15 / 67
忍びの境編
エピソード2 美緑
しおりを挟む
城中が騒いでいた――。
「曲者を捕らえたぞ―っ!」
城内にその声が響き渡り、地響きのような足音を轟かせて家臣たちが一斉に城の中庭に駆け集まる。
その中央には、両腕を二人の家臣に取り押さえられ頭を垂れて跪いている者の姿があった。その姿、生きているのだろうか・・・・?ピクリとも動かない。
「何をそんなに騒いでおる・・・・」
この騒ぎの中、慌てることもなく奥の間からゆっくりとその姿を現す。
家臣一同がその姿を前に腰を落とし控え伏した。
「清正殿、曲者を捕らえました!」
清正――そう呼ばれたのはこの城の城主、本条 清正だった。
清正は家臣の言葉に動じることもなく、眼の前に跪いている者へ視線をやった。
「おい!清正殿の手前、面を上げよっ!」
家臣の一人が腕を強く引き上げてその頭を上げようとする。
「まぁ、待て、お前たち・・・その手を離さぬか。そこに居るのは犬ではなかろうぞ・・・立派な人の子じゃ。すまなかったな・・・その方、名を何という?」
ゆっくりと縁側から中庭へ降りてきて、清正は穏やかな笑みを浮かべて問うた。
「・・・へっ、俺の名前ねぇ・・・そんなの疾の昔に忘れたな・・・・。」
そう応えながら垂れていた頭を擡げると、清正を睨み据えて口許に不信な笑みを湛えていた。
「貴様っ!清正殿に向こうて、無礼な!」
曲者と呼ばれたその者の言葉に家臣たちが逆上する。
「・・・はっ、はっ、は・・・名を忘れたか――!面白いことを言う奴ぞ!」
一瞬、辺りが静まり返った。
この状況の中、清正の大きな笑い声に周りの者たちは唖然とするしかなかった。
「・・・そうか・・・其方、どうして城へ来た?」
また懲りずに清正は問う。その面持ちには、まるで穢れを知らない子どものような笑顔が浮かんでいた。
「・・・どうしてかって?・・・あんたを、殺しに来た。」
清正の笑い声に負けじと更に力を込めて清正を睨み据えニヤリと笑う。
――ザザザ・・・・・ッ
その言葉に家臣たちが一斉に曲者の周囲を取り囲み、今にも刀を抜かんと険悪な面持ちで身構えている。
「・・・はははっ・・・!そうか、その方、気に入ったぞ!」
――この男・・・・
何故にそうやって笑っていられる?
自分の命を狙われているというのに?
たかが名もない下人だと馬鹿にしているだけなのか?
「・・・その眼を見れば判る――。その深い翡翠の眸・・・・そうだ、お前の名は今日から美緑だ。この五月の美しい緑によう似合うておるぞ!」
声高らかにそう告げると、清正は満面の笑みで迎えたのだった。
「美緑よ、其方は私の弟のようだ。本当の弟ができたようで嬉しいぞ!」
――これが本条 清正との出逢い・・・・・。
「曲者を捕らえたぞ―っ!」
城内にその声が響き渡り、地響きのような足音を轟かせて家臣たちが一斉に城の中庭に駆け集まる。
その中央には、両腕を二人の家臣に取り押さえられ頭を垂れて跪いている者の姿があった。その姿、生きているのだろうか・・・・?ピクリとも動かない。
「何をそんなに騒いでおる・・・・」
この騒ぎの中、慌てることもなく奥の間からゆっくりとその姿を現す。
家臣一同がその姿を前に腰を落とし控え伏した。
「清正殿、曲者を捕らえました!」
清正――そう呼ばれたのはこの城の城主、本条 清正だった。
清正は家臣の言葉に動じることもなく、眼の前に跪いている者へ視線をやった。
「おい!清正殿の手前、面を上げよっ!」
家臣の一人が腕を強く引き上げてその頭を上げようとする。
「まぁ、待て、お前たち・・・その手を離さぬか。そこに居るのは犬ではなかろうぞ・・・立派な人の子じゃ。すまなかったな・・・その方、名を何という?」
ゆっくりと縁側から中庭へ降りてきて、清正は穏やかな笑みを浮かべて問うた。
「・・・へっ、俺の名前ねぇ・・・そんなの疾の昔に忘れたな・・・・。」
そう応えながら垂れていた頭を擡げると、清正を睨み据えて口許に不信な笑みを湛えていた。
「貴様っ!清正殿に向こうて、無礼な!」
曲者と呼ばれたその者の言葉に家臣たちが逆上する。
「・・・はっ、はっ、は・・・名を忘れたか――!面白いことを言う奴ぞ!」
一瞬、辺りが静まり返った。
この状況の中、清正の大きな笑い声に周りの者たちは唖然とするしかなかった。
「・・・そうか・・・其方、どうして城へ来た?」
また懲りずに清正は問う。その面持ちには、まるで穢れを知らない子どものような笑顔が浮かんでいた。
「・・・どうしてかって?・・・あんたを、殺しに来た。」
清正の笑い声に負けじと更に力を込めて清正を睨み据えニヤリと笑う。
――ザザザ・・・・・ッ
その言葉に家臣たちが一斉に曲者の周囲を取り囲み、今にも刀を抜かんと険悪な面持ちで身構えている。
「・・・はははっ・・・!そうか、その方、気に入ったぞ!」
――この男・・・・
何故にそうやって笑っていられる?
自分の命を狙われているというのに?
たかが名もない下人だと馬鹿にしているだけなのか?
「・・・その眼を見れば判る――。その深い翡翠の眸・・・・そうだ、お前の名は今日から美緑だ。この五月の美しい緑によう似合うておるぞ!」
声高らかにそう告げると、清正は満面の笑みで迎えたのだった。
「美緑よ、其方は私の弟のようだ。本当の弟ができたようで嬉しいぞ!」
――これが本条 清正との出逢い・・・・・。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる