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Case137.進学校に潜む影①
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「ちゃんと伝えたよ。圭介が全てを話せるのが、いつになるかは、分からないけどな」
病院内の人気のいない場所で、大和はそう言って江本兄妹とのやり取りを報告した。電話越しに、相槌を打つ声が聞こえる。
『わざわざ悪かったわね』
アサヒは笑って言った。彼女は「でも」と続ける。
『昔のこととはいえ、私が聞いて良かったのかしら。曖昧なところはあったけれど、かなり重要な話でしょう? 兄のあなたなら、ともかく』
「圭介が良いと言ったからな。少しでも親しい人間に打ち明けることで楽になると思うーーだから、お前にも話したんだ」
『それなら良いけど、心苦しいとは思うわよ?』
今度は大和が笑った。感心しような、意地悪な笑みだった。
「お前も、そんなこと思うのか」
『今度会う時に殴って良いってことかしら?』
直後、2人はけたけたと笑った。昔から変わらぬ冗談めいたやり取りが、仕事続きの体には、よく効いた。
しばらくして、大和が真面目な声を上げる。
「だが、圭介が“秘密”を知ってから、かれこれ12年だ。そろそろ報われて欲しいとは思うが、この点ばかりはな」
『待つしかないわね。まあ、真衣さんが目を覚ましたことは吉兆のように思えるし、江本さんも引っかかることはあるそうだから』
しばらく談笑した後、どちらかともなく電話を切り、大和はゆったりとした足取りで廊下を歩き始めた。
※
九重浩史、早乙女佑月の死去及び、真衣の回復から、約5ヶ月後。
都立俊逸高校に、1人の訪問者が訪れていた。青葉に変わった桜の木を見つめながら、訪問者は視線の先に立っている人物へ歩を進め、やがて足を止めて頭を下げた。
「初めまして、二之宮校長。ご依頼を頂いた、月山神社神職の神道圭介です」
「神道さん。わざわざありがとうございます。私どもも、ほどほど困っておりまして」
圭介は鷹揚に頷きつつ、依頼内容を復唱した。
「伺っています。
まず、生徒・職員の集団食中毒事件。先月のある日、昼食を食べた多数の生徒と職員が腹痛を訴え、救急車を呼ぶ事態に発展した。不思議なことに、生徒・職員とも、お弁当を食べていた人だけに同じ症状があったことから、調査がしても原因が分からなかった。
次に、生徒の連続自殺及び自殺未遂事件。何の前触れもなく屋上や教室の窓から飛び降りたり、カッターナイフ等の刃物で急所を切ろうとする生徒が多数現れた。学年や性別は関係なく、職員に同様のことは起こらなかった。
最後に、職員の連続負傷事件。小さな怪我から始まって徐々に大きな怪我になり、骨折や出血を伴うようになった。こちらも学年や性別は関係なく、また、生徒に同様のことは起こらなかった」
ざっと依頼内容を説明すると、二之宮は重々しく頷いた。圭介は口にしながら、新学期や新学年が始まって1ヶ月程度の間に起きて良いことではないと感じる。
すると、二之宮が気まずそうに口を開いた。
「実は先日、交通事故にあった教員がおりまして。1年生を担当している方で、幸い命に別状はなかったのですが、数日入院をされたんです」
「それは依頼の後ですか?」
「はい。翌日だったかと」
「なるほど。事故に遭われた先生は、もう仕事に復帰を?」
「丈夫な方ですので、一昨日から」
依頼の後に交通事故、ねえ。考えすぎな気もするが、それ以前のことは確かに妙だ。誰かが仕組んだにしては大掛かりすぎるし、遊び感覚で自殺や自殺未遂が起こっているとも思えない。こりゃあ、何かあるな。
何から調べるか迷っていると、再び二之宮が口を開く。
「実は、この学校には、教員が口を揃えて問題児と呼ぶ生徒がおりまして・・・・。仲良くしている生徒も見かけないのです」
