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第6章

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結論から言えば、王妃さまの提案は母にとって喜ばしい事だった。
押し切られるように承諾した母は、突然の訪問の翌日から数日に一度の割合で王宮に出向いている。とは言え、流石に『王妃様に裁縫を教える』と言うのは体裁が悪いので、グリンデル伯爵夫人も巻き込んで2人が王妃様の話し相手として伺う程らしい。いきなり交流のない男爵夫人が1人で王妃様を訪ねるのは不審すぎるけれど、内政に携わり王様からの信任も厚いグリンデル伯爵の夫人も一緒ならその心配もいらないのだとか。

「王妃様は熱心で、それにとても器用でらっしゃるのよ」

王宮から帰ると楽しげに話す母を見るのは楽しい。だからつい、要らぬことまで聞いてしまった。

「王妃様は裁縫を習って、何を作りたいのかしら。やはりポーチ?」

「いいえ。それが違うの。お知り合いの令嬢にプレゼントするドレスにご自身で作った飾りを付けたいって。本当はドレスのリメイクをご自身もしたかったみたいだけど、真新しいドレスだし、何より時間がないからせめて飾りだけでもって」

「王妃様が令嬢にドレスをプレゼントするの?」

「息子2人しか産まなかったから娘のドレス選びをするのも初めてなのって、とても楽しそうよ。王子様方のどちらかのお相手の令嬢に贈られるのね」

「あら、じゃあ弟殿下の婚約者の令嬢にかしら。今年婚約なさったのだし」

「そうねぇ。でもあの方の髪は王妃様に似て茶色ではなかったかしら?」

思案顔の母に頷く。
兄のクライブ殿下は髪も瞳も王様と同じ色をしているが、弟の第二王子は逆に両方王妃様に似て茶色の髪とヘイゼルの瞳だ。顔立ちは似ているのにその色彩が全く違うのだ。
私の返答にほらっと笑った母は楽しそうに教えてくれる。

「では王太子殿下のお相手によ。だって王妃様、金色とピンク色の紗を重ねて大ぶりの花を作っているんですもの。ワンショルダーのドレスの肩に素晴らしい花が咲いたようでとても素敵なドレスなの」

うっとりと夢見るように語り続ける母の声の後半はでも、ちっとも私の頭の中に入って来なかった。

「金とピンク……」

脳内には今日も見た生徒会室での様子が浮かぶ。楽しげに親しげに気を許した空気を漂わせて話す金色の髪のクライブ殿下と、笑顔で返すエルフリーデ先輩のピンク色の揺れる髪。

きっと幼馴染の2人だとこの間理解したはずなのに、その先をちっとも想像していなかった。

王太子と隣国の姫君。妙齢な2人の関係が友人であったとしても、良好なら周りはきっと期待する。仲睦まじい夫婦になってくれるのを望んで縁組が持ち上がってもおかしくはない。と言うより、それが当然の流れだろう。
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