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6話 未踏遺跡
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「砂漠の中に、こんな場所があったんだな……すげー」
ヤス兄ことヤス=マリノルトは、車を止めた後、少しの間口を開けたままの呆けた表情で、砂の世界には聊か不釣り合いな灰色の渓谷を見つめた。渓谷には大小様々な大きさの岩も転がっており、このまま車で先に進むのは難しそうだ。
一度戻り、魔導人形輸送車を砂の中に隠すと、〇三式汎用型魔導人形タージル一機を動かす。
〇三式は四つの脚を持つ円形の形状をした魔導人形で、頭と尾を引っ込めた亀に似た形をしている。上部は上がりやすいように平らになっており、掴まるための柵もある。車では入り込めない地形に、人員や物資を運ぶための魔導人形である。
「やっぱいいよなライフル型は、ハンドガン型よりも力強さを感じるぜ」
「はー……ザイン、あんたってほんと呑気よね、私たちはこれから未踏遺跡に挑むのよ、中にどんな化け物がいるかも分からないのに、もう少し緊張感を持ったらどうなの」
「なんだよ、嫌ならついてこなきゃ良いだろ」
「嫌なんて言ってないわ、グルーノのおもちゃになるくらいなら遺跡の化け物に挑んだ方が百倍マシよ」
肩にライフル型魔導銃を吊るしたまま、ザイン=ゼルケとエミリ=カラドリスは動く〇三式の上で口論する。一番年下で背の低いポコル=ジフリールは、怖がりながらも両手で振り落とされないよう、目の前の柵を強く握る。そんなポコルを、アリス=シフォンは優しい眼差しで見守っていた。僕らは家族のように、いつも同じ屋根の下暮らしてきた。
「トマ、どうしたの?」
アリスが、一人反対方向を見る僕に気付いて声をかけた。僕はみんなとは反対側の遺跡の逆の方向を見つめていた。これは僕にしか見えない景色だ。危険を示す赤い光が、巨大な波となってゆっくりと僕らに近付いて来ているのだ。早くも嗅ぎつけられしまったか、僕はそう感じた。
「うん……追手が動き出したみたいなんだ」
「えっ!もうかよ?早すぎねーか、でも……追跡ビーコンは全部外したよな」
僕の言葉に食い付いたのは、声をかけたアリスではなくザインだ。
「逃亡者の行方を追う人工遺物みたいなものがあるんだろうね……予想はしていたけど、ちょっと早いかな、ふぁーあ」
熟睡できなかったせいだろう、緊張感のない欠伸が漏れる。
「おいエミリ、俺よりトマの方が緊張感がないんだけど」
「トマは特別よ、こんな変わり者他にいないわ」
じりじりと迫る波の速度から推測するに、追手の到着は四~五日ほど後になるだろう。一週間は時間を稼げだろうと、安易に考えすぎていたのかもしれない。当てが外れてしまった。
それにしても、どうやって『千の蜘蛛』は僕らの居場所を探し当てたのだろう。遥か昔、人は空よりもさらに高い、地上から十万メートル以上離れた場所にある暗黒空間に、たくさんの目を持った巨大な船を浮かべ、その瞳で地上を見張っていたという昔話がある。もし船が今も浮かんだままだとしたら……『千の蜘蛛』は、それを利用しているのだろうか?