「その問題児が一連の事件を引き起こしていると? 申し訳ありませんが、それは流石に無茶ですよ」
俺はすぐさま否定した。そんなことをする危険人物がいるなら、俺より前に父さんが気づいている。無茶だと分かっているだろうに、この校長、呼んでおきながら何言い出してんだ。
「取り敢えず、その生徒に会わせて頂けませんか? どこにいるか、分かります?」
「多分・・・・屋上に」
二之宮の案内のもと、圭介は屋上に行った。扉の鍵は壊されており、中に入ると、屋上に寝そべる1人の少年がいた。
圭介は少年の姿を認めるなり、ここへ来るまでに聞いた名前を呼ぶ。
「蓼沼庄司か?」
「・・・・誰だ? あんた」
寝癖のついた髪と、よく日焼けした肌がよく目立つ少年だった。圭介は愛想笑いを浮かべながら、口を開く。
「高校生だし、タメ口で行かせてもらうぜ。俺は神道圭介。月山神社っていう神社で神職をしている。今日は校長先生に依頼されて、ここ1ヶ月に学校で起こった事件について調べに来たんだ」
「月山神社? 聞いたことある。確か、除霊とか何とか、そんなこともやってるんだってな」
「物知りだな。事件の話は校長先生から聞いたんだが、生徒の目線でも聞きたいんだよ。教えてくれるか?」
不審であることは自覚していたが、蓼沼はそこまで訝しげな視線を投げかけることはなかった。ただ、無愛想な表情を崩さず、つぶやく。
「俺は一連の事件の犯人じゃない」
「別に初めから疑ってるわけじゃねえって。ただ、名前が上がったから会いに来たってだけだ」
そう言いながら圭介は蓼沼に近づき、上半身を起こした彼の前に胡座をかいた。驚く蓼沼だが、圭介は歯を見せて笑い、言葉を続ける。
「俺は警察じゃないから、誰かを罪に問うわけじゃない。ただ話を聞いて、何があったのかを知りたいんだよ。依頼を受けた以上、何かしらの答えを出さなきゃならないしな」
穏やかな態度に絆されたのか、蓼沼は髪を掻きながら、おもむろに口を開いた。
「・・・・3つの事件の話が大きいから隠れちまったけど、本当の始まりは入学式の数日後だ。夜の学校に忍び込んだ生徒が、行方不明になったんだよ」
「行方不明?」
圭介が思わずおうむ返しをした。蓼沼は頷く。
「一種の悪ふざけだよ。友達数人と一緒になって、隠れんぼみたいなことをしたら、そのうちの1人の行方が分からなくなった。幸か不幸か、翌日に校庭の古い倉庫で発見されたから、大事にはならなかったんだ。ただ・・・・妙な話ではあるんだ。
用務員の話だと、倉庫は古くて使われておらず、長年開けてもいなかったらしい。加えて、教師に頼まれて用務員が開けた時、事前に解除された様子がなかった。壁や天井に穴が開いているわけでもなく、地面を掘った形跡もない。暗闇だったから無意識のうちに開けたんだろうって話になったけど、多分違う」
「開くはずのない倉庫に入っていた生徒ーーか。その生徒は、倉庫に入った時のことを話さなかったのか?」
「学校に忍び込んだこと自体、綺麗さっぱり忘れてたんだってよ。家族が医者に診せたけど、異常無しだったらしい」
こりゃあ本格的に怪しいな。嘘をついているにしては話が大きすぎるし、職員がグルになって騙しているわけでもないはずだ。となるとこれは・・・・
その時、学生時代に聞き慣れたチャイムが響いた。昼休みを告げる音である。
「取り敢えず、例の倉庫に案内してくれないか?」
「へいへい」
圭介は二之宮に戻って仕事をして構わないと言い、蓼沼と共に倉庫に向かった。道中、圭介は彼に尋ねる。
「蓼沼は、何で成績良いのに授業出ないんだ?」
「・・・・俺が成績良く見えるかよ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、その言葉の中には驚きが含まれていた。圭介は笑って続ける。
「分かりやすい話し方だったぜ。そもそも、本当に問題児なら真剣に俺の話なんて聞かないだろ。うちの神社のことを知っている人も、あんまりいないしな」
