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第6章

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その言葉を聞いて私はようやっと自分の失態気づいた。

「っあ!」

「リディア?どうしたのです。おかしな声を出して」

「申し訳ありません、お母様。私、嬉しくてうっかり殿下にドレスのリメイクのお話を……」

殿下だけではない。生徒会室での空気に気を許していたのは私の方だ。ドレスの問題を上手く解決出来たと思って母にリメイクしてもらう事を得意げに話してしまうなんて。令嬢失格だ。

「まぁ……」

母は私の言葉でようやく事態が飲み込めたらしい。項垂れる私の頬をそっと撫でてから王妃様に向き直った。

「ご存知かとは思いますが、我が家は貴族としての体面をようやく保っている状態です。主人はもちろん、娘もクライブ殿下の秘書として働いておりますし、家計の足しにと私も裁縫で金銭を得ております。確かに社交界では眉を顰められる行為かもしれませんが、自身の労働の対価として金銭を得ることは恥ずかしいことではないと考えております」

優しく穏やかでちょっと気の弱い、社交の苦手な母が家と娘の名誉を守る為に背筋を伸ばし、凛と意見する姿は美しくて頼もしかった。いつも自分が働いて守っている気になっていた母に、やっぱり守られていたのだとなんだか誇らしくなる。

「私もそう思います」

王妃様も母の言葉を好ましく感じてくれたのだろう。深く頷いて心からとわかる同意の言葉を下さった。そして私たちに自分の気持ちが伝わったことを確認すると、すっと姿勢を正した。

「そのウェルデル夫人のセンスと技能を見込んでお願いに参りましたの。私にお裁縫を教えて頂きたいの!」

突然で意外すぎる提案に固まった母がようやく口を開いた。

「さ、裁縫をですか!?私が?教える?」

「ええ。是非ともお願いします!」

「無理です。そんな、そんな大それたーーー」

「いいえ!どうしても教えていただきたいのです。承諾して下さるまでここから動きませんから!」

「あ、あの、王妃さま…」

結局、根負けしたのは社交と交渉が苦手な母で。私は2人のやりとりを呆然と見つめて心の中で呟く。
殿下むすこをかわしたと思ったら王妃ははが来るなんて、油断も隙もあったものじゃない、と。
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