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1 異世界へ
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しおりを挟む「お久しぶり、ルディ―レ」
彼女を見ると何故なのか懐かしい気持ちになる。夢の中でも目の前の少女の顔はハッキリと分かる。(幼女じゃなくて少女?)銀髪銀眼とツインテ―ルに変化はないけど、目の前の少女は少し成長していた。
数日しか経っていないのに数年は経過している様な姿、自由に姿も変えられそうだし驚くことじゃないんだろうが
「ルディ―レ、少し成長した?」
気になったら、聞いてしまうわけで……。
「はい、幼女扱いが嫌なので成長しました。そんなことはどうでもいいのですが、あなたはとんでもない場所に住み着きましたね。おかげでなかなか近寄れず大変でした」
(どうでもいいのかよ!)思わず心の中でツッコんだ。(心が読めるんだっけ)彼女が一瞬クスっと笑った様に見えた。
姿を変えることは彼女にとって、服を着替える様に簡単なことなんだろう。そんなルディ―レさえ、この『竜の墓場』に入るのは難しいことなんだろうか。
「とんでもない場所って、異世界人なら誰でも入れる場所なんだろう」
「いえ、普通は異世界人でも転がっている冒険者たちの様に入ったら死んじゃいますよ、たぶん」
そう話した後、ルディ―レは考えるそぶりをする。彼女は時折こうして考え込むことがある。僕の想像では、ルディ―レの上司的存在(この世界へ続く穴を開けた存在)に何かを確認をしているんだと思う。
「これくらいならいいですね。あなたは、ここの主に気に入られただけなんだと思います。詳しくはそのうち分かります……生き残っていたらですが」
「主?それより生き残るってどういうことなんだ!僕はこれから危険な目に遭うのか?」
あからさまに〝しまった〟という表情を彼女は見せた。
「それについては答えられません、以上です。運命はあなた自身が切り開くものなんですから、自分で何とかしてください。それより、私のここでの時間はそれほど多くは無い様です。さっさと新しいスキルを決めてしまいましょう」
自分の生き死にの問題なのに、そう簡単に割り切れるモノじゃない。それでも。
「わかったよ……」
このまま時間切れでスキルが貰えないのは困る。もし、本当に生き死にを分ける瞬間が来るのであれば、それを回避するためにも新しい力は必要になる。僕は聞きたい気持ちを抑えて、今はスキルの話を優先した。
彼女が現れたのは、僕が以前お願いしていた『死者の模倣』のLV五ごとに追加されるスキルについて話し合いをするためだ。
〝早くしてください〟の一言に、予め考えてあった追加スキルについての提案をはじめる。
LV五で提案したのは『窮地の中の小さな奇跡』という名前の追加スキル。正直コレについては使わないで済むことを祈りたい。僕らをこの世界に導いた存在に気に入られようと下心丸出しで考えたモノなのだから。ルディ―レもそうだが、彼女らはリスクを冒す行為を喜ぶ傾向がある。彼女らの希望に寄せ過ぎたせいか、このスキルの発動条件は自然と厳しくしなってしまった。それでも、死の危険が近付いているのであれば、きっと役に立つはずだ。
次に『剣術』と新しいスキルを交換してもらった。これについてはだめもとで言ってみたんだけど、スキルの性質が彼女たちの好みに合ったらしく、『死者の模倣』の追加スキルよりも早くOKをもらえた。
最期はLV一〇の追加スキル、前の二つに比べるとマトモで、スキルの名前は『五里霧中の強化』。一日三回使用可能な、模倣の魔物専用の補助魔法。
内容は、スキルの名前の通り、予測不能な強化を模倣の魔物に与える力だ。効果範囲は外に出ている模倣の魔物、予測不能というのはその補助系統の選び方にある。八面ダイスを投げて、一か二なら攻撃力、三か四なら防御力、五か六なら素早さ、七か八なら魔力と、出た目に応じた補助魔法を模倣の魔物に与えるスキルだ。効果時間は三〇分間。
ついでに頭の中でイメージして転がしていたサイコロも、ハッキリと具現化出来る様になった。今のところ六面と八面の二種類だけだけど、暇なときに振って遊ぶことが出来る……微妙な力。いつかボードゲームでも作った時に役立つかもしれないな。
スキルの相談が終わると、余程この場所にいるのが大変だったのか、ルディ―レはすぐに消えてしまった。(クッキーと紅茶楽しみにしていたんだけどな……)
追加スキルも手に入ったことだし、食料が心許無いこともあり一度町に戻ることにした。ルディ―レの予言めいた言葉が気になったので、模倣の魔物については『竜の墓場』に転がる冒険者の死体を使って枠一杯まで登録した。黒剣のペルギアルスという超レアキャラぽい名前の『死者の模倣』が成功したためか、『死者の模倣』の成功率が著しく落ちた。
『ステータス』を確認する。
名前:オディール 種族:人間 性別:男 年齢:一七 職業:未定 LV:一八
HP:二四七/二四七 MP:一〇四/一〇四 筋力:三三 器用度:二三 耐久力:三〇 敏捷度:二五 知力:四二 幸運:一七
スキル(パッシブ)
『棒術:LV七』『解体:LV四』『採取:LV八』『採掘:LV二』
スキル(アクティブ)
『死者の模倣:LV一四』『鑑定:LV三』『アイテムボックス:LV二』『生活魔法:LV一』『感情停止:LV一』
補正値
異世界人ボーナス:HPとMPの回復小上昇
『スキルの詳細確認』
名称:死者の模倣:LV一四 登録可能数:二三/二三
追加スキル 『窮地の中の小さな奇跡』『五里霧中の強化』
模倣の魔物登録リスト(MPは一体呼び出すのに必要な数値です)
【模倣の灰色大狼:LV一五(MAX)数:八 MP:三】
【模倣の狒々:LV六 数:一 MP:一〇】
【模倣のドゥームアナコンダ:LV三 数:一 MP:一二】
【模倣のアナネズミ:LV五(MAX) 数:一 MP:一】
【模倣の神官戦士団隊長アウロアの聖霊:LV一 数:一 MP:六三】
【模倣の勇敢な神官戦士の兵霊:LV五 数:五 MP:一五】
【模倣の亡国の騎士団長黒剣のペルギアルスの聖霊:LV一 数:一 MP:一七五】
【模倣の重戦士の兵霊:LV二 数:一 MP:八】※全身鎧に大きな盾を持つタンカー型。
【模倣の盗賊の兵霊:LV三 数:一 MP:七】
【模倣の戦士の兵霊:LV三 数:二 MP:七】
【模倣の水の魔術師の兵霊:LV二 数:一 MP:一〇】
人間の死体の模倣の魔物化には、名前に関する法則がある様で、多少の差異はあるのものの、Dランク以下の冒険者に付く称号は兵霊。元C~Bランクの冒険者は称号の前に勇敢なホニャララと言葉が入る。Aランク以上は生前の名前も残り最後に聖霊の称号が付くようだ。
それとLVに関してだが、模倣の魔物によってそれぞれLVの上限が決まっていた。模倣の灰色大狼はLVの上限が一五で、LVアップで一体でレッドベアと互角に戦える魔物になった。消費MPから考えて弱い模倣の魔物を育てた方がお得な感じがする。
谷に散らばる古い装備の中から売れそうな物を選び布の袋に詰め込むと、『アイテムボックス』に放り込み町へと向かった。
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