分からないことをくよくよ考えても仕方がない。いまは先に進まないとな。
「みんな急ごう、追いつかれる前に遺跡に入らないと」
「でもよー、遺跡に行けば俺たちは本当に助かるのか?」
「そんなの行ってみなくちゃ分からないよ。でもそれしか方法が無いんだ」
灰色の渓谷の奥に望む遺跡。僕の目には、希望を知らせる黄色い光と危険を知らせる赤い光の二色の光が何重にも混ざり合い遺跡を包んでいるように見えた。明らかに赤よりも黄色い光は強く、この遺跡は僕たちに希望をもたらすものだと、僕の直感がそういっている。
目の前に建つ遺跡の形状は、ピラミッド型と呼ばれる四角錐の形をしたものだ。高さは十メートル以下、確認されているピラミッド型遺跡の中では小さな方で、恐らく、地上に見えている四角錐はあくまで目印で、本体は地下に向かって伸びる地下迷宮なんだと思う。
遺跡の場所が地図に記載されていたこともあり、周囲には人の手も入っており整備されていた。道を塞ぐような大岩は排除されており、車は厳しいが〇三式で進む分には問題なさそうだ。
遺跡に近づくことは危険ではない。遺跡は永い眠りについており、入口である扉を開けることで数百年ぶりに目を覚ます。遺跡の防衛機能である墓守の守護者たちも遺跡の外までは出てこない。
僕らは遺跡の前に到着した。
中央にある大きな扉の横に、黒曜石思わせる黒光りのする石板が立っていた。そこには遺跡の名前が彫られていた。
『ガゼルガイン』と……これが遺跡の持ち主の名なのか、単に故人の趣味で付けられた名前なのかは分からない。分かっているのは、この遺跡の名前がガゼルガインということだけだ。
石板の近くには後から立てられたであろう、まだ新しい木製の看板が立っていた。〝ここは反政府組織『千の蜘蛛』が見つけた遺跡であり、許可なく遺跡の扉を開けた者には、それ相応の罰を与える。〟と、脅し文句が書いてある。
ちなみに、遺跡の所有権を主張することは認められていない。遺跡がある土地の所有者であれば話も違ってくるが、ここは砂漠だ。土地の所有権なんてものも存在しない。
遺跡の扉は、僕だけに見える黄色い光に包まれていた。扉を開けること自体に危険はなく、むしろ開けることが僕たちにとって希望に繋がるということなんだと思う。
「なあ、トマ……本当に扉を開くのか」
ヤス兄は額に皺を寄せて嫌そうに言った。ここにいる誰もが不安なのだ。……遺跡の中には恐ろしい怪物たちがいる。それは、この世界で生きる者の常識であり、一攫千金を夢見て遺跡に潜った人間たちの多くが、毎年命を落としている。
「もちろん開けますよ。僕らが千の蜘蛛から逃げ切るためには、これしかないんです」
――と言ってはみたものの、本当にこれが正解なのかは分からない。僕に見えるのは、希望と危険を示す黄色と赤の光だけだ。結局判断するのは僕自身、入口の扉は〇三式が潜れるほどに大きかった。
遺跡の入口を開けるのは簡単だ。自分の中にある魔力を意識したまま石板に触れて『開け』と念じるだけである。
僕は目の前の黒い石板に触れながら『開け』と、ただ念じる。
大きな音を立てながら入口の扉が左右へと開く。
一見石の扉にしか見えないが、遺跡は破壊することが不可能であり、この石にしか見えない扉も普通の石ではなく特殊な鉱物である可能性が高い。破壊することが叶わない、現代の技術ではどうすることも出来ない特別なモノ。
この遺跡の中に食糧庫があるなら、どんな武器でも壊せない遺跡の中に籠り、相手が諦めるのを待つのもひとつではある。問題は外から開けることができない部屋があるかどうかだけど。
〇三式に乗ったまま中へと進む。都合がいいことに、僕らが扉を開けたからかもしれないが、中は明るかった。地下へと向かい伸びる緩やかな坂道。道は広く、途中進めず砂の中に埋めてきた魔導人形輸送車のような中型貨物車両ですらギリギリ進めそうである。車一台がやっと通過できる広さのため、帰りはずっと後ろ向きで走り続けることになりそうだが……。
遺跡の中は、予想通り複数の通路が入り組み合う巨大迷路であった。
部屋数も多いようで、道の途中には幾つもの扉がある。それでも僕らは見向きもせず奥へと進む。〝全部が赤く光ってるんだもん、怖くて開けれないよ〟
「便利なもんだな、トマがいれば遺跡の中も迷い知らずだな」
〇三式の運転席の真上についた小窓から顔を覗かせヤス兄が言った。ヤス兄は、僕の能力を道標か何かと勘違いしているんじゃないだろうか?僕が分かるのはゴールまでの道順ではなく、単に危険な道か安全な道か、それとも希望に通じる道なのかが、赤い光、無色、黄色い光で見えるだけだ。
