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第九章 恣意と煩慮
第六節-02
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「私こそ、ごめんなさい……」
美咲もやっと、冷静さを取り戻した。
「私、絶対南條さんは自分自身のせいにしてしまうだろうな、って分かってたんです……。アサちゃんもきっと……。でも、どうしても伯父さんには逆らえなかった……。無視しようと思えば出来たんです……。だけど……」
『美咲も、自分の意思で本家に行ったと?』
「――はい……」
『そうか……』
南條の声は、いつもの穏やかさを取り戻していた。それに気付き、美咲はホッと胸を撫で下ろした。
「ほんとにごめんなさい……。いつもいつも心配ばっかりかけてしまって……」
『全くな』
そう答える南條は、心なしか笑いを含んでいるようにも思える。
『でも、美咲から電話してきてくれて安心した。――もしかしたら、電話すらさせてもらえないんじゃないかと思ってたから……』
南條の言葉に耳を傾けながら、そんな大袈裟な、と笑えなかった。外界に繋がるものはほぼ全て遮断され、特に南條とは連絡を取ることは無理だと思っていたのだ。南條もきっと、同じことを考えたに違いない。
「南條さんと話せて、良かったです」
美咲が素直に思ったことを告げると、南條もまた、『俺もだ』と返してくれた。
『また、絶対お前を迎えに行く。だから俺を信じろ。二度も油断したが……、次こそは……』
再び、瞼の奥が熱くなってきた。だが、先ほどと違い、今度は嬉しくて涙が溢れ出てきた。
(私は、こんなにも想われてる……)
電話越しにでも、南條の気持ちが聴けたことに幸福感を覚えた。南條は決して嘘を吐かない。必ず、また自分を救ってくれる。そう信じた。
「今日はお仕事ですか?」
あんまりしんみりしてしまったので、話題を変えてみた。
『ああ。今は外回りの最中だった』
「そうだったんですね……。すみません、邪魔してしまって……」
『いや、気にするな。どちらにしても、美咲のことが気になって仕方なかったからな』
「じゃあ、電話して良かったんですね?」
『当然だ。さっきも言っただろ? 美咲から電話してくれて安心した、って』
「そうでしたね」
涙を拭いもせず、美咲は小さく笑った。
『それじゃあ、そろそろ……』
「はい。あまり長電話出来ませんもんね……」
『悪いな……』
「いえ。ちょっとでもお話し出来て嬉しかったです」
『じゃあ……』
「また今度……」
『ああ、絶対な』
「約束、ですからね?」
『分かった』
電話を切ってしまうのが名残惜しい。しかし、未練を断ち切らないといけない。
美咲は唇を強く噛み、思い切って通話を切った。先に切られる方が耐えられなかった。
「南條さん……」
南條の名前を囁き、携帯を握り締めたままで横になる。昨晩、あまり眠れなかったせいか、今頃になって急激に睡魔が襲ってきた。きっと、南條と話して安心したからだろう。
美咲は手に握っていた携帯を胸に押し当て、瞼を閉じる。少しずつ、意識が遠のいていった。
美咲もやっと、冷静さを取り戻した。
「私、絶対南條さんは自分自身のせいにしてしまうだろうな、って分かってたんです……。アサちゃんもきっと……。でも、どうしても伯父さんには逆らえなかった……。無視しようと思えば出来たんです……。だけど……」
『美咲も、自分の意思で本家に行ったと?』
「――はい……」
『そうか……』
南條の声は、いつもの穏やかさを取り戻していた。それに気付き、美咲はホッと胸を撫で下ろした。
「ほんとにごめんなさい……。いつもいつも心配ばっかりかけてしまって……」
『全くな』
そう答える南條は、心なしか笑いを含んでいるようにも思える。
『でも、美咲から電話してきてくれて安心した。――もしかしたら、電話すらさせてもらえないんじゃないかと思ってたから……』
南條の言葉に耳を傾けながら、そんな大袈裟な、と笑えなかった。外界に繋がるものはほぼ全て遮断され、特に南條とは連絡を取ることは無理だと思っていたのだ。南條もきっと、同じことを考えたに違いない。
「南條さんと話せて、良かったです」
美咲が素直に思ったことを告げると、南條もまた、『俺もだ』と返してくれた。
『また、絶対お前を迎えに行く。だから俺を信じろ。二度も油断したが……、次こそは……』
再び、瞼の奥が熱くなってきた。だが、先ほどと違い、今度は嬉しくて涙が溢れ出てきた。
(私は、こんなにも想われてる……)
電話越しにでも、南條の気持ちが聴けたことに幸福感を覚えた。南條は決して嘘を吐かない。必ず、また自分を救ってくれる。そう信じた。
「今日はお仕事ですか?」
あんまりしんみりしてしまったので、話題を変えてみた。
『ああ。今は外回りの最中だった』
「そうだったんですね……。すみません、邪魔してしまって……」
『いや、気にするな。どちらにしても、美咲のことが気になって仕方なかったからな』
「じゃあ、電話して良かったんですね?」
『当然だ。さっきも言っただろ? 美咲から電話してくれて安心した、って』
「そうでしたね」
涙を拭いもせず、美咲は小さく笑った。
『それじゃあ、そろそろ……』
「はい。あまり長電話出来ませんもんね……」
『悪いな……』
「いえ。ちょっとでもお話し出来て嬉しかったです」
『じゃあ……』
「また今度……」
『ああ、絶対な』
「約束、ですからね?」
『分かった』
電話を切ってしまうのが名残惜しい。しかし、未練を断ち切らないといけない。
美咲は唇を強く噛み、思い切って通話を切った。先に切られる方が耐えられなかった。
「南條さん……」
南條の名前を囁き、携帯を握り締めたままで横になる。昨晩、あまり眠れなかったせいか、今頃になって急激に睡魔が襲ってきた。きっと、南條と話して安心したからだろう。
美咲は手に握っていた携帯を胸に押し当て、瞼を閉じる。少しずつ、意識が遠のいていった。
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