13 / 74
第一章
8話 やってきた再婚相手
しおりを挟む
次の日、私たちは朝から祖父母とお茶を楽しんでいました。今日はいよいよお父さまの再婚相手とその娘さんがやってくる日。どんな人たちなのか、少し緊張しながらもワクワクした気持ちでその時を待っていました。
すると、控えめなノックの音とともに執事が現れました。
「お知らせいたします。再婚相手のセシル様とお嬢様がただ今、玄関ポーチに到着されました。」
その一言で、部屋の空気がピンと張り詰めたような気がします。
「やっと来られたのね!昨日からどんな方たちか気になって仕方がなかったわ!」
私が小さくはしゃぐと、お兄さまが微笑みながら肩をすくめます。
「僕もだよ。どんな子なんだろうな。」
早く会いたい気持ちを抑えながら、私たちは応接室へと向かいます。……どんな出会いが待っているのでしょうか?
一方その頃、玄関では──
「やぁ、ようこそいらっしゃいました。久しぶりだね、セシルさん。」
お父さまが大きく手を広げて、温かく再婚相手のセシルさんを迎えていました。その隣には、小さな女の子が手を繋がれて立っている。
「えぇ、ジルバルトさん。お招きいただいてありがとう。」
セシルさんは微笑みながら会釈します。その動作ひとつひとつに品があり、どこか芯の強さを感じさせる。
そしてお父さまは、隣にいる女の子に目を向けました。
「君がセシルさんの娘さんだね。はじめまして、私は君のお母さんと結婚することになったジルバルトだよ。」
女の子は少し恥ずかしそうに、けれども頑張って大きな声で言いました。
「は、はい……私はリリアと言います。よろしくお願いします。」
小さな声ながらもしっかりとしたその挨拶に、お父さまの顔がふっとほころびます。
「いい子だね。さぁ、子どもたちも待っている応接室へ行こう。」
「はい!」
子供らしい元気な声で返事をする。
応接室の扉が開き、いよいよ初めての対面。
「やっと来られたのね!私、すごく楽しみにしていたの!」
思わず立ち上がりそうになる私を、お兄さまが軽く手で制する。
「僕も気になっているけど落ち着いて、クリスティ。」
お兄さまも微笑みながら、クリスティを諭す。
扉が開く音がして、お父さまとセシルさん、そしてリリアが姿を現しました。
「お待たせしました。こちらがセシルさんとその娘さん、リリアちゃんだ。」
お父さまがそう言うと、セシルさんが柔らかな笑みを浮かべて軽くお辞儀しました。
「はじめまして。セシル・ディステリアと申します。これからよろしくお願いいたしますね。」
その隣で、少し緊張した面持ちのリリアちゃんが小さく頭を下げます。
「わ、私はリリアです。よ、よろしくお願いします……!」
その姿があまりにも愛らしくて、私は思わず声を弾ませて答えました。
「リリアちゃん、よろしくね!私はクリスティアよ!」
お兄さまも微笑みながら続けます。
「僕はリュカだよ。緊張しなくていいからね。」
「自己紹介も終わったところで、今回の再婚について話そう。この結婚には恋愛感情は無い。友情結婚だ。私もセシルさんも、それぞれ最愛の人がいるからね。それと結婚式はしないよ。」
父の言葉に、部屋の空気が一瞬ピンと張り詰めた。
「いきなりの再婚だから、子供たちには驚かせてしまったかしら。ごめんなさいね。」
セシルさんが申し訳なさそうに微笑む。
「確かに驚きましたし、少し混乱もしましたが、父は母のことをこの上なく愛しているということが分かりましたので、大丈夫です。」
兄が落ち着いた声で答えると、セシルさんはホッとしたように笑った。
「ふふふ。ジルバさんのエリーへの愛は、本当に揺るぎないものね。」
「はい。でも、セシルさんは良かったのですか?愛情のない結婚など。」
