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第2章
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「秘密のエルドラド」は王道の乙女ゲームだ。隣国から身分を隠して留学した王女がヒロインで、その不幸な生い立ちを乗り越え最愛の人を見つけるストーリー。複雑な家庭環境のせいで愛を信じられなかった王女が王立学園で生活するうちにさまざまな人と出会い、愛する喜びを知っていくというのが基本ストーリーで、勿論その間には様々な試練が立ちはだかる。
王女の学園生活の中心はひょんなことから参加することになった生徒会。だから勿論、攻略対象は会長のクライブ殿下を初めとした生徒会執行部の人々。お茶会で会ったロランさんもその一人で、後は生徒指導の先生に学園の庭師(実は精霊の設定)などなど。
やがて最愛の人を見つけたヒロインは彼との結婚を望む悪役令嬢に悪事をでっち上げられて絶体絶命の危機に陥るのだが、それをどう跳ね返せるかは選択した攻略対象との好感度による。ちなみにクライブ殿下ルートで好感度が高い時は、卒業パーティーでの溺愛アンド婚約宣言になる。
ストーリーは可もなく不可もなしって感じで特筆すべきものはなかったけれど、そのビジュアルの素晴らしさはファンの間では有名で。特にスチルは垂涎もの美麗画で、それをコンプリートする為だけに何度もやり込む人も少なくなかった。勿論、前世の私もその一人だったわけだけど。
「その美しさを直接見れるなんて贅沢だとは思うんだけどね……」
呟いて、私はぼんやりと窓の外に視線を飛ばした。
衝撃のお茶会から1年半、3年生になった私は学園の生徒会室ですっかり馴染んでいた。ただ入学前の想像と違って、机の上には学園生徒会の経理簿を開いて、殿下の秘書のはずがすっかり王立学園の生徒兼生徒会執行部の人間だ。勿論秘書の仕事もしているけれど、まだ学生である殿下の仕事はそこまで多くない。授業内容はとうの昔に履修済みの殿下だけど、授業に参加しつつ生徒会長の仕事をこなし、将来の為に人脈を作りつつ側近候補になり得る人材を見つけるのに忙しいからだ。
だから必然的に私の仕事も多くなくて、快適に生徒ライフを楽しませてもらっている。
お茶会の翌日にはクライブ殿下から私の職場へ丁寧な書簡が届き、その二週間後には編入試験、それと同時進行で制服の採寸。あれよあれよと詰め込まれる予定に流され、親の喜ぶ顔に「これは逃げられない」と諦め、今まで働いた商会に急な退職の挨拶と謝罪に赴いた。
私が伝える前に、商会にはクライブ殿下から丁寧な謝罪の手紙が届いていたそうで、父の友人を始め同僚の方々には「新しい世界で頑張れ」と激励とともに送り出してもらったけれど。
そうしてやってきた王立学園での学生生活は、意外と快適だったりする。秘書の仕事も負担になるほどでもないし、殿下と行動を共にするためにとほぼ強制的に入れられた生徒会の仕事もやりがいを持っている。
クラスメイトもほんわりと育ちの良さを感じさせる令嬢令息が多いせいか、心配していたようなイジメもないし、勉強も楽しい。放課後にする殿下の秘書としての仕事や生徒会の仕事だって、生活にメリハリを与えてくれるスパイスみたいで刺激的だし。何より、殿下を初めとする各攻略対象者と直に会えるばかりかお話し出来るのだ。楽しくないはずがない。
王女の学園生活の中心はひょんなことから参加することになった生徒会。だから勿論、攻略対象は会長のクライブ殿下を初めとした生徒会執行部の人々。お茶会で会ったロランさんもその一人で、後は生徒指導の先生に学園の庭師(実は精霊の設定)などなど。
やがて最愛の人を見つけたヒロインは彼との結婚を望む悪役令嬢に悪事をでっち上げられて絶体絶命の危機に陥るのだが、それをどう跳ね返せるかは選択した攻略対象との好感度による。ちなみにクライブ殿下ルートで好感度が高い時は、卒業パーティーでの溺愛アンド婚約宣言になる。
ストーリーは可もなく不可もなしって感じで特筆すべきものはなかったけれど、そのビジュアルの素晴らしさはファンの間では有名で。特にスチルは垂涎もの美麗画で、それをコンプリートする為だけに何度もやり込む人も少なくなかった。勿論、前世の私もその一人だったわけだけど。
「その美しさを直接見れるなんて贅沢だとは思うんだけどね……」
呟いて、私はぼんやりと窓の外に視線を飛ばした。
衝撃のお茶会から1年半、3年生になった私は学園の生徒会室ですっかり馴染んでいた。ただ入学前の想像と違って、机の上には学園生徒会の経理簿を開いて、殿下の秘書のはずがすっかり王立学園の生徒兼生徒会執行部の人間だ。勿論秘書の仕事もしているけれど、まだ学生である殿下の仕事はそこまで多くない。授業内容はとうの昔に履修済みの殿下だけど、授業に参加しつつ生徒会長の仕事をこなし、将来の為に人脈を作りつつ側近候補になり得る人材を見つけるのに忙しいからだ。
だから必然的に私の仕事も多くなくて、快適に生徒ライフを楽しませてもらっている。
お茶会の翌日にはクライブ殿下から私の職場へ丁寧な書簡が届き、その二週間後には編入試験、それと同時進行で制服の採寸。あれよあれよと詰め込まれる予定に流され、親の喜ぶ顔に「これは逃げられない」と諦め、今まで働いた商会に急な退職の挨拶と謝罪に赴いた。
私が伝える前に、商会にはクライブ殿下から丁寧な謝罪の手紙が届いていたそうで、父の友人を始め同僚の方々には「新しい世界で頑張れ」と激励とともに送り出してもらったけれど。
そうしてやってきた王立学園での学生生活は、意外と快適だったりする。秘書の仕事も負担になるほどでもないし、殿下と行動を共にするためにとほぼ強制的に入れられた生徒会の仕事もやりがいを持っている。
クラスメイトもほんわりと育ちの良さを感じさせる令嬢令息が多いせいか、心配していたようなイジメもないし、勉強も楽しい。放課後にする殿下の秘書としての仕事や生徒会の仕事だって、生活にメリハリを与えてくれるスパイスみたいで刺激的だし。何より、殿下を初めとする各攻略対象者と直に会えるばかりかお話し出来るのだ。楽しくないはずがない。
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