入口からここまでも、幾つも扉があったが、どれも怖いくらいに真っ赤な光を纏っていた。入ってすぐの遺跡の扉って、思わず開けてみたくなるもんな……そんな人の心理を逆手にとるように、入り口付近は即死級の罠やとんでもない化け物が仕込んである部屋なのかもしれない。
僕は扉を開けずにひたすら黄色い光を辿るようにヤス兄に指示を出した。何度か〇三式の活動限界時間を向かえ休憩を入れながら進み、ようやく赤い光を帯びていない扉を見つけることができた。
光の灯らない無色の扉だ。中の扉も、手を触れて心の中で『開け』と念じながら魔力を流すことで開けることができる。
人力じゃ開きそうもない巨大な扉が、音を立てて左右に開く。無色の扉の向こう側にあったのは倉庫だった。〇三式もらくらく入る倉庫には、〇三式とも接続可能な、荷運び用のアタッチメントコンテナが幾つか転がっていた。倉庫の中に罠は無いようで、壁や棚のすべてが光を帯びてない。
みんなで倉庫を漁った。結局使えそうな物は無く、〇三式の後部にアタッチメントコンテナだけを取り付けて先に進む。そこからは、無色の扉が多く並び、そのどれもが倉庫だった。ひとつひとつ開けながら先に進む、見つかったもので役に立ちそうなのは、パテ状になった謎肉が入ったお約束の缶詰と、魔法機械をはじめとした魔道具の燃料にもなる魔石が少し、武器類をはじめとした人工遺物は見つからなかった。
その後も、赤い扉は避けて、無色の扉だけを開いて進んだ。
遺跡の中は常に明るく、僕らは時計を頼りに、夜には無色の扉の中にある部屋で頭から布を被り光を遮って眠った。
遺跡に潜り三日目――、ついに目的の場所と思しき扉を見つける。赤と黄色、二色の光が混ざり合いながら光る扉。危険と希望二つの特徴を合わせ持つ扉。
ヤス兄ことヤス=マリノルトは、車を止めた後、少しの間口を開けたままの呆けた表情で、砂の世界には聊か不釣り合いな灰色の渓谷を見つめた。渓谷には大小様々な大きさの岩も転がっており、このまま車で先に進むのは難しそうだ。
一度戻り、魔導人形輸送車を砂の中に隠すと、〇三式汎用型魔導人形タージル一機を動かす。
〇三式は四つの脚を持つ円形の形状をした魔導人形で、頭と尾を引っ込めた亀に似た形をしている。上部は上がりやすいように平らになっており、掴まるための柵もある。車では入り込めない地形に、人員や物資を運ぶための魔導人形である。
「やっぱいいよなライフル型は、ハンドガン型よりも力強さを感じるぜ」
「はー……ザイン、あんたってほんと呑気よね、私たちはこれから未踏遺跡に挑むのよ、中にどんな化け物がいるかも分からないのに、もう少し緊張感を持ったらどうなの」
「なんだよ、嫌ならついてこなきゃ良いだろ」
「嫌なんて言ってないわ、グルーノのおもちゃになるくらいなら遺跡の化け物に挑んだ方が百倍マシよ」
肩にライフル型魔導銃を吊るしたまま、ザイン=ゼルケとエミリ=カラドリスは動く〇三式の上で口論する。一番年下で背の低いポコル=ジフリールは、怖がりながらも両手で振り落とされないよう、目の前の柵を強く握る。そんなポコルを、アリス=シフォンは優しい眼差しで見守っていた。僕らは家族のように、いつも同じ屋根の下暮らしてきた。
「トマ、どうしたの?」
アリスが、一人反対方向を見る僕に気付いて声をかけた。僕はみんなとは反対側の遺跡の逆の方向を見つめていた。これは僕にしか見えない景色だ。危険を示す赤い光が、巨大な波となってゆっくりと僕らに近付いて来ているのだ。早くも嗅ぎつけられしまったか、僕はそう感じた。
「うん……追手が動き出したみたいなんだ」
「えっ!もうかよ?早すぎねーか、でも……追跡ビーコンは全部外したよな」
僕の言葉に食い付いたのは、声をかけたアリスではなくザインだ。
「逃亡者の行方を追う人工遺物みたいなものがあるんだろうね……予想はしていたけど、ちょっと早いかな、ふぁーあ」
熟睡できなかったせいだろう、緊張感のない欠伸が漏れる。
「おいエミリ、俺よりトマの方が緊張感がないんだけど」
「トマは特別よ、こんな変わり者他にいないわ」
じりじりと迫る波の速度から推測するに、追手の到着は四~五日ほど後になるだろう。一週間は時間を稼げだろうと、安易に考えすぎていたのかもしれない。当てが外れてしまった。
それにしても、どうやって『千の蜘蛛』は僕らの居場所を探し当てたのだろう。遥か昔、人は空よりもさらに高い、地上から十万メートル以上離れた場所にある暗黒空間に、たくさんの目を持った巨大な船を浮かべ、その瞳で地上を見張っていたという昔話がある。もし船が今も浮かんだままだとしたら……『千の蜘蛛』は、それを利用しているのだろうか?