「お見通しってわけか。まあ授業に出ないのは、単に面倒だからだ。聞かなくても、教科書見りゃ分かるし」
皮肉を含んだ笑みに、圭介は「頭がいい奴は言うこと違うなあ」と感心した声を上げた。蓼沼は変わらず表情を和らげなかったが、どこか嬉しそうな目の色をしていた。
「着いたぞ。これが、さっき話した倉庫だ。行方不明の一件依頼、鍵はかかっていない」
圭介は頷きながら扉を開け、半身を中に入れた。何気なく補足を口にするのも、気遣いができる証だと思いながら。
「特に何もないな。壊れた物ばっかりで、本当にただの物置だ。話していた通り穴とかは見当たらねえし、出入りは扉だけ・・・・。妙な話ってのは確かだな」
顔を出しながら言うと、蓼沼は頷きながら口を開く。
「だろ? 事件の後、生徒が面白がって入ったけど何も起こらなかったし、せいぜい変な怪談話が出回ってるくらいだよ」
「振り出しに戻るのか。この事件の後に食中毒だけど、お弁当を食べていた生徒と職員だけってのもなあ」
マジで意味が分からねえんだよな。何かあるとは思うけど、全然正体が掴めない。ただ、放っておくとヤバいのは分かる。
そんなことを考えていた時だった。
「おい、蓼沼! 何してやがる!」
怒鳴り声のした方を見ると、大柄な男がやって来た。ジャージ姿で、古びた竹刀を持っている。時代錯誤な格好だと思いつつ見ていると、蓼沼が舌打ちをした。
「松井佑樹。1年の学年主任で、最近学校帰りに事故った奴」
「ああ、校長が言ってたな」
そんなやり取りの中、松井は大股で2人に近づき、圭介を見るなり眉を顰める。
「ん? 誰だ、あんた。警察には見えねえな」
「神社の神職です。校長先生に依頼されて、ここ1ヶ月の事件を調査しに来ました」
「へえ。そんな話をしていた記憶があるけど、本当に呼んだのか。それっぽくねえな」
初対面で失礼な奴だな。怒鳴って武器持ってりゃ、強く見えると思ってんのか? 隙だらけだぞ?
そんな言葉が口をついて出そうになった瞬間、松井が訳の分からぬことを口にした。
「まあいい。調査をしに来たのなら、蓼沼を懲らしめてくれよ。そいつが、俺を殺そうとしたんだから」
病院内の人気のいない場所で、大和はそう言って江本兄妹とのやり取りを報告した。電話越しに、相槌を打つ声が聞こえる。
『わざわざ悪かったわね』
アサヒは笑って言った。彼女は「でも」と続ける。
『昔のこととはいえ、私が聞いて良かったのかしら。曖昧なところはあったけれど、かなり重要な話でしょう? 兄のあなたなら、ともかく』
「圭介が良いと言ったからな。少しでも親しい人間に打ち明けることで楽になると思うーーだから、お前にも話したんだ」
『それなら良いけど、心苦しいとは思うわよ?』
今度は大和が笑った。感心しような、意地悪な笑みだった。
「お前も、そんなこと思うのか」
『今度会う時に殴って良いってことかしら?』
直後、2人はけたけたと笑った。昔から変わらぬ冗談めいたやり取りが、仕事続きの体には、よく効いた。
しばらくして、大和が真面目な声を上げる。
「だが、圭介が“秘密”を知ってから、かれこれ12年だ。そろそろ報われて欲しいとは思うが、この点ばかりはな」
『待つしかないわね。まあ、真衣さんが目を覚ましたことは吉兆のように思えるし、江本さんも引っかかることはあるそうだから』
しばらく談笑した後、どちらかともなく電話を切り、大和はゆったりとした足取りで廊下を歩き始めた。
※
九重浩史、早乙女佑月の死去及び、真衣の回復から、約5ヶ月後。
都立俊逸高校に、1人の訪問者が訪れていた。青葉に変わった桜の木を見つめながら、訪問者は視線の先に立っている人物へ歩を進め、やがて足を止めて頭を下げた。
「初めまして、二之宮校長。ご依頼を頂いた、月山神社神職の神道圭介です」
「神道さん。わざわざありがとうございます。私どもも、ほどほど困っておりまして」
