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8話
畏友
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「とにかく、急いで咲弥を中へ――!」
まだ呆気に取られてる俺の脇から彼女が咲弥を支えに入り、寺の中へと促した。
両脇から亮介とこの女性が咲弥の躰を支えて俺の先を急いでる。
俺は・・・何でここに居るのか分からない。何だか他人事のように感じながら三人の後ろを無意識に付いて行ってた。
また、ここに来るなんて・・・思ってもなかった。
本堂の奥へ進んで長い渡り廊下を通って行くと、六畳くらいの客間?っていうのかな?その部屋に俺たちは入って行く。そこには、すでにあのじいさんが落ち着いた笑顔で待ってた。
「医者の不養生とは、この事かのぉ・・・・。」
って、冗談染みて言うじいさんの表情が何だかほっこりする。
「すみません・・・また、御迷惑を・・・・」
痛みに耐えながら申し訳なさ気に咲弥が瞼を伏せている。
亮介と姉さんがゆっくりと疵付いた咲弥の躰を畳へ座らせた。
直ぐに咲弥の手当てが始まった――。
咲弥の横に添うようにして膝を付いた姉さんが、間髪入れずに裂けたシャツを脱がせると血で汚れた背中を濡れたタオルで拭いている。その手捌きの慣れたこと。見た目、そんなことできる風な女性にはみえないけど。(って言ったらまた姉さんから怒鳴られるだろうな。)意外だった。思ってた感じの女性と違って・・・何か、カッコいいじゃん。
血まみれの背中を濡れたタオルで洗い・・・・を何度か繰り返すうちに、洗い桶の水が真っ赤に染まってた。これは現実なんだ。こんな流血事件?映画か何かのワンシーンじゃなくて、眼の前で人が疵付いてる。生身の人間のこんな状態、本人の前に俺が失神しそう。
露になった背中は、服の上からだとそうは見えないけど、意外にがっしりとした広い背中なんだ・・・何か、こう・・・惹き付けられた。
「思ったほど疵は深くないようじゃ、安心なされ。」
じいさんの穏やかなその一言でみんな胸を撫で下ろした。
とりあえず、咲弥の状態を聞いて安心したのか、亮介は静かに立ち上がって、
「菊千代、後を頼む。・・・保、ちょっと・・・・」
って言いながら付いて来るように手招きする。「後でちゃんと話す」って言ってたから。そのことに嘘はないだろう。大体の予測はしてたから、俺も亮介の後に付いて部屋を出た。
さっきまで降っていた雨もいつの間にか止んでる。
また遠くで雷鳴が響いていた――
雨上がり、少しは暑さも和らいだ夏の涼味――。
亮介と俺はさっきの渡り廊下を歩いて寺の境内にいた。
「・・・俺を、恨んでるか――?」
背を向けたままで亮介が――美緑がそう訊ねる。
「亮介・・・お前で良かったよ・・・。」
雨で洗われた空を見上げながら俺はそう応えてた。
何も語らなくても、判っている――。
それが、永遠の同志だったのだから・・・・。
少し雲間が見えて、また星が輝き出していた。
まだ呆気に取られてる俺の脇から彼女が咲弥を支えに入り、寺の中へと促した。
両脇から亮介とこの女性が咲弥の躰を支えて俺の先を急いでる。
俺は・・・何でここに居るのか分からない。何だか他人事のように感じながら三人の後ろを無意識に付いて行ってた。
また、ここに来るなんて・・・思ってもなかった。
本堂の奥へ進んで長い渡り廊下を通って行くと、六畳くらいの客間?っていうのかな?その部屋に俺たちは入って行く。そこには、すでにあのじいさんが落ち着いた笑顔で待ってた。
「医者の不養生とは、この事かのぉ・・・・。」
って、冗談染みて言うじいさんの表情が何だかほっこりする。
「すみません・・・また、御迷惑を・・・・」
痛みに耐えながら申し訳なさ気に咲弥が瞼を伏せている。
亮介と姉さんがゆっくりと疵付いた咲弥の躰を畳へ座らせた。
直ぐに咲弥の手当てが始まった――。
咲弥の横に添うようにして膝を付いた姉さんが、間髪入れずに裂けたシャツを脱がせると血で汚れた背中を濡れたタオルで拭いている。その手捌きの慣れたこと。見た目、そんなことできる風な女性にはみえないけど。(って言ったらまた姉さんから怒鳴られるだろうな。)意外だった。思ってた感じの女性と違って・・・何か、カッコいいじゃん。
血まみれの背中を濡れたタオルで洗い・・・・を何度か繰り返すうちに、洗い桶の水が真っ赤に染まってた。これは現実なんだ。こんな流血事件?映画か何かのワンシーンじゃなくて、眼の前で人が疵付いてる。生身の人間のこんな状態、本人の前に俺が失神しそう。
露になった背中は、服の上からだとそうは見えないけど、意外にがっしりとした広い背中なんだ・・・何か、こう・・・惹き付けられた。
「思ったほど疵は深くないようじゃ、安心なされ。」
じいさんの穏やかなその一言でみんな胸を撫で下ろした。
とりあえず、咲弥の状態を聞いて安心したのか、亮介は静かに立ち上がって、
「菊千代、後を頼む。・・・保、ちょっと・・・・」
って言いながら付いて来るように手招きする。「後でちゃんと話す」って言ってたから。そのことに嘘はないだろう。大体の予測はしてたから、俺も亮介の後に付いて部屋を出た。
さっきまで降っていた雨もいつの間にか止んでる。
また遠くで雷鳴が響いていた――
雨上がり、少しは暑さも和らいだ夏の涼味――。
亮介と俺はさっきの渡り廊下を歩いて寺の境内にいた。
「・・・俺を、恨んでるか――?」
背を向けたままで亮介が――美緑がそう訊ねる。
「亮介・・・お前で良かったよ・・・。」
雨で洗われた空を見上げながら俺はそう応えてた。
何も語らなくても、判っている――。
それが、永遠の同志だったのだから・・・・。
少し雲間が見えて、また星が輝き出していた。
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