BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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緩慢な往復は逃れられぬ男を爛れた本能に溺れさせる

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十数秒を掛けて、やっと一往復。そんな緩慢な速度で、機構が駆動を繰り返している。
地下室の床に設置された箱型の装置が自身から真横へと伸びた金属製の棒をゆったりとしたペースで前後に動かし、その金属の棒の先端に取り付けられている偽物の男根を何度も何度も往復させ続けている。
そんな悪趣味な往復に無防備な尻穴を捉えられた男は、じわじわと蓄積する望まぬ快楽に甘い苦悶を味わわされることしか出来ない。
背後に存在する装置と同じように地下室の床へと直接接続されている跳び箱のような形状をした台に裸体をうつ伏せで寝転がらされた無様な男は、腸内をもどかしく苛む雌の快感を否定する思考を膨らむ一方の欲望にすり潰されるしか無い。
台の側面に位置する黒革製のベルト達を用いて四肢を厳重に拘束され、意に染まぬ悦びを誤魔化す力を持つ視覚情報を黒革製の目隠しによって遮断された惨めな男は、床に触れることすら叶わない手足を情けなく宙でバタバタともがかせ、口を喉近くまで満たしている男根を模した枷によって正常な発音だけでなく大声で鳴き喚いて欲望を散らす選択肢も没収された事実に絶望と恐怖の唸りをか細く零しながら、決して絶頂には辿り着けない生殺しの悦楽に心と身体を堕落させられるだけの存在でしか無いのだ。

「も、ごおぉ……! う、ぶふうぅ……!!」

自分が意味も無く拘束と戦う音と、自分が紡ぐ誰にも届かないくぐもった助けての叫び。そして幾ら欲しても激しい掘削を一切恵んでくれない偽の男根を動かす機構の起動音のみが響いている部屋で、壊れかけの男がひたすらに救いを請う。
目隠しの下から頬へと涙を伝わせ、台の端から睾丸共々下品にぶら下げているかのような状態を取らされた男根から透明な淫蜜を壊れた蛇口のように細長くとめどなく滴らせながら、男が自分をこの足りない快楽の地獄に放置した男に対して懇願の感情を際限無く増幅させていく。
その実に愉快な苦悶の様を気配を悟られぬよう無言を貫きつつ満喫しながら、残酷な男は自分の帰還に気付くことも出来なくなる程に己の欲望で追い詰められた男の陥落を嘲笑いつつ、まだ思考にしぶとくこびり付いている理性が雌の至福に直結した肛虐をねだる爛れた本能に置き換わる時を、悠然とした勝利の態度で待ち続けていた。
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