圭介は鷹揚に頷きつつ、依頼内容を復唱した。
「伺っています。
まず、生徒・職員の集団食中毒事件。先月のある日、昼食を食べた多数の生徒と職員が腹痛を訴え、救急車を呼ぶ事態に発展した。不思議なことに、生徒・職員とも、お弁当を食べていた人だけに同じ症状があったことから、調査がしても原因が分からなかった。
次に、生徒の連続自殺及び自殺未遂事件。何の前触れもなく屋上や教室の窓から飛び降りたり、カッターナイフ等の刃物で急所を切ろうとする生徒が多数現れた。学年や性別は関係なく、職員に同様のことは起こらなかった。
最後に、職員の連続負傷事件。小さな怪我から始まって徐々に大きな怪我になり、骨折や出血を伴うようになった。こちらも学年や性別は関係なく、また、生徒に同様のことは起こらなかった」
ざっと依頼内容を説明すると、二之宮は重々しく頷いた。圭介は口にしながら、新学期や新学年が始まって1ヶ月程度の間に起きて良いことではないと感じる。
すると、二之宮が気まずそうに口を開いた。
「実は先日、交通事故にあった教員がおりまして。1年生を担当している方で、幸い命に別状はなかったのですが、数日入院をされたんです」
「それは依頼の後ですか?」
「はい。翌日だったかと」
「なるほど。事故に遭われた先生は、もう仕事に復帰を?」
「丈夫な方ですので、一昨日から」
依頼の後に交通事故、ねえ。考えすぎな気もするが、それ以前のことは確かに妙だ。誰かが仕組んだにしては大掛かりすぎるし、遊び感覚で自殺や自殺未遂が起こっているとも思えない。こりゃあ、何かあるな。
何から調べるか迷っていると、再び二之宮が口を開く。
「実は、この学校には、教員が口を揃えて問題児と呼ぶ生徒がおりまして・・・・。仲良くしている生徒も見かけないのです」
「その問題児が一連の事件を引き起こしていると? 申し訳ありませんが、それは流石に無茶ですよ」
俺はすぐさま否定した。そんなことをする危険人物がいるなら、俺より前に父さんが気づいている。無茶だと分かっているだろうに、この校長、呼んでおきながら何言い出してんだ。
「取り敢えず、その生徒に会わせて頂けませんか? どこにいるか、分かります?」
「多分・・・・屋上に」
二之宮の案内のもと、圭介は屋上に行った。扉の鍵は壊されており、中に入ると、屋上に寝そべる1人の少年がいた。
圭介は少年の姿を認めるなり、ここへ来るまでに聞いた名前を呼ぶ。
「蓼沼庄司か?」
「・・・・誰だ? あんた」
寝癖のついた髪と、よく日焼けした肌がよく目立つ少年だった。圭介は愛想笑いを浮かべながら、口を開く。
「高校生だし、タメ口で行かせてもらうぜ。俺は神道圭介。月山神社っていう神社で神職をしている。今日は校長先生に依頼されて、ここ1ヶ月に学校で起こった事件について調べに来たんだ」
「月山神社? 聞いたことある。確か、除霊とか何とか、そんなこともやってるんだってな」
「物知りだな。事件の話は校長先生から聞いたんだが、生徒の目線でも聞きたいんだよ。教えてくれるか?」
不審であることは自覚していたが、蓼沼はそこまで訝しげな視線を投げかけることはなかった。ただ、無愛想な表情を崩さず、つぶやく。
「俺は一連の事件の犯人じゃない」
「別に初めから疑ってるわけじゃねえって。ただ、名前が上がったから会いに来たってだけだ」
そう言いながら圭介は蓼沼に近づき、上半身を起こした彼の前に胡座をかいた。驚く蓼沼だが、圭介は歯を見せて笑い、言葉を続ける。
「俺は警察じゃないから、誰かを罪に問うわけじゃない。ただ話を聞いて、何があったのかを知りたいんだよ。依頼を受けた以上、何かしらの答えを出さなきゃならないしな」
穏やかな態度に絆されたのか、蓼沼は髪を掻きながら、おもむろに口を開いた。
「・・・・3つの事件の話が大きいから隠れちまったけど、本当の始まりは入学式の数日後だ。夜の学校に忍び込んだ生徒が、行方不明になったんだよ」