私が不安げに聞くと、セシルさんは優雅に微笑みながら首を振った。
「あら、愛情が無いわけではないのよ。友情という愛があるもの。それに、この再婚は私たち親子を守るためのものですから、とても感謝しているの。」
「そうだな、私もこれから一生エリーゼを愛すると決めていたのに、周りが再婚しろ再婚しろとうるさくて困っていたから、助かったよ。」
「そう言われると、私も気持ちが軽くなるわ。」
「リリアちゃんも慣れないことが多いかもしれないけど、2人ともいい子だから、ぜひ仲良くしてね。」
父がリリアちゃんに微笑みかけると、彼女は「あの…よろしくお願いします!」と控えめに微笑み返す。小さな声だけれど、その瞳には少しの緊張とたくさんの可愛らしさが詰まっている。
「それでは、私は昼までに仕事を片付けてくるから、みんなは親睦を深めていなさい。」
「「「「はーい」」」」
父が部屋を出ていくと、しばらくの沈黙が流れた。セシルさんが静かにお茶を淹れ直している間、リリアちゃんがチラチラとこちらを伺ってくる。
「ねぇリリアちゃん、何か好きな食べ物とか趣味はあるの?」
私が先に声をかけると、リリアちゃんは少し頬を赤らめながら指をくるくるさせて、「えっと、甘いお菓子が好きです。それから…お花も好きです」と恥ずかしそうに答えた。
「甘いお菓子かぁ!だったらうちの厨房のマドレーヌを試してみてほしいわ!すっごく美味しいのよ!」
「そ、そうなんですね…食べてみたいです!」
リリアちゃんの頬がほんのり赤くなる。「ふわぁ~」と感嘆の声を漏らしながら瞳を輝かせるその様子が、少し子猫を思わせる。
「リリアちゃんはどんなお花が好きなの?」
私が聞くと、リリアちゃんは小さな手でぎゅっとスカートを握りしめて答えた。
「うーんと…ピンクのバラとか、ラベンダーが好きです。でも、大きいお庭のお花を見るのも楽しくて!公園の花壇にたくさんあって…えっと!」
彼女は少し早口になりながら、近くの公園がとても素敵だと教えてくれた。その一生懸命な様子に、私はふと微笑んでしまった。
「今度その公園に一緒に行きましょうよ!リリアちゃんが案内してくれたら、きっともっと楽しいわ。」
「え、本当に…?」
ぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべるリリアちゃんに私は思わず「可愛い」と呟きそうになる。
セシルさんもそんなリリアちゃんを愛しそうに見つめながら言った。
「クリスティアさん、本当に優しいのね。リリアにこんなに素敵なお姉さまができて、私も安心しましたわ。」
「うふふ、そんなに褒められると恥ずかしいです。でも、リリアちゃんともっと仲良くなりたいと思います。」
リリアちゃんが可愛らしい仕草で「私もです!」と答えてくれて、私たちは自然と笑顔になった。
こうして、少し緊張していた顔合わせも、穏やかで楽しいひとときとなった。
リリアちゃんは少しほっとしたように微笑み返し、私たちの家族の輪に少しずつ溶け込んでいきました。
こうして始まった新しい家族との第一歩。その場の空気は温かく、穏やかなものだったのです──。
すると、控えめなノックの音とともに執事が現れました。
「お知らせいたします。再婚相手のセシル様とお嬢様がただ今、玄関ポーチに到着されました。」
その一言で、部屋の空気がピンと張り詰めたような気がします。
「やっと来られたのね!昨日からどんな方たちか気になって仕方がなかったわ!」
私が小さくはしゃぐと、お兄さまが微笑みながら肩をすくめます。
「僕もだよ。どんな子なんだろうな。」
早く会いたい気持ちを抑えながら、私たちは応接室へと向かいます。……どんな出会いが待っているのでしょうか?
