竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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42首目に潜む待ち人 〜竹一族の記憶(三)〜

十四

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 1000年前の和歌が、1人の待ち人を生み出した。いや、無理に因果関係を作ることはしない方がいいかもしれないが、少なくとも男の言い分に沿うなら、こういうことになる。正直空いた口が塞がらないし、だからと言って地縛霊はやりすぎだと思う気持ちもある。だけど、それほどまでに男は、誰かを待ち続けていたんだ。


 一緒に行こう。私はずっと待っていた・・・・ようやくあなたを見つけたんだ。


 姉さんは、舞いながら一歩近づいた。ーー来た。
「私があなたの探している誰かだと確信があるの? 否定はしない?」
 また尋ねた。本当に珍しい。姉さんは普段、こんなことをしない。幽霊や怪異と呼ばれる存在に対して、深い思い入れを見せはしない。


 しないさ。私は確信しているんだ。あなたこそが、私が探していた人だと。だから、もっと近づいて顔を見せてくれ。そうしたら、もっとあなたのことがわかる。


 姉さんは徐々に近づいていく。きちんと舞を舞いながらなんて、簡単なことじゃない。容易に行う姉さんは、知っているとは言え身体能力が高い。高くなきゃ、この力は使いこなせない。
「いいわ。さあ、これが最初で最後よ」
 姉さんの足音が一瞬、止んだ。同時に姉さんの手が動く音がした。きっと、幽霊の男の喉元あたりが、桜色に染まったんだろう。


 ああ・・・・間違いない。あなたこそ私がーー




 簪を引き抜くと、束ねていた髪が落ちた。だけど、そんなことはどうでもいい。重要なのは、祓い損ねないことだけ。祓えなければ、次は四音に牙を剥く。そんなことは絶対にさせない。
 引き抜いた簪は銀色を基調としていて、桜の装飾がついている。美しさしか身につけていないように見えるけれど、これは除霊のための武器。問題は、近距離になるから失敗が許されないこと。
 私は簪を持つ右手を真っ直ぐに伸ばし、泣きそうな顔をしている幽霊の喉元に突き刺した。血が出ないことはわかっている。ただ、致命的な傷さえ与えられれば、それでいい。
 幽霊は目を見開いて驚愕を示した。無理もない。だけどこれで、私が待っていた誰かではないとわかったはず。


 どうして・・・・。私は、私はただ、あの人を待っていただけなのに・・・・。


「そうね。だけど、あなたは約数百年もの間、この地に留まっていた。あなた自身は気がつかなかったかもしれないけれど、強力な地縛霊になってしまっている。だから祓うしかないの。きっと近いうちに、無差別に人間を殺すから」
 そうなる前に殺すのだから、寧ろ慈悲深い。まともな心が残っているうちに祓われる方が、多少は人間らしく死ねるわ。
「向こうに行けば、待っていた誰かに会えるわ。それだけの関係がある以上、1人だけ次に行くことはないから、それだけは安心していいわ」
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