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どきどき魔力測定
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1時間目は魔法実技の授業だった。
「えー、では今回は前回に引き続き、魔力の器を大きくするトレーニングを行ってもらいます」
眼鏡をかけた先生が胸の前で手を合わせ、言った。
「やり方は分かりますね? 魔道具に魔力を限界まで溜め、放出する。それを繰り返す事で自然と魔力の器が大きくなっていきます。では、時間までやってみましょう」
クラスメイト達は各々が呪文を唱え、自分の手や杖に魔力を貯め始めた。教室の明度が少し強くなる。
これは不味い事になった。出来ない。
「どうしました? クラウス君」
先生が俺の前まで来た。何もする気配を見せない俺を不審に思ったのだろう。
「もしかて出来ないんですか?」
先生の眼鏡がキラリと光る。
「あ、いや……」
言いかけて俺は咳払いをした。違う。今の俺は魔法を使えない無能な生徒じゃない。第十三式闇魔法【棺流】の正統後継者。その設定を守らなければならない、と自分に言い聞かせる。
「出来ないのではない。敢えて(・・・)していないのだ」
「はい?」
先生が眉を顰める。しかし俺は構わず左手で自分の目を隠し、右の掌を先生に向け、言った。
「我はクラウス・K・レイヴンフィールド。第十三式闇魔法【棺流】の正統後継者なり……。棺流の闇魔法は地を割り、天を裂く威力を有する。ここで使えば必ず死人しびとが出るであろう」
ちなみに死ぬことになるのは俺である。
我ながらよくこんな厨二くさい台詞を吐けるな、とちょっと感心した。まあ昔から聞き慣れている言葉ではあるし、喋ろうと思えば喋れるんだろう。
先生は呆気に取られたようで、ポカンと口を開けている。周りの生徒達も同じく俺の方に意識を傾けている事に気づく。うっ、何だか急に恥ずかしくなってきたぞ。口から火が出そうだ。
「先生、気にしないで」
この言葉を発したのはジャンヌだ。また助け舟を出してくれるんだろうか。
「彼、少し頭が残念な子なんです。だから放っておいてあげてください」
先生が「あっ」と何かを察したような顔になり、納得がいったように二度深く頷いた。
「クラウス君、大変だったね。今日はトレーニングを休んでいても構わないよ」
ちょっと! なんか俺可哀想な人だと思われてない?! (否定はできないが)違う、俺が欲しかった反応はコレジャナイ!
「じゃあ代わりに魔力の測定をしてみようか。まだこの学校ではやった事無いよね?」
先生は教室の中央にある、大きな水晶を指差した。魔力測定……悪魔……凄過ぎてイっちゃう……うっ、頭が……!
「や、止めておけ。それは大切な魔道具だろう。我われがそれに触れれば、魔力に耐えきれず、必ず崩壊を招くであろう……!」
今度は本当である。事実、前科が俺にはある。どういうわけか俺は魔法をまだ使えないくせに、魔力の器はやたらと大きい。そんな彼女と付き合った事ないけどチンコはデカイみたいな状態なのだ。
「大丈夫大丈夫。これは創立以来ここにあるものだけど、どんな魔力の高い生徒が触っても壊れた事なんか一度もないよ」
先生はカラカラと笑ってる。いや笑い事じゃない。この学園って千年くらい前に出来たものだろう。そんな創設以来大切にされてきた物を壊したらギラとマナの間の国家間摩擦の原因になりかねない。
俺は本気で汗をかいてきた。
何か良い言い訳を考えて辞退しなければならないのだが、こんな時に限って焦ってうまい言い訳が思いつかない。
再びクラスメイト達の注目が俺に集まってくる。
「やってみなよ。多分大丈夫だよ」
さっきまで擁護してくれていたジャンヌも今度は背中を押しにくる。ちなみに俺が今立っているのは崖っぷちだ。
「さ、早く」
先生がにこやかに俺の手を掴んだ。もう逃げられない。
「こ、後悔するでないぞ……」
俺は捨て台詞のように吐いて立ち上がった。ここに来て俺は都合の良い方に考え始めていた。そうだ。千年も学園が建っていたのだからきっと俺より魔力の強い奴も居たに違いない。千年を耐えてきた測定器が俺の魔力に持ち堪えられないなんてことは無いだろう。
そう考えると何だか行ける気がしてきた。
先生の説明するところによれば、この測定器は光の強さによって魔力の強さを図り、光った色によって相性の良い属性を測るらしい。(例えば青く光れば水属性魔法、黄色く光れば雷属性魔法)
「ちなみにこのクラスで一番魔力が強かったのはジャンヌさんだよ。彼女が測定器に触った時は七色に水晶が光ったんだ。あれは綺麗だったなあ」
「ほえー」
「ではこの水晶に手をかざすだけでいいからね」
果たして闇属性に向いていたら何色に輝くんだろう。
俺は何気なく手をかざした。その時である。
「凄すぎてイッチャウううううううう!!!!」
水晶から声がしたかと思うと、光りもせず、ドスン、と粉々に爆発した。
破片が教室中に飛び散り、辺りが一時騒然となる。うーん、デジャヴ。
最早清々しい気分だけどこいつどっから声出したんだよ!
