蜩の軀

田神 ナ子

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8話

憧れは夢じゃねぇ。夢は叶えるためにあるもんだ!

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 夏の虫たちが雨上がりの草むらの中で一斉に啼き競っている。
その声がやけに耳に響いてた。
 
 一遍に色々んなことが起き過ぎて、頭ん中が無になってた。だからってかな、余計、気持ちは冷静だった。さっきから俺と亮介は本堂の縁側に座って何も話さないままこの夜に耳を傾けてた。
 静かだからこそこっちへ来る足音が響いた。
俺と亮介がその方向に視線を送ると、疵の手当てが終わったのかな?姉さんの声が届いた。
 「思ったより疵も深くないから心配いらない。でも、そのまま帰るって言うんだ・・・・も一緒にって・・・・。」
その後の経過を聞いて俺も亮介も一先ず安心はした。
 (オレを護るって言ってた奴が・・・バカやろ―だ・・・・)
安心感と妙な緊張感が解けて俺はちょっとだけ笑った。
 「・・・俺も一緒に?・・・・分かった。で、亮介と姉さんはどうすんの?」
 「その、姉さんての、やめてくれない?私らも帰らなきゃね。うかうかしてたら、大事なものも護ってやれなくなるしね。それに・・・・」
 話の途中、今度は奥の座敷からじいさんがやって来た。
相変わらずおっとりとした顔だな。
話の続きに入る。
 「直臣、あんたを襲った奴ら・・・あいつらの裏には地蜘蛛衆が動いてる。たぶん、金を使ってあんたを襲うように利用したんだ・・・・。その名の通り、地に巣を這わせるように、どんな手段を使ってでも狙ってくる奴らだ。絶対に奴らの思うようにはさせない!」
そう言う姉さんの眸が力強い。
 「あんたは知らなかっただろうけど、安藤グループは奴ら地蜘蛛衆の一手・・・次にどんな卑怯な手を使ってくるか判らない。だから私たちも備えとかなきゃいけない。」
 「安藤グループってのは、和弘兄さんの・・・・。」
状況が次第に合致していくのに、俺は鳥肌が立った。
 (あいつら・・・和弘兄さんを利用して・・・・・?)
そう思うと腹の底から悔しさが込み上げてきた。

 「・・・・やはり、そうでしたか・・・・。」
この声。驚いて振り返ったら、もうそこには疵の手当てを済ませて新しいシャツに着替えていた咲弥が居た。
 「お前!動いて大丈夫なの?」
 「はい、すみませんでした・・・・御迷惑をお掛けしてしまって・・・・。」
って、咲弥はちょっと苦笑いしてた。
 「心配されるな、直臣殿。この者たちの治癒力、普通の人間と違うのでな。半日もすれば完治しましょう。」
そうじいさんが教えてくれた。
 「・・・あの時――病院の方に安藤グループの関係者の方が来られました。一人はやはり・・・保さんの・・・・・。」
これで話の筋が見えてきた。
次に奴らは何を仕掛けてくるだろう・・・・・。

 僅かな沈黙が流れた――
それぞれが、それぞれの思いを胸に抱えて。
 「・・・・行くか――。美緑はあたしが送って行くよ。咲弥、直臣を頼んだよ!」
姉さんの言葉に咲弥が頷く。

 それから、姉さんは軽くじいさんに頭を下げて駆けてった。

 寺の裏手から、たぶんだろうって思う、低いエンジン音が聞こえた気がした。
 「―――・・・?!」
俺には分かる。このエンジン音!
 (バイク・・・だ!!)

 数分後――
戻ってきた姉さんの姿に俺は驚いたのと、すごくワクワクした気持ちになった。
そう、眼の前に憧れのバイク《ZZR400 kawasaki》が・・・!!
軽い身のこなしで姉さんがもう一つのヘルメットを亮介に投げ渡した。
 「すっ、すげぇ!それ・・・姉さんの・・・・?!」
 「だもんなぁ。お前、バイク買うためにバイトして金貯めてんだよなっ!」
亮介がヘルメットを被りながらバイクの後ろに跨って皮肉に笑ってる。
 俺の夢――なんだ。
大型バイクの免許取って、貯めたお金でバイクを買うこと!
その為に何でも頑張ってこられた。
人間、どんな小さなことでもいい。目標を持つことが大事なんだ。
は、夢じゃない。夢は叶えるためにあるもの!そう強く思えた。
 「保、咲弥を頼んだ!こいつ無茶ばっかしやがんだ・・・・。今は無理しねぇように見張っててくれな!」
ヘルメットの奥で、亮介が笑ってる。

 二人を乗せたバイクは流れるように走り出して行った。
段々と遠くなるバイク音に耳を傾けながら、
「・・・・俺たちも、行くか。」
そう言ってた。
 何て長い夜だろう・・・・
自分の運命を報された。
これから――俺はどう生きていくんだろう・・・・
この命は・・・・
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