自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月

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瞳は透けるような空色で、高い鼻梁と薄く形の良い唇。絶妙なバランスで配されたそれらは美の女神の寵愛の賜物としか言えない麗しさを漂わせ、見るものを魅了する。
そして、そのかんばせを縁取るのは、陽の光を受けてきらきらと艶めく、透けるような銀色の髪。それを無造作にひとつにまとめ流している背中はとても大きくて、中性的な美しさを雄々しく見せる。
騎士団の制服がよく似合うのは、肩にも胸板にもきちんと筋肉がついているからだろう。

それらをじっくりと観察していたから、アンジェリーナの反応は遅れてしまった。

「……あの………お好きな菓子はありませんか?」

気がつけば目の前で少しだけ困り顔をした貴公子がアンジェリーナを見つめている。

「あ、あの、あの……失礼いたしました」

羞恥で赤く染まった頬を隠したくて、さっと俯けば優しい声が聞こえた。

「では私の好物をおすすめしましょう」



美しい花が咲き誇る庭園での茶会。同じテーブルには勿論、周囲にも適齢期を迎えた令嬢や貴公子が揃う今日は、実質王家主催のお見合いパーティーだ。誰もが美しく装い、少しでも良い条件のお相手を求めて決死の覚悟で参加している。
ここに親の付き添いはないけれど、家の繁栄の為に頑張ってくるのだと圧力と取れるほどの激励を受けてきた者も多いのだろう。

だが、アンジェリーナは違う。
彼女元来の気弱な性格に加え、捗々しくない容姿を冷静に理解している両親から言われたのは「失礼のないように」の一言だけだ。

両親も、家を継ぐ兄も、アンジェリーナをとても愛してくれている。無理してどこかに嫁がなくても、アンジェリーナが一生を領地でひっそりと暮らすくらい面倒を見てやるとも言われているし、自身もその愛情に甘える気は満載だ。だから、今日だって本当は来たくなかった。いや、王家からの招待でなければ、どうにか言い訳を考えて来なかっただろう。いつものように壁の花になるのが確定してるのだから当然の話だ。

なのにどうした訳か、彼女をテーブルに誘い熱心にお茶やお菓子を勧めてくれるのは令嬢達のお目当てで、本日の一番人気。名門伯爵家令息のユーティリスだった。
アンジェリーナの兄と友人らしく、何度か邸に来ているのを見かけたことはある。でもその時だって挨拶をしたくらいで、きちんと話をしたことはない。もっと言えば、なるべく距離を取りたいと思っている人物なのに。
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