「あーあ、壊れちゃったか。まあいっか。魔法で修復すればいいし」
俺が焦っている後ろで先生は何やら呪文を唱えた。すると教室中に散らばった破片が次々集結してきて、元の水晶の形に復元され始めたではないか。
何その都合の良い魔法!? というか、もしかしてこの水晶は千年経って一度も壊れてないんじゃなくて、壊れる度にその都度誰かが直していたのでは……?
呆気に取られて修復されていく水晶を眺めていると、ふと突き刺すような視線を感じた。
左右を見回してみて、こちらを睨んでいる少女に気づく。
ジャンヌだ。
その視線は鋭く俺に向けられている。恐ろしいほどの敵意に俺は感じた。あまりの眼光に俺は狼狽えた。
その時、座っていたジャンヌが立ち上がって俺の方に歩いて来た。その勢いに気圧されて後退りしそうになる。こんな時に言うのも何だが相変わらず揺れが激しい。
ジャンヌはあっという間に俺の前に来てしまった。どんな罵倒をされるんだろうか、と身構えていると
「これで勝ったと思わないことね。魔力の強さだけで勝負は決まらない」
と早口に捲し立てたかと思うと、プイッと顔を逸らしてまた元の席に戻って行ってしまった。
ツンデレかお前は。
思っていた反応とだいぶ違った。と言うか、ひたすらクールだと思っていたジャンヌが顔を悪くして悔しがっていたは、何だか可愛かった。かなり負けず嫌いなんだろう。
俺はもう完全に修復された水晶を見ながらホっと胸を撫で下ろした。エンゲルベルトの時と同じことにならなくて良かった。
「えー、では今回は前回に引き続き、魔力の器を大きくするトレーニングを行ってもらいます」
眼鏡をかけた先生が胸の前で手を合わせ、言った。
「やり方は分かりますね? 魔道具に魔力を限界まで溜め、放出する。それを繰り返す事で自然と魔力の器が大きくなっていきます。では、時間までやってみましょう」
クラスメイト達は各々が呪文を唱え、自分の手や杖に魔力を貯め始めた。教室の明度が少し強くなる。
これは不味い事になった。出来ない。
「どうしました? クラウス君」
先生が俺の前まで来た。何もする気配を見せない俺を不審に思ったのだろう。
「もしかて出来ないんですか?」
先生の眼鏡がキラリと光る。
「あ、いや……」
言いかけて俺は咳払いをした。違う。今の俺は魔法を使えない無能な生徒じゃない。第十三式闇魔法【棺流】の正統後継者。その設定を守らなければならない、と自分に言い聞かせる。
「出来ないのではない。敢えて(・・・)していないのだ」
「はい?」
先生が眉を顰める。しかし俺は構わず左手で自分の目を隠し、右の掌を先生に向け、言った。
「我はクラウス・K・レイヴンフィールド。第十三式闇魔法【棺流】の正統後継者なり……。棺流の闇魔法は地を割り、天を裂く威力を有する。ここで使えば必ず死人しびとが出るであろう」
ちなみに死ぬことになるのは俺である。
我ながらよくこんな厨二くさい台詞を吐けるな、とちょっと感心した。まあ昔から聞き慣れている言葉ではあるし、喋ろうと思えば喋れるんだろう。
先生は呆気に取られたようで、ポカンと口を開けている。周りの生徒達も同じく俺の方に意識を傾けている事に気づく。うっ、何だか急に恥ずかしくなってきたぞ。口から火が出そうだ。
「先生、気にしないで」
この言葉を発したのはジャンヌだ。また助け舟を出してくれるんだろうか。
「彼、少し頭が残念な子なんです。だから放っておいてあげてください」
先生が「あっ」と何かを察したような顔になり、納得がいったように二度深く頷いた。
「クラウス君、大変だったね。今日はトレーニングを休んでいても構わないよ」
ちょっと! なんか俺可哀想な人だと思われてない?! (否定はできないが)違う、俺が欲しかった反応はコレジャナイ!
