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Act.4-01
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夏目と萌恵は、途中でスーパーに寄って買い物した。家にはビールが常備されているが、さすがにアルコール初心者にビールは厳しい。まずはカクテルや酎ハイのような甘いものから慣れさせて、徐々にステップアップさせたら良い。夏目はそう考えた。
とりあえず、萌恵に気になるものを選ばせた。萌恵は少し悩んでいたようだが、無難な線でいった方がいいと思ったのか、夏目の考えていた通り、缶入りの甘いカクテル系を取ってカゴに入れた。
あとは夏目も、無性ににごり酒が飲みたい気分だったから、それほど大きくない瓶を手に取る。にごり酒は甘めな酒だから、もしかしたら萌恵でも飲めるかもしれない。
他には悪酔いを防ぐ意味も含めて、適当な惣菜や寿司、アルコール以外の飲み物も買った。
気付くと、カゴがいっぱいになっていた。会計をすると三千円を超えていたが、それほど痛い出費だとは思わなかった。むしろ、外で飲むことを考えたら、量のわりにはだいぶ安く上がっている。
萌恵には寿司や惣菜の入った軽い袋を持ってもらい、夏目は酒を含む飲み物の入った袋を両側からぶら下げた。結構な重さを感じ、車で来ていればもう少し楽を出来たかもしれない、などと考えたが、元々は外で飲むつもりだったのだから、車を出さなかったのは仕方がない。
◆◇◆◇
歩くこと十分。ようやく、アパートに辿り着いた。
夏目の部屋は106号室。一階の角部屋だ。
「ここなんですね」
興味深げにドアを見つめる萌恵の横で、夏目は荷物を一時的に下ろし、代わりにチノパンのポケットから鍵を取り出した。鍵穴に差し込んでクルリと回すと、カチリと音を立てて解除された。
中は冷えきっている。歩いてきた分、少しは身体が温まっているものの、それでも寒いのには変わりない。
「入って」
夏目が萌恵に声をかけると、萌恵は軽く会釈し、ブーツを脱ぎ始めた。もちろん、手にしていた荷物は下ろしている。
「お邪魔します」
挨拶した萌恵は、夏目のあとに続いて中に入ってくる。
台所を経由して畳敷き六畳間の居間に着くと、蛍光灯の紐を引っ張って電気を点ける。そして、コタツとファンヒーターの電源を順に入れてゆく。
「あったまるまで時間がかかるけど」
そう言ってから、萌恵に適当に座るように促す。
萌恵はコートを脱ぎ、丁寧に畳んで側に置く。だが、さすがにそれが気になった夏目は、すぐにコートを預かり、ハンガーにかけ直した。
「それじゃ、準備するからちょっと座って待ってて」
「いえ、手伝います」
「ダメだよ。君はお客さんなんだから」
「でも、ジッとしてるのは悪いです」
萌恵は夏目を押し退ける勢いで台所へ戻る。
(ほんとに頑固な子だ……)
夏目は微苦笑を浮かべながら、萌恵に続いた。
四畳程度の広さしかな台所は、ふたりが立つと一気に狭くなる。今は買ってきたものを出したり、棚から食器を出したりしている程度だからさほど気にならないが、さすがに料理をするには厳しい。
とりあえず、萌恵に気になるものを選ばせた。萌恵は少し悩んでいたようだが、無難な線でいった方がいいと思ったのか、夏目の考えていた通り、缶入りの甘いカクテル系を取ってカゴに入れた。
あとは夏目も、無性ににごり酒が飲みたい気分だったから、それほど大きくない瓶を手に取る。にごり酒は甘めな酒だから、もしかしたら萌恵でも飲めるかもしれない。
他には悪酔いを防ぐ意味も含めて、適当な惣菜や寿司、アルコール以外の飲み物も買った。
気付くと、カゴがいっぱいになっていた。会計をすると三千円を超えていたが、それほど痛い出費だとは思わなかった。むしろ、外で飲むことを考えたら、量のわりにはだいぶ安く上がっている。
萌恵には寿司や惣菜の入った軽い袋を持ってもらい、夏目は酒を含む飲み物の入った袋を両側からぶら下げた。結構な重さを感じ、車で来ていればもう少し楽を出来たかもしれない、などと考えたが、元々は外で飲むつもりだったのだから、車を出さなかったのは仕方がない。
◆◇◆◇
歩くこと十分。ようやく、アパートに辿り着いた。
夏目の部屋は106号室。一階の角部屋だ。
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興味深げにドアを見つめる萌恵の横で、夏目は荷物を一時的に下ろし、代わりにチノパンのポケットから鍵を取り出した。鍵穴に差し込んでクルリと回すと、カチリと音を立てて解除された。
中は冷えきっている。歩いてきた分、少しは身体が温まっているものの、それでも寒いのには変わりない。
「入って」
夏目が萌恵に声をかけると、萌恵は軽く会釈し、ブーツを脱ぎ始めた。もちろん、手にしていた荷物は下ろしている。
「お邪魔します」
挨拶した萌恵は、夏目のあとに続いて中に入ってくる。
台所を経由して畳敷き六畳間の居間に着くと、蛍光灯の紐を引っ張って電気を点ける。そして、コタツとファンヒーターの電源を順に入れてゆく。
「あったまるまで時間がかかるけど」
そう言ってから、萌恵に適当に座るように促す。
萌恵はコートを脱ぎ、丁寧に畳んで側に置く。だが、さすがにそれが気になった夏目は、すぐにコートを預かり、ハンガーにかけ直した。
「それじゃ、準備するからちょっと座って待ってて」
「いえ、手伝います」
「ダメだよ。君はお客さんなんだから」
「でも、ジッとしてるのは悪いです」
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