冤罪で魔法学園を追放された少年はいかにして世界最強の闇魔道士になったか

忍者の佐藤

文字の大きさ
80 / 92

紅花の思い

しおりを挟む
 前回までのあらすじ!!

 紅花の魔力を吸い取るために呪いを吸い取る魔法を使ったよ! 

 結果だけ話すと紅花は魔力を制御出来るようにならなかったよ! 

 代わりに僕のお尻から炎が出るようになったよ!

 焼き芋が出来るよ! やったね!







「ぬわああああああん! もう駄目ヨ! 一巻のおわりヨ!!!」



 紅花は頭を抱えてしゃがみ込んでしまった。

 魔法吸い取る作戦は失敗に終わった。紅花の魔力の器は思ったよりも大きく、俺の魔法を持ってしても、彼女の魔力を弱めることは出来なかった。

 俺が全力で魔力を吸い尽くそうとすれば可能だったのかもしれないが、そうすると今度は紅花の魔力が完全に枯渇しかねないし、俺の尻が取り返しの付かない状態になりかねない。いや取り返しはつかなくなってるか。



「紅花、やるだけやったのだ。もう諦めよう」

「嫌ヨ! 私絶対に諦めないヨ!」

「そうは言うが、どうするのだ。魔力を制御出来ないのではもう手の打ちようが無いであろう」



 そこまで言うと紅花は黙り込んでしまった。しかし彼女の目はまだ諦めていないように見える。



「お父さんに、借金があるヨ」



 紅花が唐突に言った。紅花らしくない、感情の乏しい声だった。



「借金?」

「お父さんの店、繁盛してたのに、燃えちゃって……ううん、放火魔に燃やされちゃったヨ」

「すると、その放火をしたのは店の繁盛を妬む者なのでは?」

「ううん、私ヨ」

「お前か!!」



 自分で自分のこと放火魔っていう奴初めて見たわ。



「しかし、どうして」

「火の調節を間違えて店が粉々になったヨ」



 いやお前常に調節機能バグってんだろ。



「もちろん放火するつもりじゃ無かったヨ。死人も出てなイ」

「よくその火力で人が死ななかったな……。それで店を建て替える時に借金をしてしまったわけだな」

「ううん、一回目は自費で何とか払ったヨ」

「一回は……?」

「建て替えが終わって、営業を再開する直前でまた燃えたヨ」

「まさか……」

「私がくしゃみをしたと同時に燃えたヨ」



 何この息をするように家を燃やす女。



「よく燃えてたヨ」



 何でちょっと他人事なんだよ! 自分の家が燃えてんのに、何そのキャンプファイヤー見た時の感想!



「お父さん、流石に二回目は立て替えられなくテ、変なところから借金しちゃったヨ」

「そう、なのか……」

「毎日借金取りがやってきて、執拗にお父さんがハゲてることをイジるだけイジり倒して帰っていくヨ」

「取り立てろよ」

「イジられたお父さんはちょっと嬉しそうヨ」



 ドMじゃねえか。まあ娘に二回店燃やされても怒らないくらいだから相当気が長いんだろう。



「お店が場末に移ってお客さんも減っちゃっテ、借金の返済で家計は火の車。私、罪悪感でいっぱいデ……、毎日ご飯三杯しかおかわり出来なかったヨ」



 元気いっぱいじゃねえか



「貧しくても順調に返済は進んでいたヨ。だけどある時、借金取りが来て言ったヨ。『来年の八月までに借金を返せなかったら、借金のカタに店主のオヤジをもらう』って!」

「オヤジ!? 貴様の父親!?」

「そうヨ」

「そうなの!?」

「お父さんはちょっと嬉しそうだったヨ」



 だから何で喜んでんだよ! お前の地元変態ばっかじゃねえか!



「借金取りは元からお父さん狙いだったヨ」

「えぇ……」

「その話を聞いた時、もうご飯も五杯しか喉を通らなかったヨ」



 ご飯進んでんじゃねえか。



「だから私、決めたヨ。お父さんは絶対に渡さなイ。お父さんの店を助けるためには、お客さんが足りなイ。知名度がいル。その時に知ったのが、大魔法料理対決だったヨ」

「では、貴様が入学したのは、父親の借金を返せるように、大魔法料理対決で優勝するためだったのか」





「そうヨ。だから私、一生懸命勉強したヨ。魔法学校に行って、魔法を制御出来るようになため。そして大魔法料理対決で優勝して、その賞金で借金返すヨ! お父さんの味が世界一だってみんなに知ってもらうヨ! 世界中からお客さんがお父さんの店に来てくれるようにするヨ!」



 紅花は目を爛々と輝かせ、堂々と夢を語った。そうか、これが飽くまで紅花が優勝にこだわり続けてる理由で、彼女の原動力だったのか。





「私、子供の頃から働いて貯めてた貯金を全部使って授業料にしたヨ。足りない分はビナーに着いてからバイトで稼ぐつもりだった。だけど、出発する時にお父さんがお金くれたヨ。お父さんも借金で大変なのに、私があっちで困らないように、料理に集中出来るようにっテ」



 気付けば紅花が涙声になっている。鼻を啜りながら、必死に涙を堪えている姿を見て俺も思わず貰い泣きしそうになってしまった。



「私、その時急に家族と離れるのが寂しくなって、すごく泣いたヨ。お父さんも『これで店が燃えなくて済む』って泣いてたヨ」



 嬉し泣きじゃねえか。



「私が『大魔法料理対決に優勝して、夏休みには賞金持って帰るヨ』て言ったら『夏休みはあっちで遊んでおきなさイ』って優しく言ってくれたヨ」



 やんわり帰省するの断られてる!

 少しツッコミどころはあるものの、紅花が優勝にこだわる理由がわかってスッキリしたし、俺も全力で協力しなければならない、という気持ちになった。

 これから大会本番まで、紅花が決勝に進めるように全力を尽くそうと決意した。



 ……まあ、優勝が不可能に近い状態であることに変わりはないわけだが。





「おうオメエら探したぞ!」



 ニックの声がしたのはそんな時だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~

ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」 魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。 本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。 ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。 スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。

処理中です...