「じゃあ代わりに魔力の測定をしてみようか。まだこの学校ではやった事無いよね?」
先生は教室の中央にある、大きな水晶を指差した。魔力測定……悪魔……凄過ぎてイっちゃう……うっ、頭が……!
「や、止めておけ。それは大切な魔道具だろう。我われがそれに触れれば、魔力に耐えきれず、必ず崩壊を招くであろう……!」
今度は本当である。事実、前科が俺にはある。どういうわけか俺は魔法をまだ使えないくせに、魔力の器はやたらと大きい。そんな彼女と付き合った事ないけどチンコはデカイみたいな状態なのだ。
「大丈夫大丈夫。これは創立以来ここにあるものだけど、どんな魔力の高い生徒が触っても壊れた事なんか一度もないよ」
先生はカラカラと笑ってる。いや笑い事じゃない。この学園って千年くらい前に出来たものだろう。そんな創設以来大切にされてきた物を壊したらギラとマナの間の国家間摩擦の原因になりかねない。
俺は本気で汗をかいてきた。
何か良い言い訳を考えて辞退しなければならないのだが、こんな時に限って焦ってうまい言い訳が思いつかない。
再びクラスメイト達の注目が俺に集まってくる。
「やってみなよ。多分大丈夫だよ」
さっきまで擁護してくれていたジャンヌも今度は背中を押しにくる。ちなみに俺が今立っているのは崖っぷちだ。
「さ、早く」
先生がにこやかに俺の手を掴んだ。もう逃げられない。
「こ、後悔するでないぞ……」
俺は捨て台詞のように吐いて立ち上がった。ここに来て俺は都合の良い方に考え始めていた。そうだ。千年も学園が建っていたのだからきっと俺より魔力の強い奴も居たに違いない。千年を耐えてきた測定器が俺の魔力に持ち堪えられないなんてことは無いだろう。
そう考えると何だか行ける気がしてきた。
先生の説明するところによれば、この測定器は光の強さによって魔力の強さを図り、光った色によって相性の良い属性を測るらしい。(例えば青く光れば水属性魔法、黄色く光れば雷属性魔法)
「ちなみにこのクラスで一番魔力が強かったのはジャンヌさんだよ。彼女が測定器に触った時は七色に水晶が光ったんだ。あれは綺麗だったなあ」
「ほえー」
「ではこの水晶に手をかざすだけでいいからね」
果たして闇属性に向いていたら何色に輝くんだろう。
俺は何気なく手をかざした。その時である。
「凄すぎてイッチャウううううううう!!!!」
水晶から声がしたかと思うと、光りもせず、ドスン、と粉々に爆発した。
破片が教室中に飛び散り、辺りが一時騒然となる。うーん、デジャヴ。
最早清々しい気分だけどこいつどっから声出したんだよ!
「あーあ、壊れちゃったか。まあいっか。魔法で修復すればいいし」
俺が焦っている後ろで先生は何やら呪文を唱えた。すると教室中に散らばった破片が次々集結してきて、元の水晶の形に復元され始めたではないか。
何その都合の良い魔法!? というか、もしかしてこの水晶は千年経って一度も壊れてないんじゃなくて、壊れる度にその都度誰かが直していたのでは……?
呆気に取られて修復されていく水晶を眺めていると、ふと突き刺すような視線を感じた。
左右を見回してみて、こちらを睨んでいる少女に気づく。
ジャンヌだ。
その視線は鋭く俺に向けられている。恐ろしいほどの敵意に俺は感じた。あまりの眼光に俺は狼狽えた。
その時、座っていたジャンヌが立ち上がって俺の方に歩いて来た。その勢いに気圧されて後退りしそうになる。こんな時に言うのも何だが相変わらず揺れが激しい。
ジャンヌはあっという間に俺の前に来てしまった。どんな罵倒をされるんだろうか、と身構えていると
「これで勝ったと思わないことね。魔力の強さだけで勝負は決まらない」
と早口に捲し立てたかと思うと、プイッと顔を逸らしてまた元の席に戻って行ってしまった。
ツンデレかお前は。
思っていた反応とだいぶ違った。と言うか、ひたすらクールだと思っていたジャンヌが顔を悪くして悔しがっていたは、何だか可愛かった。かなり負けず嫌いなんだろう。
俺はもう完全に修復された水晶を見ながらホっと胸を撫で下ろした。エンゲルベルトの時と同じことにならなくて良かった。
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