「行方不明?」
圭介が思わずおうむ返しをした。蓼沼は頷く。
「一種の悪ふざけだよ。友達数人と一緒になって、隠れんぼみたいなことをしたら、そのうちの1人の行方が分からなくなった。幸か不幸か、翌日に校庭の古い倉庫で発見されたから、大事にはならなかったんだ。ただ・・・・妙な話ではあるんだ。
用務員の話だと、倉庫は古くて使われておらず、長年開けてもいなかったらしい。加えて、教師に頼まれて用務員が開けた時、事前に解除された様子がなかった。壁や天井に穴が開いているわけでもなく、地面を掘った形跡もない。暗闇だったから無意識のうちに開けたんだろうって話になったけど、多分違う」
「開くはずのない倉庫に入っていた生徒ーーか。その生徒は、倉庫に入った時のことを話さなかったのか?」
「学校に忍び込んだこと自体、綺麗さっぱり忘れてたんだってよ。家族が医者に診せたけど、異常無しだったらしい」
こりゃあ本格的に怪しいな。嘘をついているにしては話が大きすぎるし、職員がグルになって騙しているわけでもないはずだ。となるとこれは・・・・
その時、学生時代に聞き慣れたチャイムが響いた。昼休みを告げる音である。
「取り敢えず、例の倉庫に案内してくれないか?」
「へいへい」
圭介は二之宮に戻って仕事をして構わないと言い、蓼沼と共に倉庫に向かった。道中、圭介は彼に尋ねる。
「蓼沼は、何で成績良いのに授業出ないんだ?」
「・・・・俺が成績良く見えるかよ」
ぶっきらぼうな言い方だったが、その言葉の中には驚きが含まれていた。圭介は笑って続ける。
「分かりやすい話し方だったぜ。そもそも、本当に問題児なら真剣に俺の話なんて聞かないだろ。うちの神社のことを知っている人も、あんまりいないしな」
「お見通しってわけか。まあ授業に出ないのは、単に面倒だからだ。聞かなくても、教科書見りゃ分かるし」
皮肉を含んだ笑みに、圭介は「頭がいい奴は言うこと違うなあ」と感心した声を上げた。蓼沼は変わらず表情を和らげなかったが、どこか嬉しそうな目の色をしていた。
「着いたぞ。これが、さっき話した倉庫だ。行方不明の一件依頼、鍵はかかっていない」
圭介は頷きながら扉を開け、半身を中に入れた。何気なく補足を口にするのも、気遣いができる証だと思いながら。
「特に何もないな。壊れた物ばっかりで、本当にただの物置だ。話していた通り穴とかは見当たらねえし、出入りは扉だけ・・・・。妙な話ってのは確かだな」
顔を出しながら言うと、蓼沼は頷きながら口を開く。
「だろ? 事件の後、生徒が面白がって入ったけど何も起こらなかったし、せいぜい変な怪談話が出回ってるくらいだよ」
「振り出しに戻るのか。この事件の後に食中毒だけど、お弁当を食べていた生徒と職員だけってのもなあ」
マジで意味が分からねえんだよな。何かあるとは思うけど、全然正体が掴めない。ただ、放っておくとヤバいのは分かる。
そんなことを考えていた時だった。
「おい、蓼沼! 何してやがる!」
怒鳴り声のした方を見ると、大柄な男がやって来た。ジャージ姿で、古びた竹刀を持っている。時代錯誤な格好だと思いつつ見ていると、蓼沼が舌打ちをした。
「松井佑樹。1年の学年主任で、最近学校帰りに事故った奴」
「ああ、校長が言ってたな」
そんなやり取りの中、松井は大股で2人に近づき、圭介を見るなり眉を顰める。
「ん? 誰だ、あんた。警察には見えねえな」
「神社の神職です。校長先生に依頼されて、ここ1ヶ月の事件を調査しに来ました」
「へえ。そんな話をしていた記憶があるけど、本当に呼んだのか。それっぽくねえな」
初対面で失礼な奴だな。怒鳴って武器持ってりゃ、強く見えると思ってんのか? 隙だらけだぞ?
そんな言葉が口をついて出そうになった瞬間、松井が訳の分からぬことを口にした。
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