仮)銀の魔物模倣師と黒剣のペルギアルス。

たゆ

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1 異世界へ

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 僕たちには行き先を選ぶ権利がある。地図にピンを刺すことでその場所まで送ってくれるんだそうだ。(送るというかすぐに転送されるって話だけど)他の人が選ぶ行き先を参考にしようかと地図の前に張り付いているのに、どういう仕組みなのか、見たはずの記憶がぽっかりと消えている。
 ただ、英雄を夢見ての行動なのか、あえて危険な場所を選ぶ人が結構いたことには驚いた。命が惜しくないんだろうか?それより、ナゼこのことはハッキリ覚えているんだろうと不思議な気持ちになった。
 正直、躊躇うことなく人間を殺すことなんて僕には無理だ。あえて戦地を選んだ人は何を考えてその場所を選んだんだろう、人間同士でする殺し合いなんて、殺すのも殺されるのもトラウマにしかならないだろうに。
 地図を覗き込む。地図を見る限り世界の広さは地球と変わらないんじゃないだろうか?地球に比べると海の割合が少ないか、それにやたら国が多い。この世界に仮に飛行機があったとしても全ての国をまわるのは不可能だと思う。
 地球に比べて国は多いが、森や湖や川や山といった未開拓の土地も多い。
 緑も赤の光も無く、町や村が一切ない黒い影がある場所はなんなんだ……。
 戦争は嫌だが、様々な生き物は見てみたい。ゲームに登場するモンスターの数は多いゲームで一〇〇〇種類前後、それに比べて地球には発見されている生物だけでも一七〇万種以上はいたはずだ。専門家じゃないと見分けがつかない生き物も多そうだけれど、竜が実在しているのなら竜種だけでも一〇や二〇種類いてもおかしくはない。見てみたいよな……、その為にも生き抜くための力を手に入れないと。『死者の模倣』を試すことを考えると、最初に行くのは魔物同士の生存競争が激しい土地が良い。問題はそういった場所が緑色の光が灯る安全地帯の中にあるかどうかだ。(華やかな大都市での暮らしも憧れるけど、そういう場所って貴族が多そうな気がする)
 地図に描かれた町や村の絵はよく見ると大きさが微妙に違った。これにも意味があるのだろう、普通に考えれば人口の違いや町の大きさの違いだと思う。塔や洞窟も気になるけど、いかにもやばい魔物がいますって感じに真っ赤な光が灯っているし、いつかLVが上がったら挑戦できるように場所だけは覚えておこう。
 人里離れた場所に小さな村の絵がかなりの数描かれている。こういう村はのどかで人が温かいイメージがある。日本なら迷わずそういう村を選んでいたかもしれない。でもこれから行く世界では、人口が少ない分、魔物や山賊に襲われる機会も多くなるはずだ。現実的に考えるなら、城壁に囲まれた夜に何の心配もせずに眠れる宿代がお得な、そこそこ栄えた町だろう。

「何をブツブツ言っているんですか?」
 いつからいたんだろう。すぐ横にあの幼女がいた。(暇なのか?)今更だけど暗殺者対策に『気配感知』のスキルを選ぶベきだったかのもしれない。暗殺者に狙われる未来は想像したくないけれど。
「あなたもまだいたんですね、この世界の人たちは優柔不断な人が多いみたいです」
 あなたということは、僕以外にもまだ行き先を決めかねている人たちがいるんだろう。命がかかっているんだから悩むのも当然と言えば当然な気がする。
「そりゃー命がかかっているんだ。悩むのは普通じゃないかな」
「普通ですか、それなら地図の横にある丸い石を転がしてみてはいかがでしょうか?その石を転がす前に、あなたが行きたい場所の条件をイメージして投げると確実ではありませんが、その条件に近い場所を教えてくれますよ」
 そんなに便利なアイテムがあるのなら初めから教えてほしいものだ、と口から出かけた言葉を慌てて呑み込んだ。僕の考えていることが分かるのか彼女が一瞬怖い顔をしたのだ。
「教えなかったことに文句でもおありですか?質問されなかったからお教えしなかっただけです」
 幼女は口を尖らせる。ん?表情が見えた。
「文句はありませんよ、ただ、初めて行く世界を前に緊張して表情が硬くなってしまったんです」
「そうですか」
 幼女はいまだに少し不満そうだが、なんとか誤魔化せたようだ。
 異世界に行く際にスキルを授ける人物は大抵大物だとラノベで読んだ記憶がある。彼女に敵に回す様な悪手は避けるべきだろう。
 丸い石を握りながら行きたい場所の条件を思い浮かべる。(宿代が安くて治安の良い夜ぐっすり眠れる町で、近くには生存競争激しい魔物の住処がある場所を教えてください。お願いします)自分の希望を込めた石を地図の上に転がした。何度試しても良いと言われたので五回ほど同じように転がしてみたが、毎回石は違う場所に止まり更に頭を悩ませる。
 それだけ町の近くにも、普通に魔物が生息しているってことなんだろう。
 僕はその中でも戦争をしている国から出来るだけ離れた場所を選んでピンを刺した。
「またな、幼女」
 頭を撫でようと手を伸ばす。

 あっさりと躱され僕の手は空を切った。(普通なら頭を撫でられながら、幼女は恥ずかしそうに頬を染めて「すぐ会えるよ」とか意味深な発言をくれるんじゃないのか?)……現実なんてこんなものだ。
 
 
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