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1 異世界へ
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しおりを挟む起きてすぐに『ステータス』を確認する。ルディ―レとした会話の内容は夢の中なのに異常なほどハッキリと覚えている。ラピスちゃんとのおかえりの挨拶も、今後はハグじゃなく頭を撫でる様にしないと、夢の中で牢屋に入れられて一生目が覚めないなんてこともありそうで怖い。
名称:死者の模倣 LV:四 登録可能数 五/九
どうやら僕の提案は無事採用された様だ。『採掘』スキルも手に入ったし、予定通り化石の採掘場。もしくは古い魔物の墓場の様なモノが近くにないかを調べたい。それに模倣の魔物の登録数も増えたことだし、町の中でも気軽に呼び出すことが出来る、パッと見ペットな小動物の模倣の魔物を手札に加えたいな。
早速、冒険者ギルドでリデリアさんに化石の採掘場が無いかを確認した。やはり、この世界では化石という言葉自体使われていない様で、古い魔物の死体や骨が埋まっている場所という言葉でなんとか話が前に進む。
「化石?古い魔物の死体が埋まっている場所でいいのかしら。オディール君の話に合う場所かは分からないけれど、森の中に『竜の墓場』と呼ばれる深い谷があるわ」
『竜の墓場』これもファンタジー作品では度々登場する名前だ。現代でいうカラスが死ぬ際に人の見えない場所を選ぶように、竜も人に発見されない場所で最期を迎えるといったファンタジー界の通説だ。
「ただ『竜の墓場』は危険な場所で、足を踏み入れるだけで異常な頭痛に襲われてしまうの。中に入って戻らない冒険者も多いという話よ、詳しい資料が一階奥の資料室にあるわ。ちなみに『竜の墓場』関連の依頼もイロイロあるから掲示板にも目を通した方がいいわね」
『竜の墓場』に関連した依頼の多くは、事後報告型であらかじめ先に依頼を受ける必要は無い様だ。その大半が遺品の回収依頼。長く滞在することも考えて一定期間冒険者ギルドで依頼を受けなかった場合のペナルティーについても確認したんだけど、比較的その辺は緩い様で〝一年間に一つの依頼も達成しないでいると冒険者の資格を失う可能性もあるから気を付けてね〟と、これだけだ。
その後、資料室に籠り『竜の墓場』についての資料を漁った。『竜の墓場』といっても、竜種と呼ばれる魔物の墓場では無い様で、人目につかずに魔物たちが最後の時を過ごす場所の総称を『竜の墓場』と呼ぶらしい。それだけに『竜の墓場』と呼ばれる場所は世界各地に存在する。
『死者の模倣』の能力を考えると、当面『竜の墓場』と呼ばれる場所の墓荒らしをするのが手っ取り早く自分の力を高める方法に思える。資料を見る限りこの町から、そう遠くない場所に『竜の墓場』と呼ばれる深い谷があるみたいだし、命を落とす危険のある強烈な頭痛という言葉は気になるけど、一度自分で行ってみないことには本当のことがわからない。
それに『竜の墓場』に向かい消息を断った人の中には、有名人も多い様だ。魔物のいない地球でさえ、人間同士の戦いでアーサー王と円卓の騎士や、世界の中では小さな日本でさえ牛若丸や新選組といった武人の名前が残るくらいだ。
剣と魔法の魔物がいるこの大きな世界に、どれだけ多くの英雄が生まれていたとしてもそれはオカシイことじゃない。ゲルマン神話に登場する竜殺しの英雄ジークフリートのような存在が、本物の竜がいるこの世界なら神話じゃなく現実としていても不思議ではないのだ。
『竜の墓場』で消息不明になった人物のリストはと……、思ったよりも多いな、中には装備だけ剥がれて届けが出ていない人もいるとは思うけど、中にはとんでもない報奨金が設定された依頼もある。特に高いのは二つか、ひとつは割と近い三〇年余り前に消息を断った、隣国、聖王国ルーデスプリアーズの神官戦士団の遺品の回収依頼か。人数は九人、冒険者ギルドの資料だけあって冒険者ランクで九人の強さが現されている。
九人はルーデスプリア―ズの神官戦士団の中でも上位の精鋭で、全員が冒険者Bランク以上の実力者。特に隊長のアウロアは七〇歳を越えた老体ながら『棒術』を極め回復魔法にも長けた御仁で、冒険者ランクに置き換えるならAランク以上。九人が持っていたとされるメイスとローブには、聖なる魔法が付与されており、どれか一つでも持ち帰ることが出来れば、一年間は宿屋で引き籠り遊んで暮らせる金額が手に入る。ラピスちゃんにも貢ぎ放題だな。
そして、もう一人。こっちは英雄と呼ばれた人間だ。
今から二〇〇年以上前に消息を断った人物で、今はもう存在しない国、パルスト王国最期の騎士団長。依頼品は、彼が所持する『黒剣』と呼ばれる二つ名の由来となった武器。発見報酬は大金貨二〇〇〇枚以上。地球でなら五〇億円相当とか……。
銀行の無いこの世界で持ち歩いたりしたら、もれなく命を狙われてしまいそうな金額だ。
騎士団長黒剣のペルギアルス。現在の冒険者ランクに割り振るならSランク以上。
谷の底で異常な頭痛がする場所と聞くと、空気より重い毒ガスが貯まっている場所をイメージしちゃうけど『ステータス』で自分の状態が見れるわけだし、一度行ってみる価値はあるよな。
僕は出発を明日に決めると、日持ちのする芋類を中心に買い込み、一〇枠しかない『アイテムボックス』を生かすために大き目の布袋を複数枚購入した。
「これが、良いか」
最後は市場を巡り連れていてもおかしくない様な、食用に売られている死んだ『アナネズミ』を三匹購入し宿へと戻る。アナネズミは茶色く穴掘りが得意なネズミで少しモコモコしていて地球のスナネズミに似た可愛い動物だ。こっちだと食用みたいだけど、【アナネズミの死者の模倣に成功しました】一匹目で成功。失敗を考慮して三匹買ったんだけど、二匹はメアリーさんにプレゼントしよう。
リスト……
模倣のアナネズミ:一体 必要MP:一
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