた。
外に出ると馬具が付いた馬が一頭。ぽつんといた。見送りもお付きの共もいない。
ぼくの背中を頼もしげに押していた同志達の姿もない。青々しく茂ったペシュカの実だけがぼくを見ていた。姫林檎ぐらいの大きさだ。秋になり実が熟すと赤くなり甘い果汁が滴り落ちてくる。冷やして食べるとうまいんだ。ぼくとシャドウの大好物だった。唾が口の中に溜まって来た。秋になるのが今から楽しみだ。食べるのはぼくだけだけど。
馬は一歩一歩と踏みしめながら、ゆっくりと歩いた。視察に行くはずなのに追放されたみたいだ。外套を着ていても背中が寒いんだ。いつまでも草の上を歩いていたいのに、敷地外に出たら一面砂に覆われていた。
「圧巻だったよ」
まさかここまで砂漠が広がっていただなんて思わなかったから。悠長に構えていたわけでもないけど、側から見ればぼくは本当に役に立たない口ばかりの神官だったってことだ。悔しいけど、そういうことなんだよね。思うことはタダ。しかし思われることはタダでは済まない。努力も才能も必要だった。
「努力も才能もあると思っていたけど、蓋を開けたら中身が無かった」
種だけでは何が実るかわからない。花詞典で調べても、出て来ないような種でも花が咲けばいい。咲かねばただの種だ。地中に埋められ何年も何十年も待たねばならない。人間はそう長くは待っていられない。
何十年も気長に待てるほど、この国は保たないだろう。そうこうしているうちに国全土が砂と化す。
「だったら、何でもっと早く言ってくれないかなぁ」
ぼくに神官としての才能がないなら、早々と切ってしまえばいいのに。下界を夢見て出て行くのはぼくだったかもしれないのに。
「心が揺れたのはぼくも同じさ」
父と母と同じ道を行くのは当然だと思っていた。迷い道など許されないと思っていた。
「でも、実際出て行かれたら血筋が絶える~って追っ掛けて来るんだろうな。それこそ血眼になって」
窓に映る顔を見ては涙袋を下に開いた。
一度切れた血管はまだまだ消えない。
「そんな姿が目にうかぶよ」
大事な一人息子ではなく、大事な血筋を引く者としてね。
「…まったく勝手な人達だよね」
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