優しく繋がる赤い糸

雪原歌乃

文字の大きさ
7 / 14

Act.4-01

 夏目と萌恵は、途中でスーパーに寄って買い物した。家にはビールが常備されているが、さすがにアルコール初心者にビールは厳しい。まずはカクテルや酎ハイのような甘いものから慣れさせて、徐々にステップアップさせたら良い。夏目はそう考えた。
 とりあえず、萌恵に気になるものを選ばせた。萌恵は少し悩んでいたようだが、無難な線でいった方がいいと思ったのか、夏目の考えていた通り、缶入りの甘いカクテル系を取ってカゴに入れた。
 あとは夏目も、無性ににごり酒が飲みたい気分だったから、それほど大きくない瓶を手に取る。にごり酒は甘めな酒だから、もしかしたら萌恵でも飲めるかもしれない。
 他には悪酔いを防ぐ意味も含めて、適当な惣菜や寿司、アルコール以外の飲み物も買った。
 気付くと、カゴがいっぱいになっていた。会計をすると三千円を超えていたが、それほど痛い出費だとは思わなかった。むしろ、外で飲むことを考えたら、量のわりにはだいぶ安く上がっている。
 萌恵には寿司や惣菜の入った軽い袋を持ってもらい、夏目は酒を含む飲み物の入った袋を両側からぶら下げた。結構な重さを感じ、車で来ていればもう少し楽を出来たかもしれない、などと考えたが、元々は外で飲むつもりだったのだから、車を出さなかったのは仕方がない。

 ◆◇◆◇

 歩くこと十分。ようやく、アパートに辿り着いた。
 夏目の部屋は106号室。一階の角部屋だ。
「ここなんですね」
 興味深げにドアを見つめる萌恵の横で、夏目は荷物を一時的に下ろし、代わりにチノパンのポケットから鍵を取り出した。鍵穴に差し込んでクルリと回すと、カチリと音を立てて解除された。
 中は冷えきっている。歩いてきた分、少しは身体が温まっているものの、それでも寒いのには変わりない。
「入って」
 夏目が萌恵に声をかけると、萌恵は軽く会釈し、ブーツを脱ぎ始めた。もちろん、手にしていた荷物は下ろしている。
「お邪魔します」
 挨拶した萌恵は、夏目のあとに続いて中に入ってくる。
 台所を経由して畳敷き六畳間の居間に着くと、蛍光灯の紐を引っ張って電気を点ける。そして、コタツとファンヒーターの電源を順に入れてゆく。
「あったまるまで時間がかかるけど」
 そう言ってから、萌恵に適当に座るように促す。
 萌恵はコートを脱ぎ、丁寧に畳んで側に置く。だが、さすがにそれが気になった夏目は、すぐにコートを預かり、ハンガーにかけ直した。
「それじゃ、準備するからちょっと座って待ってて」
「いえ、手伝います」
「ダメだよ。君はお客さんなんだから」
「でも、ジッとしてるのは悪いです」
 萌恵は夏目を押し退ける勢いで台所へ戻る。
(ほんとに頑固な子だ……)
 夏目は微苦笑を浮かべながら、萌恵に続いた。
 四畳程度の広さしかな台所は、ふたりが立つと一気に狭くなる。今は買ってきたものを出したり、棚から食器を出したりしている程度だからさほど気にならないが、さすがに料理をするには厳しい。
感想 0

あなたにおすすめの小説

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

密室に二人閉じ込められたら?

水瀬かずか
恋愛
気がつけば会社の倉庫に閉じ込められていました。明日会社に人 が来るまで凍える倉庫で一晩過ごすしかない。一緒にいるのは営業 のエースといわれている強面の先輩。怯える私に「こっちへ来い」 と先輩が声をかけてきて……?

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

もう一度会いたい……【もう一度抱きしめて……】スピンオフ作品

星河琉嘩
恋愛
もう一度抱きしめて……のスピンオフ作品 BLUE ROSEのベースのAKIRAの妹、高幡沙樹と、BLUE ROSEのギター担当のTAKA、三浦崇弘との年の差恋愛。 ※第4章から性描写が軽く入ります。

上手に騙してくださらなかった伯爵様へ

しきど
恋愛
 アイルザート・ルテシオ伯爵は十七歳で家督を継いだ方だ。  文武両道、容姿端麗、人柄も良く領民の誰からも愛される方だった。そんな若き英雄の婚約者に選ばれたメリッサ・オードバーン子爵令嬢は、自身を果報者と信じて疑っていなかった。  彼が屋敷のメイドと関係を持っていると知る事になる、その時までは。  貴族に愛人がいる事など珍しくもない。そんな事は分かっているつもりだった。分かっていてそれでも、許せなかった。  メリッサにとってアイルザートは、本心から愛した人だったから。