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連載
158話 問題の解決法を探して2(2021.08.21改)
しおりを挟む若竹色のとんがり帽子とローブ姿、五つ子にしか見えないおじいちゃん妖精であるニュトンは、僕らのために大急ぎで砂漠用装備を仕上げてくれた。日差し避けのフード付きのマントと砂地を歩くための短めのスキー板を履いて、僕らは砂漠を歩く。
三六〇度代わり映えしない砂の大地を見ていると気が狂いそうになる、何より〝暑くて暑くて……暑すぎるのだ〟もちろん暑いという言葉を言ってしまうと増々暑く感じるので、口には出さずに全て呑み込んだ。
もちろん何も考えずに平気で口に出すカワウソもいる。
「ルフトー暑いよー、そろそろ従魔の住処に戻ろうよ」
僕の横で同じようにマントを被るモーソンが、もう何度目だってくらいに愚痴をこぼす。全身を毛皮で覆われたモーソンが僕より暑さが苦手なのは分かるんだけど、出来れば何も言わずに歩いてほしい。
モーソンは、謎の実験の影響でワールトラと呼ばれるカワウソ人間になってしまった。僕の幼馴染である。
「ダーメ!さっき休んでから、まだ一時間もたってないじゃないか」
「だってぇぇーー」
モーソンは口を尖らせながらも、渋々と口を閉じた。
僕たちは、この二日間ずっと砂漠を渡るための船を牽く魔物を探している。もちろん魔物が見つかったからといって、従魔になるかどうかは分からないわけで……正直僕だって砂漠を歩くのをやめて、さっさと従魔の住処に籠りたいよ。
暑さに顔を歪める僕らと違ってスライムたちはとても元気だ。〝無理してない?〟とスライムたちに聞いてみたところホワイトさんが代表して『私たちは暑さにも寒さにも、あまり影響は受けないんですよ!火で燃やされちゃうと死んじゃいますが』とジョークを織り交ぜて黒板に書いた。スライムダンジョンで出会った当初に比べて、スライムたちもそれぞれ個性が出て来た気がする。みんなそうか……様々な種族の魔物たちと一緒に過ごすことでみんな成長しているんだろう。従魔は従魔師に、従魔師は従魔に影響されるのかもしれない。
「ナニ一人で黄昏てカッコつけているんだよー、暑いよールフト―」
我慢の限界が来たのか、モーソンが僕に飛び掛かってきた。
「カッコなんてつけてないから、ちょっと考え事をしていただけだから」
「ガオーライオンだぞー」
「カワウソじゃん!子供たちに大人気のカワウソだから!」
そんな僕らの遣り取りをスライムたちは、温かいまなざしで見守っていた。
暑さで僕らはおかしくなっているのかもしれない。
それにしても、船を牽く魔物なんてどこにいるんだ。こうして、ただやみくもに歩いているだけじゃ見つからない気がする。
向こうから出て来てくれる魔物もいる……砂ムカデにサンドワームに砂漠オオダンゴムシ、この三種類の虫の魔物とは遭遇率が高い。
砂漠オオダンゴムシは大きさが一メートル前後と、ラフラー砂漠の魔物の中では小さいのだが、硬い外皮と常に群れで行動しているため、なかなかに厄介だ。
ダンゴムシといっても、イポスさんの眷属の【ソウコウムシ】みたいな反則級の強さはない。
砂丘の上から体を丸め一斉に転がってくるのが特徴だ。そんなオオダンゴムシの群れを、ホワイトさんが召喚したインスタントサンドゴーレムたちが正面から受け止める。
一度回転が止むことでダンゴムシたちは元の姿に戻るため、僕らはそれをひっくり返して、起き上がれずバタバタする相手の柔らかい腹を攻撃して倒すだけだ。
モーソンも完成したばかりの新しい武器を試している。武器というよりは盾?ジャイアントクラムの貝殻で作った直径二十センチの小さな盾を拳に付けたナックルで、ダンゴムシを殴って潰す。モーソンのスキル『怪力』とも相性が良い武器である。
装備名は【ジャイアントクラムのシールドナックル】。攻防一体がテーマなんだ!とモーソンは嬉しそうに言った。
体の形状の問題なのか、モーソンはカワウソの体に変わってから、今までみたいに剣が振れなくなってしまった。それでニュトンたちに頼んで作ってもらったが、この拳武器だ。
倒した魔物は今まで同様、その場で解体して魔石を抜き取る。砂漠大ダンゴムシの殻は、硬さではジャイアントクラムやキラーポートナスといった魔物の素材には及ばないものの、加工もしやすく数も獲れるので小人たちへの良いお土産になりそうだ。
この砂漠を抜け出さないとことには、彼らとも会えないんだけど……。
解体した魔物の素材を入れるために従魔の住処を開くと、長い木の棒を持ったテリアとボロニーズが走って来た。
「あるじ、これ」
「あるじ、つりで、さかなのまもの、つるいいとおもう」
言葉足らずの弟ボロニーズを、兄のテリアがすかさずフォローする。
魔物を釣るための釣竿だからだろう、明らかに釣竿の先端に結ばれた釣り糸がおかしい。釣り糸というよりは太いロープにしか見えない……砂の中なら水の中の様に、釣り糸が見えて警戒されてしまうことも無いだろう。それでもこの太さはどうなんだ。
テリアとボロニーズは僕に一体何を釣らせる気でいるんだろうか、釣針も僕の手の平くらいの大きさがあるし、何より二匹の僕を見る目がもの凄く眩しい。
釣針の先には、魚の口から抜けにくいように返しも付いているから、大物が釣れた時には砂の中に引きずり込まれないように注意しないと、そんな心配事が顔に出てしまったのか、モーソンが〝大物が釣れた時には大声で教えてね、『怪力』で一気に引き上げるからさ〟と任せろと言わんばかりに自分の胸を叩く。
確かにモーソンの『怪力』なら余程とんでもないモノが釣れない限りなんとかなるだろう。
でも、そういうオカシナモノを無意識で引き寄せるのが僕だ。
次に、一艘の木製のボートを抱えてレッサースパルトイたちがやって来た。木製のボートは僕とモーソンとスライム四匹が乗るのに丁度良い大きさで、砂漠を渡る船の試作品なんだそうだ。
今回は、このボートを砂の川に浮かべてみる。
砂の川についても少し分かったことがある。砂の川が出現する前には、決まって大きな地響きが起きるのだ。
それに、一度砂が動きはじめると、最低半日は砂の流れは止まらない。
砂の川の流れは、濁流のように激しく流れる時と、動いているかどうかすらも分からない程のゆっくりと流れる時の二つの種類があるようだ。
万が一の時には、最悪ボートを捨てて従魔の住処に逃げ込めば何とかなるだろうと、僕らは緩やかな流れの砂の川にボートを浮かべて乗ってみた。
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