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母の御魂は四つ辻に眠る 〜竹一族の記憶(五)〜
八
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奏子と出会った当時、一樹たち3人はまだ幼かった。自分の家がどんな場所なのかも、まだ理解していない年頃だ。
出会った日、私は奏子を旅館ではなく直接自宅へ招き、自宅で仕事をしていた律子に彼女を紹介した。
「お帰りなさい。その方は?」
「奏子さんという。外で三味線を弾いていたんだが、驚くほど上手でな。ほら、最近宴会の弾き手が病気で退職しただろう? 新しい人にどうかと思って」
「まあ、それはありがたい話だけど・・・・そんなにお上手なの? 歴史ある旅館だから、随分審査が厳しいでしょう。お義父様がお許しにならないと」
「ああ。だから取り敢えず演奏を聞いてもらおうと思うんだ。律子も一緒にどうだ?」
今思えば強引な提案だった。律子はともかく、当時まだ当主として君臨していた父・清二を呼び出すなど、普通はないことだ。
「随分と唐突だな、零士」
父は名前の通り次男で、本来なら当主になる人ではなかった。それには諸々理由があるんだが、一先ず置いて、話の続きをしよう。
「ええ。ですが早く決めてしまう方がいいでしょう。お花見の時期は、宴会をされるお客様が多いですから」
まるで他人のようだと、よく言われる関係性だった。律子は慣れたものだったが、奏子は少し戸惑いつつも頭を下げるに留めた。
「まあ、細かいことはいい。取り敢えず何か弾いてみろ」
一族の中の誰もが、父の前では緊張して口も聞けないのが普通だった。しかし、奏子は物怖じせずに頷き、見事に一曲を引いた。何度聴いても、変わらない美しい音だった。
「・・・・いいだろう。演者として雇おう。稽古のために我が家の空いている間を貸し出せ。細かいことはお前に一任する」
父が演奏をどう思ったのかは知らない。だが、採用したということは、気に入ったということだろうと、私は解釈した。
「ありがとうございます。行こう、2人とも」
こうして、驚くほどスムーズに奏子は柳宿で雇われることになった。彼女の演者としての腕は確かで、お客での評判も良く、一躍演者たちの顔になったくらいだ。・・・・幸せな時間だったし、彼女にもそう思っていてほしいよ。
だが、きっとこれが間違いだった。私が奏子を連れ帰らなければ、この後の苦しみは、きっと起こらなかったのだから。
出会った日、私は奏子を旅館ではなく直接自宅へ招き、自宅で仕事をしていた律子に彼女を紹介した。
「お帰りなさい。その方は?」
「奏子さんという。外で三味線を弾いていたんだが、驚くほど上手でな。ほら、最近宴会の弾き手が病気で退職しただろう? 新しい人にどうかと思って」
「まあ、それはありがたい話だけど・・・・そんなにお上手なの? 歴史ある旅館だから、随分審査が厳しいでしょう。お義父様がお許しにならないと」
「ああ。だから取り敢えず演奏を聞いてもらおうと思うんだ。律子も一緒にどうだ?」
今思えば強引な提案だった。律子はともかく、当時まだ当主として君臨していた父・清二を呼び出すなど、普通はないことだ。
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