BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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青年は欲した薬を投与されもがき苦しむ

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「うぅっ、う! んぐっ、むぐうぅぅぅっ!!」

パーティー会場を抜け、ホテルの部屋にいったん戻った私を出迎えたのは、くぐもった唸り声とベッドが大きく軋む音だった。
どうにかして逃れられないかと、もしくは助けが来ないかと考え、私が戻るまでの間ずっと必死になって暴れ塞がれた口で叫んでいたのだろう。しかし、それはやはり何の意味も無かったらしい。
部屋に戻った私の目に入った光景は、衣服を剥かれた裸体に汗を滲ませている事以外は戻る前と全く変わらない状態で身動きを封じられた無様な青年スパイの姿だった。

「ふぅっ! むぐぅぅぅ……っ!」

戻って来た私に気付いたスパイは、硬く丸めた布を詰め込まれそれを吐き出せないよう別の布を歯を割って噛まされ、更にその上から鼻を口を覆う形で白い布を巻き付けるという三重の猿轡を施された口で悔しげに唸り、自分を拘束した私に向かって鋭い目を向けてきた。
ベッドに仰向けで寝かされたままどこにも移動出来ないよう、両手首と足首に巻き付けられた黒革の枷と頑丈な鎖で、裸体を大の字に引き延ばした体勢で固定されているというのに、だ。

無抵抗の状態で、加えて裸体を無防備にさらけ出した状態で睨み付けられても、迫力なんて欠片も無い。もしかしたら、睨み付ける事で屈辱を紛らわせているのかも知れないが、どちらにしても私にとって愉快な反応である事には変わりない。
青年スパイが折れる事を拒めば拒む程、強気さを保てば保つ程、私の愉しい時間が延びる。屈服させる悦びを長く味わえる。

「捕まったってのに、随分と元気だねぇ、スパイ君。でも、これを使われてもその元気さを保てるかな?」

私は自分でも分かるくらいに意地悪な口調でスパイの反抗心を煽り、満面の笑みを睨むスパイに向けながら左手でスパイの右腕を押さえ、右手に持っていた物を、スパイ君が手に入れようとしていた薬を、注射器で投与した。

「ん……!? むふ、ふぶぅぅ……っ!?」

自分の右腕に刺さっている針を猿轡ごしでもよく分かる驚愕の表情で見つめ、恐怖に震え出す青年スパイ。そんな青年スパイに私は堪らない興奮を抱きながら、絶望を再認識させる為に注射器の中身を説明する。

「ほら、スパイ君はこの薬が欲しかったんだろう? 特別に投与してあげるよ。存分に、効果を堪能すると良い」
「ふぶっ! ぶぐ、ぶむっ、むぉ、おむぅぅぅ……っ!」

私が説明する間に薬は効き始め、スパイは目を剥いて苦悶の鳴き声を発し出す。拘束された裸体がガクガクとベッドの上で跳ね、乳首と、男根が硬くふくらんでいく。
肉奴隷を躾ける為に開発した媚薬を奪おうとしていたスパイは今、自らにその媚薬を投与されて裸体を無理矢理に発情へと追いやられ、あっという間に硬く張り詰めた男根を揺らしながらもがき苦しんでいる。
その惨めな様子をもっと眺めていたいと思ったが、そういう訳にもいかない。私は後ろ髪を引かれながらもスパイから離れ、スパイの反応を愉しむ為の言葉を口にして部屋を後にする。

「それじゃあ、私はパーティーに戻るよ。後二時間くらいはかかるから、それまで一人で、薬を愉しんでなさい」
「むぐぅぅぅーっ!? うっ、うぅぅぅぅーっ!!」

部屋を去ろうとする私に、スパイがなりふり構わず哀願の唸りを発する。だが、それを聞いても私は足をとめずに進み、部屋を出て扉を閉じた。
オートロックが掛かる音が鳴り、厚い扉の向こうからかすかにスパイの悲鳴が響く。
戻って来た時、その悲鳴がどれだけ悲痛さを増しているか。気が狂いそうな程に疼く身体を慰めたくても慰められない地獄に置かれたスパイが、どれだけ正気を失っているか。
それらの変化を愉しみにしつつ私は扉の前を離れ、パーティー会場へと足を動かしていった。
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