一方その頃、玄関では──
「やぁ、ようこそいらっしゃいました。久しぶりだね、セシルさん。」
お父さまが大きく手を広げて、温かく再婚相手のセシルさんを迎えていました。その隣には、小さな女の子が手を繋がれて立っている。
「えぇ、ジルバルトさん。お招きいただいてありがとう。」
セシルさんは微笑みながら会釈します。その動作ひとつひとつに品があり、どこか芯の強さを感じさせる。
そしてお父さまは、隣にいる女の子に目を向けました。
「君がセシルさんの娘さんだね。はじめまして、私は君のお母さんと結婚することになったジルバルトだよ。」
女の子は少し恥ずかしそうに、けれども頑張って大きな声で言いました。
「は、はい……私はリリアと言います。よろしくお願いします。」
小さな声ながらもしっかりとしたその挨拶に、お父さまの顔がふっとほころびます。
「いい子だね。さぁ、子どもたちも待っている応接室へ行こう。」
「はい!」
子供らしい元気な声で返事をする。
応接室の扉が開き、いよいよ初めての対面。
「やっと来られたのね!私、すごく楽しみにしていたの!」
思わず立ち上がりそうになる私を、お兄さまが軽く手で制する。
「僕も気になっているけど落ち着いて、クリスティ。」
お兄さまも微笑みながら、クリスティを諭す。
扉が開く音がして、お父さまとセシルさん、そしてリリアが姿を現しました。
「お待たせしました。こちらがセシルさんとその娘さん、リリアちゃんだ。」
お父さまがそう言うと、セシルさんが柔らかな笑みを浮かべて軽くお辞儀しました。
「はじめまして。セシル・ディステリアと申します。これからよろしくお願いいたしますね。」
その隣で、少し緊張した面持ちのリリアちゃんが小さく頭を下げます。
「わ、私はリリアです。よ、よろしくお願いします……!」
その姿があまりにも愛らしくて、私は思わず声を弾ませて答えました。
「リリアちゃん、よろしくね!私はクリスティアよ!」
お兄さまも微笑みながら続けます。
「僕はリュカだよ。緊張しなくていいからね。」
「自己紹介も終わったところで、今回の再婚について話そう。この結婚には恋愛感情は無い。友情結婚だ。私もセシルさんも、それぞれ最愛の人がいるからね。それと結婚式はしないよ。」
父の言葉に、部屋の空気が一瞬ピンと張り詰めた。
「いきなりの再婚だから、子供たちには驚かせてしまったかしら。ごめんなさいね。」
セシルさんが申し訳なさそうに微笑む。
「確かに驚きましたし、少し混乱もしましたが、父は母のことをこの上なく愛しているということが分かりましたので、大丈夫です。」
兄が落ち着いた声で答えると、セシルさんはホッとしたように笑った。
「ふふふ。ジルバさんのエリーへの愛は、本当に揺るぎないものね。」
「はい。でも、セシルさんは良かったのですか?愛情のない結婚など。」
私が不安げに聞くと、セシルさんは優雅に微笑みながら首を振った。
「あら、愛情が無いわけではないのよ。友情という愛があるもの。それに、この再婚は私たち親子を守るためのものですから、とても感謝しているの。」
「そうだな、私もこれから一生エリーゼを愛すると決めていたのに、周りが再婚しろ再婚しろとうるさくて困っていたから、助かったよ。」
「そう言われると、私も気持ちが軽くなるわ。」
「リリアちゃんも慣れないことが多いかもしれないけど、2人ともいい子だから、ぜひ仲良くしてね。」
父がリリアちゃんに微笑みかけると、彼女は「あの…よろしくお願いします!」と控えめに微笑み返す。小さな声だけれど、その瞳には少しの緊張とたくさんの可愛らしさが詰まっている。
「それでは、私は昼までに仕事を片付けてくるから、みんなは親睦を深めていなさい。」
「「「「はーい」」」」
父が部屋を出ていくと、しばらくの沈黙が流れた。セシルさんが静かにお茶を淹れ直している間、リリアちゃんがチラチラとこちらを伺ってくる。
「ねぇリリアちゃん、何か好きな食べ物とか趣味はあるの?」
私が先に声をかけると、リリアちゃんは少し頬を赤らめながら指をくるくるさせて、「えっと、甘いお菓子が好きです。それから…お花も好きです」と恥ずかしそうに答えた。
