2度目の人生は、公爵令嬢でした

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第一章

8話 やってきた再婚相手

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次の日、私たちは朝から祖父母とお茶を楽しんでいました。今日はいよいよお父さまの再婚相手とその娘さんがやってくる日。どんな人たちなのか、少し緊張しながらもワクワクした気持ちでその時を待っていました。

すると、控えめなノックの音とともに執事が現れました。
「お知らせいたします。再婚相手のセシル様とお嬢様がただ今、玄関ポーチに到着されました。」

その一言で、部屋の空気がピンと張り詰めたような気がします。
「やっと来られたのね!昨日からどんな方たちか気になって仕方がなかったわ!」
私が小さくはしゃぐと、お兄さまが微笑みながら肩をすくめます。
「僕もだよ。どんな子なんだろうな。」

早く会いたい気持ちを抑えながら、私たちは応接室へと向かいます。……どんな出会いが待っているのでしょうか?

一方その頃、玄関では──

「やぁ、ようこそいらっしゃいました。久しぶりだね、セシルさん。」
お父さまが大きく手を広げて、温かく再婚相手のセシルさんを迎えていました。その隣には、小さな女の子が手を繋がれて立っている。

「えぇ、ジルバルトさん。お招きいただいてありがとう。」
セシルさんは微笑みながら会釈します。その動作ひとつひとつに品があり、どこか芯の強さを感じさせる。

そしてお父さまは、隣にいる女の子に目を向けました。
「君がセシルさんの娘さんだね。はじめまして、私は君のお母さんと結婚することになったジルバルトだよ。」

女の子は少し恥ずかしそうに、けれども頑張って大きな声で言いました。
「は、はい……私はリリアと言います。よろしくお願いします。」

小さな声ながらもしっかりとしたその挨拶に、お父さまの顔がふっとほころびます。
「いい子だね。さぁ、子どもたちも待っている応接室へ行こう。」

「はい!」
子供らしい元気な声で返事をする。

応接室の扉が開き、いよいよ初めての対面。

「やっと来られたのね!私、すごく楽しみにしていたの!」
思わず立ち上がりそうになる私を、お兄さまが軽く手で制する。

「僕も気になっているけど落ち着いて、クリスティ。」
お兄さまも微笑みながら、クリスティを諭す。

扉が開く音がして、お父さまとセシルさん、そしてリリアが姿を現しました。

「お待たせしました。こちらがセシルさんとその娘さん、リリアちゃんだ。」
お父さまがそう言うと、セシルさんが柔らかな笑みを浮かべて軽くお辞儀しました。
「はじめまして。セシル・ディステリアと申します。これからよろしくお願いいたしますね。」

その隣で、少し緊張した面持ちのリリアちゃんが小さく頭を下げます。
「わ、私はリリアです。よ、よろしくお願いします……!」

その姿があまりにも愛らしくて、私は思わず声を弾ませて答えました。
「リリアちゃん、よろしくね!私はクリスティアよ!」

お兄さまも微笑みながら続けます。
「僕はリュカだよ。緊張しなくていいからね。」


「自己紹介も終わったところで、今回の再婚について話そう。この結婚には恋愛感情は無い。友情結婚だ。私もセシルさんも、それぞれ最愛の人がいるからね。それと結婚式はしないよ。」
父の言葉に、部屋の空気が一瞬ピンと張り詰めた。

「いきなりの再婚だから、子供たちには驚かせてしまったかしら。ごめんなさいね。」
セシルさんが申し訳なさそうに微笑む。

「確かに驚きましたし、少し混乱もしましたが、父は母のことをこの上なく愛しているということが分かりましたので、大丈夫です。」
兄が落ち着いた声で答えると、セシルさんはホッとしたように笑った。

「ふふふ。ジルバさんのエリーへの愛は、本当に揺るぎないものね。」

「はい。でも、セシルさんは良かったのですか?愛情のない結婚など。」
私が不安げに聞くと、セシルさんは優雅に微笑みながら首を振った。

「あら、愛情が無いわけではないのよ。友情という愛があるもの。それに、この再婚は私たち親子を守るためのものですから、とても感謝しているの。」

「そうだな、私もこれから一生エリーゼを愛すると決めていたのに、周りが再婚しろ再婚しろとうるさくて困っていたから、助かったよ。」

「そう言われると、私も気持ちが軽くなるわ。」

「リリアちゃんも慣れないことが多いかもしれないけど、2人ともいい子だから、ぜひ仲良くしてね。」
父がリリアちゃんに微笑みかけると、彼女は「あの…よろしくお願いします!」と控えめに微笑み返す。小さな声だけれど、その瞳には少しの緊張とたくさんの可愛らしさが詰まっている。

「それでは、私は昼までに仕事を片付けてくるから、みんなは親睦を深めていなさい。」

「「「「はーい」」」」

父が部屋を出ていくと、しばらくの沈黙が流れた。セシルさんが静かにお茶を淹れ直している間、リリアちゃんがチラチラとこちらを伺ってくる。

「ねぇリリアちゃん、何か好きな食べ物とか趣味はあるの?」
私が先に声をかけると、リリアちゃんは少し頬を赤らめながら指をくるくるさせて、「えっと、甘いお菓子が好きです。それから…お花も好きです」と恥ずかしそうに答えた。

「甘いお菓子かぁ!だったらうちの厨房のマドレーヌを試してみてほしいわ!すっごく美味しいのよ!」

「そ、そうなんですね…食べてみたいです!」
リリアちゃんの頬がほんのり赤くなる。「ふわぁ~」と感嘆の声を漏らしながら瞳を輝かせるその様子が、少し子猫を思わせる。

「リリアちゃんはどんなお花が好きなの?」
私が聞くと、リリアちゃんは小さな手でぎゅっとスカートを握りしめて答えた。

「うーんと…ピンクのバラとか、ラベンダーが好きです。でも、大きいお庭のお花を見るのも楽しくて!公園の花壇にたくさんあって…えっと!」
彼女は少し早口になりながら、近くの公園がとても素敵だと教えてくれた。その一生懸命な様子に、私はふと微笑んでしまった。

「今度その公園に一緒に行きましょうよ!リリアちゃんが案内してくれたら、きっともっと楽しいわ。」

「え、本当に…?」
ぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべるリリアちゃんに私は思わず「可愛い」と呟きそうになる。

セシルさんもそんなリリアちゃんを愛しそうに見つめながら言った。
「クリスティアさん、本当に優しいのね。リリアにこんなに素敵なお姉さまができて、私も安心しましたわ。」

「うふふ、そんなに褒められると恥ずかしいです。でも、リリアちゃんともっと仲良くなりたいと思います。」
リリアちゃんが可愛らしい仕草で「私もです!」と答えてくれて、私たちは自然と笑顔になった。

こうして、少し緊張していた顔合わせも、穏やかで楽しいひとときとなった。

リリアちゃんは少しほっとしたように微笑み返し、私たちの家族の輪に少しずつ溶け込んでいきました。

こうして始まった新しい家族との第一歩。その場の空気は温かく、穏やかなものだったのです──。
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