剣も魔術も使えぬ勇者

138ネコ@書籍化&コミカライズしました

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第2章「魔法都市ヴェル」

第13話「優しさ」

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 あの後、治療院で目が覚めた僕は、サラ達から叱られた。それはもうボロクソに。
 リンにあれだけ言っておいて、自分は無茶してキズだらけで帰って来たんだから、一切の反論のしようがない。
  
 リンの足のケガについては、何針か縫ったようだが、ちゃんと治療院に通えばキズ跡は残らないといわれホッとした。
 僕のケガは腹部にそれぞれ2針づつと、両肩両足にヤケドをおっているが、これも治療院に通えばキズ跡は残らないそうだ。
 キラーベアは、駆けつけてくれたシオンさん達が倒してくれたそうだ。 
 シオンさん達に助けてもらったお礼を言いたかったけど、彼らはもう宿に帰っているようだ。後でお礼を言いに行こう。
 色々とイレギュラーな事態があったとはいえ、もうちょっと考えて依頼を受けるべきだったと後悔している。
 魔術師至上主義のような考えは、僕が学園に居た時からあったんだ。そんな人間が冒険者をどう扱うかなんて少し考えればすぐわかる それなのに僕は浮かれて依頼を受けてしまった。

「スクール君、今回の依頼の事で聞きたい事があるんだけど……」

 スクール君に聞いたところ、ああいった態度の生徒は少なくない為、冒険者との間で問題になる事が多いようだ。
 スクール君は僕が無事なのを確認すると、治療師の女性にお礼を言って帰って行った。

「すみません、今回の依頼は僕の情報不足でした。ちゃんとスクール君から聞いておけば」

「何言ってんのよ、別にアンタ一人の責任なんて誰も思っちゃいないわよ」

「はいです。リンも凄く簡単な依頼だと言って、楽観視していましたです」  

「毎日卒業試験の依頼を受けようと言い出したのは私」


 「でも僕が」「いえ、リンが」「私が」僕もリンもアリアも、それぞれ自分に責任があると主張する。

「あぁ、もううるさい。全員で決めた事なんだから全員の責任で良いでしょ。さっさと冒険者ギルドへ報告に行くわよ」

 サラの一喝、「それでも」と言いかけた所で、サラに頭を叩かれた。

「失敗なんてどうせこの先いくらでもするだろうし、そのたびにこんな事言ってたらやってられないわ。誰かが勝手に決めたわけじゃないんだから、誰も責めなくて良いの」

 ピシャリ、と反論を許さないと言う感じで言われてしまった。  
 そのまま反論する間も与えずに「行くわよ」と部屋から出ていくサラ。

「リン、背負おうか?」

「もう歩くくらいは出来ます。それにエルクは肩と足を火傷しているんですからリンを背負うのは無茶です」

 そう言ってリンは立ち上がるが、立ち上がる時にちょっと痛そうな顔をしていた。
 そんなリンを、アリアはひょいっと言った感じで持ち上げると、お姫様抱っこをして歩いて行った。

 お姫様抱っこをされたリンが抗議の声を上げているが、聞く耳を持たないアリアに対し、「チッ」と舌打ちをしていた。多分照れ隠しの方の舌打ちだろう。

「リン、まるでお姫様みたいだね」

「チッ」

「さっきのエルクもこんな感じだった」

 えっ、ちょっと待って。
 気を失っていた僕は、シオンさんに背負われて帰って来たんじゃないの?

「シオン達にはエルクの装備を持ってもらったから、私が抱きかかえて戻ってきた」

「エルクをお姫様抱っこしてるアリアを見た時は私も笑ったわ。普通立場逆でしょ、って」

「エルクは、まるでお姫様みたいです」

 リンが「言ってやったぜ」と言う感じに、最高のドヤ顔を決めてくる。
 今日の僕はブーメランが刺さってばかりだ。チクショウ。
 冒険者ギルドに着くと、今日も他の冒険者がニヤニヤした感じでチラチラと見てくる。
 昨日居た人達は、今日は僕らを見ても興味を示さなかったが。
  