「甘いお菓子かぁ!だったらうちの厨房のマドレーヌを試してみてほしいわ!すっごく美味しいのよ!」
「そ、そうなんですね…食べてみたいです!」
リリアちゃんの頬がほんのり赤くなる。「ふわぁ~」と感嘆の声を漏らしながら瞳を輝かせるその様子が、少し子猫を思わせる。
「リリアちゃんはどんなお花が好きなの?」
私が聞くと、リリアちゃんは小さな手でぎゅっとスカートを握りしめて答えた。
「うーんと…ピンクのバラとか、ラベンダーが好きです。でも、大きいお庭のお花を見るのも楽しくて!公園の花壇にたくさんあって…えっと!」
彼女は少し早口になりながら、近くの公園がとても素敵だと教えてくれた。その一生懸命な様子に、私はふと微笑んでしまった。
「今度その公園に一緒に行きましょうよ!リリアちゃんが案内してくれたら、きっともっと楽しいわ。」
「え、本当に…?」
ぱぁっと嬉しそうな笑顔を浮かべるリリアちゃんに私は思わず「可愛い」と呟きそうになる。
セシルさんもそんなリリアちゃんを愛しそうに見つめながら言った。
「クリスティアさん、本当に優しいのね。リリアにこんなに素敵なお姉さまができて、私も安心しましたわ。」
「うふふ、そんなに褒められると恥ずかしいです。でも、リリアちゃんともっと仲良くなりたいと思います。」
リリアちゃんが可愛らしい仕草で「私もです!」と答えてくれて、私たちは自然と笑顔になった。
こうして、少し緊張していた顔合わせも、穏やかで楽しいひとときとなった。
リリアちゃんは少しほっとしたように微笑み返し、私たちの家族の輪に少しずつ溶け込んでいきました。
こうして始まった新しい家族との第一歩。その場の空気は温かく、穏やかなものだったのです──。
24
あなたにおすすめの小説
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
悪役令嬢と弟が相思相愛だったのでお邪魔虫は退場します!どうか末永くお幸せに!
ユウ
ファンタジー
乙女ゲームの王子に転生してしまったが断罪イベント三秒前。
婚約者を蔑ろにして酷い仕打ちをした最低王子に転生したと気づいたのですべての罪を被る事を決意したフィルベルトは公の前で。
「本日を持って私は廃嫡する!王座は弟に譲り、婚約者のマリアンナとは婚約解消とする!」
「「「は?」」」
「これまでの不始末の全ては私にある。責任を取って罪を償う…全て悪いのはこの私だ」
前代未聞の出来事。
王太子殿下自ら廃嫡を宣言し婚約者への謝罪をした後にフィルベルトは廃嫡となった。
これでハッピーエンド。
一代限りの辺境伯爵の地位を許され、二人の幸福を願ったのだった。
その潔さにフィルベルトはたちまち平民の心を掴んでしまった。
対する悪役令嬢と第二王子には不測の事態が起きてしまい、外交問題を起こしてしまうのだったが…。
タイトル変更しました。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ
音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。
だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。
相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。
どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。
婚約破棄されたので、前世の知識で無双しますね?
ほーみ
恋愛
「……よって、君との婚約は破棄させてもらう!」
華やかな舞踏会の最中、婚約者である王太子アルベルト様が高らかに宣言した。
目の前には、涙ぐみながら私を見つめる金髪碧眼の美しい令嬢。確か侯爵家の三女、リリア・フォン・クラウゼルだったかしら。
──あら、デジャヴ?
「……なるほど」
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる