竹一族の記憶

夕凪ヨウ

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42首目に潜む待ち人 〜竹一族の記憶(三)〜

十三

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 音のない舞は、見ることで魅力を感じる。だからこそ私は、姿。言い換えれば。除霊は、その後だ。


           ※


 桜のような美しさと華やかさの中に、太い枝葉のような力強さがあった。
 姉さんは美人で、いわゆる、立てば芍薬しゃくやく、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、の一言が似合う人だ。
 だけど、姉さんが何よりも美人であると感じるのは、除霊のために舞っている時だろう。その美しさを武器にした除霊は、姉さんにしかできないことだ。
 俺はおもむろに目を閉じた。恐らく、そろそろ幽霊の男は現れる。その姿を、俺は視てはならない。幽霊は妖怪と違って、自ら姿を見せてしまうから、より注意が必要だ。


 美しい・・・・。なんて、美しい・・・・


 案の定、魅了されている。だけど、まだ足りない。姉さんの舞は美しいが、ずっと舞っているわけではないし、ただ舞えばいいものではない。幽霊や怪異が魅了されていると目で確認するまでは、舞を止めることはできないのだ。


 私は、私が探していたのはーー


 また同じことを言うのだろうか。違うというのに。だけど、その方が、この男にとっては幸せなのかもーー
「あまりに遠い昔のことで、私は誓いを忘れてしまったわ」
 え? 姉さんが、舞の最中に幽霊の声に答えた? そんなこと、今まで1度もなかったのに、どうして急に? 第一、音を入れないからこそ、除霊が上手くいくんじゃ?
「教えて。私は、あなたと何を誓ったのか」
 まさか姉さん、男が待っていた誰かの振りをするつもりなのか? そんなの無茶だ。本当に違うとわかった時、何が起こるかわからないじゃないか。
 思わず目を開けそうになったが、消え入るような声で名前を呼ばれ、咄嗟に強く閉じた。ダメだ。現実に引き戻して仕舞えば、絶対に上手くいかない。


 一緒に生きようと誓った・・・・。身分も家も捨てて・・・・この末の松山で、私はあなたを待っていた・・・・。だけど、あなたは来なかった。後で、私が来た時にはすでに死んでいたと知ったんだ。


「どうしてこの場所だったの? あなたのような貴族であれば、都で待つのが当然のはず。遠く離れたこの場所に来たのはなぜ?」


 和歌だ。私が生まれるずっと前に詠まれた一首の和歌が、私をここへ連れてきた。女人を待つ男の心情を詠んだ、あの素晴らしい和歌・・・・。


 姉さんの朗唱する声が響いた。たった1日しか経っていないのに、まるで違う感慨を持って、その和歌は俺の心に響いた。
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