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連載
140 話 ゴブリン戦争4(2021.08.19改)
しおりを挟む『従魔契約』を試みる。
光の鎖が変態ゴブリンの体に伸びるも、拒絶されたのだろう弾かれてすぐに消えてしまった。無理だろうと思いつつ諦めずに次は強制契約を試す。
ダメだった……。
変態ゴブリンの体に巻き付く様に伸びた光の鎖は、巻き付く前にバラバラに砕け散る。
簡単に起こせないから奇跡なんだろう。
ブツブツと独り言をいい考え込む僕を見て、変態ゴブリンは腹を抱えて地面に転がり笑い出した。
「本当におもしれー奴だな。俺相手に強制契約とか試すかフツウ、腹いてぇ」
「知っているんですか?従魔契約のこと」
なぜ変態ゴブリンが、従魔契約のことを知っているのかが気になった。
「ああ、緑のゴブリン王が俺に使ってきたからな、それでも強制契約は試さなかったぞ、本当に面白れぇ奴だな、気に入った!死ぬ前に特別に俺の名前を教えてやろう。名前を教えないと変な仇名とか付けそうだからな……お前」
僕は思わず目を逸らす……心の中で変態ゴブリンと連呼していたことが、顔に出ていないかが心配になった。
「お前、本当に俺に変な仇名つけやがったのか!」
僕は、自分が考えている以上に、思ったことが顔に出やすいのかもしれない。
「付けてません……よ」
これ以上、心を読まれてなるものかと顔を逸らす。
「はははは、生意気なガキだな、まーいい。俺は黒のゴブリン王リザスだ。ちゃんと覚えてから死ねよ。じゃーそろそろ戦おうぜ、仲間のとこに戻りな一撃目は好きにしていい、それが戦闘開始の合図だ」
「死にたくないのでもがきますよ。でもイロイロありがとうございました」
変態ゴブリン改めリザスさんに頭を下げると、怖い顔で僕を見ているみんなの元へと歩き出した。
(お父様、なに無茶しているんですか)
ローズが僕の首元を掴み、揺らしながら真っ赤な顔で怒る。
(主様、あまりわしらを心配させんでくれ、年寄りはもう少し大切にしてほしいぞ)
いや……フローラルは単に見た目がお爺さんなだけだから、実年齢は僕より下だから。
(主様、自分をもっと大事にして下さい。大泣きしたローズを慰めるのは大変なんですよ)
(何言ってるのよレモン、私は大泣きしたことなんてありませんわ)
二匹は本当に仲が良い。二匹の会話にしれっと、相槌だけで参加するデーモンソーンのサクラちゃんもなかなかのものだ。
「あるじ、むり、よくない」
「おいらも、てりにぃ、とおなじおもう」
テリアとボロニーズも心配してくれたんだね。〝ごめんね〟と背伸びをして二匹の頭を頑張って撫でた。二匹ともどんどん背が高くなるから、頭を撫でるだけなのに色々な筋肉が悲鳴を上げているよ。
「ガウ、ガウ」
「ありがとう、ドングリも心配してくれたんだね」
抱きついてきたドングリの体を、両手で抱きしめながら柔らかい毛並みに顔を埋めた。リザスさんのことを全部放り出して、このままずっとこうしていたいと思えるほどにドングリの毛並みは最高だ!
そんな僕を現実に引き戻すようにホワイトさんが肩を叩く。ホワイトさんは黒板に『私たちも心配したんです!今度無理をしたら食事当番一週間の刑ですよ』と書き、ブルーさんとレッドさんとグリーンさんは、それに同調する様に、首の様に伸ばした体を激しく上下に振った。
食事当番一週間は嫌だな、〝手伝ってよ〟とスライムたちに抱き付き甘えてみたが、『それなら今日のようなことは二度としないでください』とさらに怒られてしまった。……反省してます。
(ルフトはみんなに愛されてるな)
(ナナホシくんだって、ルフトさんのことが好きなくせに)
(俺は別にそんなこと……ハナホシうるさいー)
(あー痛いよーナナホシくーん)
ドングリの背中の上でナナホシがハナホシをポカポカと叩く。
(主ドン、わしは隠れながら攻撃でいいのかゲコ)
「うん、ゲコタはそれでお願い」
(分かったゲコ。主ドン……ワシら魔物の本質は人間以上に好戦的なんだゲコ。これだけ強い相手に頼りになる仲間と一緒に挑めることに、みんな心が躍っているんだゲコ)
ゲコタは、みんな気合十分だから安心してほしいと僕に言った。
仲間になってから日の浅いロックジャガーのビセンテとプラントパイソンのペルハは、僕に絡むタイミングが分からずにオロオロしていたので、そっと頭を撫でながら〝二匹はまだ慣れていないと思うから無理はしないでね〟と声を掛ける。
最後は二八匹のレッサースパルトイたち一匹一匹に〝一緒に頑張ろう〟と声を掛けた。
僕たちが勝てば、黒いゴブリンたちは引き揚げてくれるはずだ。リザスさんとの戦いは、この戦争を左右するものになるだろう。
準備が整った――。
「レモン、先制攻撃は任せたよ」
(お任せてください、特大の吹雪をお見せします)
レモンが呪文を唱える間、フローラルがみんなに妖精の息吹を吹きかける。戦いを前に気分が高揚していくのを感じる。強敵と戦うための勇気をもたらす精霊の息吹だ。
レモンの『アイスストーム』が完成した。夜の森にリザスさんの大きな体を覆い隠す吹雪が吹き荒れた。
連携攻撃とばかりに、ハナホシが魔法で生み出した、五体のイリュージョンベアが突進する。
不意に吹雪は掻き消された。突っ込んだイリュージョンベアたちも、リザスさんの黒いフランベルジュが触れた瞬間、一瞬で燃え尽きたように消えてしまう。
「ほー魔法で出来た生き物だったか、悪いな俺の武器は魔法を喰らうんだ」
唖然とした。魔法を喰らう武器なんて、フローラルとレモンの魔法も全部消されてしまうってことか、イリュージョンベアだけじゃなくイリュージョンゴブリンやインスタントゴーレムだって消える可能性が高い。ブランデルホルストの武器はどうなんだろう?