分からないことをくよくよ考えても仕方がない。いまは先に進まないとな。
「みんな急ごう、追いつかれる前に遺跡に入らないと」
「でもよー、遺跡に行けば俺たちは本当に助かるのか?」
「そんなの行ってみなくちゃ分からないよ。でもそれしか方法が無いんだ」
灰色の渓谷の奥に望む遺跡。僕の目には、希望を知らせる黄色い光と危険を知らせる赤い光の二色の光が何重にも混ざり合い遺跡を包んでいるように見えた。明らかに赤よりも黄色い光は強く、この遺跡は僕たちに希望をもたらすものだと、僕の直感がそういっている。
目の前に建つ遺跡の形状は、ピラミッド型と呼ばれる四角錐の形をしたものだ。高さは十メートル以下、確認されているピラミッド型遺跡の中では小さな方で、恐らく、地上に見えている四角錐はあくまで目印で、本体は地下に向かって伸びる地下迷宮なんだと思う。
遺跡の場所が地図に記載されていたこともあり、周囲には人の手も入っており整備されていた。道を塞ぐような大岩は排除されており、車は厳しいが〇三式で進む分には問題なさそうだ。
遺跡に近づくことは危険ではない。遺跡は永い眠りについており、入口である扉を開けることで数百年ぶりに目を覚ます。遺跡の防衛機能である墓守の守護者たちも遺跡の外までは出てこない。
僕らは遺跡の前に到着した。
中央にある大きな扉の横に、黒曜石思わせる黒光りのする石板が立っていた。そこには遺跡の名前が彫られていた。
『ガゼルガイン』と……これが遺跡の持ち主の名なのか、単に故人の趣味で付けられた名前なのかは分からない。分かっているのは、この遺跡の名前がガゼルガインということだけだ。
石板の近くには後から立てられたであろう、まだ新しい木製の看板が立っていた。〝ここは反政府組織『千の蜘蛛』が見つけた遺跡であり、許可なく遺跡の扉を開けた者には、それ相応の罰を与える。〟と、脅し文句が書いてある。
ちなみに、遺跡の所有権を主張することは認められていない。遺跡がある土地の所有者であれば話も違ってくるが、ここは砂漠だ。土地の所有権なんてものも存在しない。
遺跡の扉は、僕だけに見える黄色い光に包まれていた。扉を開けること自体に危険はなく、むしろ開けることが僕たちにとって希望に繋がるということなんだと思う。
「なあ、トマ……本当に扉を開くのか」
ヤス兄は額に皺を寄せて嫌そうに言った。ここにいる誰もが不安なのだ。……遺跡の中には恐ろしい怪物たちがいる。それは、この世界で生きる者の常識であり、一攫千金を夢見て遺跡に潜った人間たちの多くが、毎年命を落としている。
「もちろん開けますよ。僕らが千の蜘蛛から逃げ切るためには、これしかないんです」
――と言ってはみたものの、本当にこれが正解なのかは分からない。僕に見えるのは、希望と危険を示す黄色と赤の光だけだ。結局判断するのは僕自身、入口の扉は〇三式が潜れるほどに大きかった。
遺跡の入口を開けるのは簡単だ。自分の中にある魔力を意識したまま石板に触れて『開け』と念じるだけである。
僕は目の前の黒い石板に触れながら『開け』と、ただ念じる。
大きな音を立てながら入口の扉が左右へと開く。
