BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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無様な犬は己を律しつつ淫らな褒美を長く享受する

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色とりどりのゴムボールが浮かべられた水槽を覗き込みながら、犬達が表情をもどかしげに歪めつつ休み無く目を凝らし続けている。
水槽内の水を掻き混ぜる水流に乗って動くボール達を目で追いながら、四肢を折り畳んだ状態に維持させる黒色をした拘束の衣服に首から下を覆われた無様な男達が自身を犬と称して飼い慣らす憎き男の意図に沿った行動を取り続けている。
それは壁に複数設置されている巨大なモニターに表示された物と同じボールを水槽から探し出し、手を使わずに指定の場所へと運ぶという惨め極まりない行動。自由と抵抗を封じられた裸体にあてがわれた淫らな無慈悲と結果が連動しているが故に、拒絶することすらも許されない屈辱的な行動だ。

「はっ、はぁ……んくっ」
「う、ふぁ、んうぅ」

モニターに表示されている指定のボールは一つでは無い。いずれか一つさえ運べれば、悪趣味な仕打ちが訪れることは無い。
そう自らに言い聞かせて悔しさを紛らわせながら、犬に変えられた男達がボールを探し続ける。色は同じでも、描かれている模様が違う。そんなボールが目の前を横切る度に焦りを膨らませながら、水槽を囲んだ男達はすぐ近くにいる仲間と会話を交わす余裕も失った口から苦しげに乱れた呼吸と唾液を溢れさせつつ、自分を救うボールを見つけ出そうとする。
必死で滑稽、そして愉快その物な探索は数十秒に渡って続き、水槽を囲んでいた一頭の犬は驚きに目を見開きつつ迷い無く顔面を水槽の中に接近させると、自らの動きで遠ざけてしまわないよう細心の注意を払いつつ口にくわえたボールを、犬としての自分に与えられた名が刻まれている壁際の装置へと運搬し始めた。

「んっ、んぶっ、あぶぅっ」

首から下を縛める黒の衣服をぎちぎちと軋ませながら、発見の安堵を滲ませた唸りをボールの隙間から零している男が肘と膝で肉体を支える四つん這いでの歩行しか出来ないようにされた身体を壁へと移動させていく。
頭部に装着された黒い犬の耳の飾りと隷属の証である黒革の首輪から吊るされた名前入りのプレート、そして悪趣味な衣服の内側に突き出た男根型の淫具と一体化している犬の尻尾の飾りを情けなく揺らめかせながら、男が水槽の周りに仲間を残して自身に割り当てられた装置へと進んでいく。
そのこれ以上無く間抜けな歩行の果てにようやく装置に辿り着いた犬は、受け皿となっている透明な部分にくわえていたボールを置きほんの数秒で終わった鑑定の賜物である褒美の至福にみっともなくよがり狂い始めた。

「あひっ! んひっ、ひゃひぃぃぃーっ!!」

今朝摂取させられた何時もよりも強力な効果を有する媚薬が混ぜられた食事で火照りに火照らされていた肉体が、行動を制限する衣服に仕込まれていた淫猥な器具達によって甘く幸せに嬲られていく。自力で快楽を得ることを非道な罰を提示しつつ禁じられていた肉体が、乳首と男根の周辺をまんべんなく振動させる器具が引き寄せる快楽に溺れる。気が狂うような生殺しに苛まれていた肉体が、憎き存在によって開発された尻穴を掻き毟る偽の男根が生成する悦楽に甘く追い詰められていく。
だが、男は簡単には絶頂しない。自らの努力で手に入れた愉悦を、男は己に忍耐を課しながら貪っている。
一度イったら、この快感はとまってしまう。そしたら、またボールを見つけ出さなければ快感を味わえない。ならば、可能な限りに我慢し至福を長続きさせるのが賢明な判断だ。
ただ、もっと長く気持ち良くなっていたいというシンプルな願望に理性的な理由を付けながら、次のボール捜索に向けて水槽の元へと戻る選択肢ではなく渇きに渇いた肉体を少しでも潤すことを目的とした絶頂のお預けの選択肢を優先した男は、ボールを探しながらも羨ましげに自分を横目で眺めている仲間達と別室から自分達の苦悶を堪能している非道な存在の前で射精欲を何度も何度も押し殺し、これ以上無い快楽の幸福とこれ以上無い生殺しの地獄で今までの自分を蝕み、人間を捨てた淫乱な犬という破滅の末路への到着を自らの意思で早めていくのだった。
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