混乱した僕は、リザスさんに思わず叫んでいた。
「ズルいですよ、魔法を消し去る武器なんて」
リザスさんが親し気に話すから、つい地が出てしまったんだと思う……恥ずかしいな。
「ふはははは、お前は本当に面白いな、俺を前に怯えぬどころか、頬を膨らませて真っ赤になり〝ずるい〟と叫ぶとは、確かに戦いを楽しむのに、この武器は邪魔になるな」
リザスさんはそう言うと黒いフランベルジュを放り投げた。僕らが戸惑うのも気にせず、腰に吊るした革袋から一対の鉄が縫い付けられたグローブを取り出して身に着ける。
「あまり得意な武器じゃないんだがな、ハンデだ」
リザスさんは左手の手の平を上に向け僕らに伸ばすと、指を曲げ〝かかって来いよ〟と挑発をした。
ローズとブランデルホルストがそれを合図に走り出した。ローズはそれぞれの手にスコーピオンとクレセントアックスを握り、ブランデルホルストは黒煙のグレートアックスを作り攻撃を仕掛ける。
リザスさんは、巨体に似つかわしくない素早い動きで二匹の攻撃全てを防ぐと、さらに一段階速度を上げて、前に踏み込みブランデルホルストを殴り飛ばした。派手に吹き飛んだブランデルホルストは、三本の木を倒してようやく止まる。
ホワイトさんが木の破片から作った五体のインスタントウッドゴーレムが、リザスさんの動きを封じようと取り囲む。たった一発のパンチでリザスさんはその包囲網を突破した。
フローラルの放った十本のマジックミサイルは直撃したが、全く効いていない。
リザスさんは本物の化け物だった。
ボロニーズとブルーさんが前に出て、盾で拳を受け止めようとするが軽々と吹き飛ばされてしまう。リザスさんは常に笑っている。戦いの何がそんなに面白いのかと、突っ込みたくなるほどにずっと笑いながら戦っている。
リザスさんは少しでも長くこの戦いを楽しもうと手を抜いているんだろう。その証拠にまだ一人の死者も出ていない。
「おい、もっと本気で来い。まだまだ暴れ足りん」
(馬鹿にしすぎですわ)
ローズが加速し全体重を武器に乗せて突っ込んだ。リザスさんは、ローズの全力の一撃を左手一本で止めてみせた。そのままローズの体に空いた右手でパンチを放つ、大きな衝撃音と共にローズの体が宙に舞い上がった。
「ローズ!」
我を忘れて突っ込もうとした僕をグリーンさんが止める。
リザスさんはそれでも止まらない。ついに死者が出た。正面に立ったレッサースパルトイの頭を掴むと、そのまま力任せに、鉄の様に硬い鎧を真っ二つに引き裂いたのだ。
戦いは続いた。
僕は、この戦いで従魔たちの名前を叫んでいるだけだ。既に三匹のレッサースパルトイが鎧を裂かれ死んでしまった。
(主様、水の精霊の雫を渡してください)
「嫌だ……レモンも死んじゃうかもしれないんだよ」
(このままだとみんな死んでしまうかもしれないんです。私は主様に出会えて幸せでした)
レモンが僕に優しく笑いかける。
〝やっと出来た大切な家族なんだ、みんな失いたくないよ〟目の前のレモンにそれを伝えたいのに言葉が出ない。
(泣かないでください。私は笑っている主様が大好きなんです)
レモンは小さな手で、僕の涙を受け止めた。
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