一見石の扉にしか見えないが、遺跡は破壊することが不可能であり、この石にしか見えない扉も普通の石ではなく特殊な鉱物である可能性が高い。破壊することが叶わない、現代の技術ではどうすることも出来ない特別なモノ。
この遺跡の中に食糧庫があるなら、どんな武器でも壊せない遺跡の中に籠り、相手が諦めるのを待つのもひとつではある。問題は外から開けることができない部屋があるかどうかだけど。
〇三式に乗ったまま中へと進む。都合がいいことに、僕らが扉を開けたからかもしれないが、中は明るかった。地下へと向かい伸びる緩やかな坂道。道は広く、途中進めず砂の中に埋めてきた魔導人形輸送車のような中型貨物車両ですらギリギリ進めそうである。車一台がやっと通過できる広さのため、帰りはずっと後ろ向きで走り続けることになりそうだが……。
遺跡の中は、予想通り複数の通路が入り組み合う巨大迷路であった。
部屋数も多いようで、道の途中には幾つもの扉がある。それでも僕らは見向きもせず奥へと進む。〝全部が赤く光ってるんだもん、怖くて開けれないよ〟
「便利なもんだな、トマがいれば遺跡の中も迷い知らずだな」
〇三式の運転席の真上についた小窓から顔を覗かせヤス兄が言った。ヤス兄は、僕の能力を道標か何かと勘違いしているんじゃないだろうか?僕が分かるのはゴールまでの道順ではなく、単に危険な道か安全な道か、それとも希望に通じる道なのかが、赤い光、無色、黄色い光で見えるだけだ。
入口からここまでも、幾つも扉があったが、どれも怖いくらいに真っ赤な光を纏っていた。入ってすぐの遺跡の扉って、思わず開けてみたくなるもんな……そんな人の心理を逆手にとるように、入り口付近は即死級の罠やとんでもない化け物が仕込んである部屋なのかもしれない。
僕は扉を開けずにひたすら黄色い光を辿るようにヤス兄に指示を出した。何度か〇三式の活動限界時間を向かえ休憩を入れながら進み、ようやく赤い光を帯びていない扉を見つけることができた。
光の灯らない無色の扉だ。中の扉も、手を触れて心の中で『開け』と念じながら魔力を流すことで開けることができる。
人力じゃ開きそうもない巨大な扉が、音を立てて左右に開く。無色の扉の向こう側にあったのは倉庫だった。〇三式もらくらく入る倉庫には、〇三式とも接続可能な、荷運び用のアタッチメントコンテナが幾つか転がっていた。倉庫の中に罠は無いようで、壁や棚のすべてが光を帯びてない。
みんなで倉庫を漁った。結局使えそうな物は無く、〇三式の後部にアタッチメントコンテナだけを取り付けて先に進む。そこからは、無色の扉が多く並び、そのどれもが倉庫だった。ひとつひとつ開けながら先に進む、見つかったもので役に立ちそうなのは、パテ状になった謎肉が入ったお約束の缶詰と、魔法機械をはじめとした魔道具の燃料にもなる魔石が少し、武器類をはじめとした人工遺物は見つからなかった。
その後も、赤い扉は避けて、無色の扉だけを開いて進んだ。
遺跡の中は常に明るく、僕らは時計を頼りに、夜には無色の扉の中にある部屋で頭から布を被り光を遮って眠った。
遺跡に潜り三日目――、ついに目的の場所と思しき扉を見つける。赤と黄色、二色の光が混ざり合いながら光る扉。危険と希望二つの特徴を合わせ持つ扉。
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