「プー、クックック」

 まぁいいや、無視だ無視。

「おい、待てよ、今日の依頼はどうだったんだ? 卒業試験の護衛に行ったんだろ?」

 テーブルに座って酒を飲んでいる4人の男女が通り過ぎようとした僕らに、絡んできた。
 剣を腰にぶら下げている中年の男性と2人と、杖を持った男性と女性。冒険者のパーティだろう。
 彼らに声をかけられて、一気に注目が集まった。

「おいおい、無視とは酷いな」

 それでも通り過ぎようとしたところで、僕の腕を掴まれた。
 本当は無視したいけど、振り払おうにも相手の力が強すぎる。
 見ればサラが怒りで小刻みに震えている。このままじゃ揉め事になるし、仕方ない。

「いやぁそれが、見事に失敗しちゃいましたよ」

「おいおい、失敗かよ」

 それを聞いた瞬間に、周りが爆笑をし始める。
 僕は「あははは」、と軽く笑いながら道化を演じる。 
 どうせバカにしたいだけの連中だ。好きに笑わせてやるさ。
 今はサラが他の冒険者にキレないように上手く立ち回らないと。キレるならせめて僕にキレてくれ。
 他の冒険者と揉めて、これ以上誰かがケガなんてして欲しくないから。 

「まぁまぁ、席に座れや」

「おやおや? メシでも奢ってもらえるんですか?」

「おう、好きな物頼みやがれ。ここは俺達が持ってやるよ」

「はぁ、またランベルトの悪い癖が出てる」

 あれ? 思った反応と違うぞ。
 予想外の反応に面食らってしまい、気づけば言われるがままに僕らは席についていた。

「おう、お前ら一人1シルバのカンパだ」

 ランベルトと呼ばれた剣士っぽい中年が叫ぶと、こちらをニヤニヤ見ていた連中が立ち上がり、僕が座ったテーブルの上に、次々と1シルバずつ置いて行った。
 「まぁ気を落とすな」「あの学生共マジ殺したくならね?」「洗礼を受けちゃいましたか」等と僕らを馬鹿にするどころか、慰めようとしてくれていた。

「えっ、あの……」

 キレる寸前だったサラも、ワケが分からないと言う顔をしている。
 多分僕も同じ顔をしているんだろう。
 テーブルの上に置かれたお金は30シルバ以上はあるだろう。一体どういう事なんだろう?

「俺らも新人時代に金に目がくらんで、卒業試験の護衛の依頼を受けたのよ。そしたらさ、あいつらむかつくだろ? ぶん殴ってやったら依頼失敗しちまってよ」

 ランベルトさんは僕の隣に座り、くっくっく、と言った感じで笑いながら、酒を片手に語ってくれた。
 ここでは毎年新人が同じように依頼を受けて、失敗して帰って来る。
 それを見かねた上級ランクの冒険者が違約金をカンパするのが、いつからか恒例になったそうだ。
 新人の愚痴を聞き、それを肴に「自分達の頃もこんな事があった」と言って酒を飲むのが、この時期の楽しみになっているとか。

「そこのちっこいアンタ、アンタも獣人だろ? あいつら獣人だからって何か言ってこなかったかい?」

 犬っぽい耳の獣人さんが、リンの匂いをクンクンかいている。女性同士だからセーフかな。
 同じ獣人のリンが気になったのだろう。匂いをかぐのが獣人の挨拶かなにかなのだろうか?
 リンがやっている所を見た事がないけど。

「汚らしい獣人とか、獣人だからキラーベアを呼び寄せたと言われたです」

「うっわ、ひっでぇこと言う奴居るんだな。ってかキラーベア相手に良く生き残れたな」

「ほんと酷いこという奴も居るもんだね」

 まだ注文をしていないが次々とテーブルの上に料理が運ばれてくる。多分他の冒険者の人達の計らいだろう。
 テーブルごと近づけて、僕らの話を聞きに来てくれる人も居た。
 リンが獣人だからと言う理由で、学生にいわれのない中傷をされた時の話を涙ながらに聞いてくれる人も居て、僕もまた涙が出そうになってしまう。

 「バカにして笑っている連中だ」なんて思い、僕も彼らを馬鹿にしてた事を心の中で謝罪して、料理に手をつけた。
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