蜩の軀

田神 ナ子

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14話

浄化 ★

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 「・・・・で?今は、何を・・・・?」

カラン―――・・・
氷の涼やかな音が響いた。

テーブルに片肘を付いて眼の前のアイスコーヒーをストローで回しながらそう問う。

 「今は・・・地元の大学に通っています。の両親は地元で旅館を経営しているのですが、元々、孤児だった私を引き取ってくれ、私を育ててくれた恩人です。恩返しと言ってはおこがましいのですが・・・大学の方が休みの時は、その旅館の手伝いをさせてもらっています」

 「それで・・・」と笑っては付け加える。

 「宣伝のつもりではないですが、張らせてください。うちの旅館は、いい所ですよ。海もきれいだし・・・いつか、お出でになって下さい」

 「・・・・菊千代様は――?」と、続けて訊ねる。

 「・・・そうか。・・・私は、今は・・・お前と同じようなものだな。大学院生やってるよ。・・・そうだね――旅行好きだし、いつか時間作って行くよ」

そう言うは微かに笑う。

 とあるファミレスで待ち合わせをしていた。
大学の友達の誘いも断って・・・。
少し、心苦しい気持ちもありながら、の知れた人物に懐かしさも感じた。

 「彌景みかげ――・・・お前も変わりないようで、良かったよ」
 「菊千代様の方も・・・・・」

二人はそう言い合って笑う。

 「・・・・・咲弥あいつの連絡先――・・・」

カーキ色のヘルシーバックバッグの中から、ペンとメモ紙を取り出して携帯番号を書くと、それを指先で差し出しながら、

 「ま、連絡取ってみて。咲弥あいつも仕事、忙しいみたいだからねぇ・・・・」

差し出されたメモ紙を受け取り、その番号に目線をやる。

 「ありがとうございます。様子を見て、連絡してみます」

 「うん」という風に、彼女は首を軽く動かして、アイスコーヒーを一口含んだ。

 「あ・・・送ってくよ。バイクだけど・・・?」

彼女の言葉に礼儀を示して、が応える。

 「ありがとうございます。大丈夫です・・・車、ありますので」

と、笑う。
それから、テーブルに置かれた伝票をさり気なく手に取ると席を立った。

 「彌景・・・・」

呼ばれて振り返る。茶色の髪が少しだけ揺れた。

 「あんまり、出過ぎたマネは・・・するんじゃないよ」

ちょっと上目遣いの彼女は苦笑いする。

 「・・・それは・・・警告ですか、それとも忠告ですか?」

彼女の苦笑いに応えるかのように、ふわりと笑って店を後にした。



 連絡を取ってはいたが、時間が作れたのもやっとだった。

 「急に押しかけてしまって・・・・」
 「・・・いや・・・私の方こそ、なかなか時間が取れなくて・・・すまない」

テーブルを挟んで向かい側に座る咲弥がすまなそうに少し笑っている。
テーブルには淹れたてのコーヒーカップが二つ置いてあった。

そんな咲弥の様子をずっと見つめていたが立ち上がり、ゆっくりと服を脱ぎ始めた。
全裸になって咲弥の眼の前に立つ彼が言う。

 「咲弥様――・・・背中の疵、ずっと痛むのでは・・・・?」
 「・・・お前には、隠し事はできないな・・・・」

ふっ・・・っと息を吐いて、

 「・・・・おいで・・・」

白く細い躰を呼ぶ。

ソファに座っている咲弥の片方の太腿に跨る。もう既にその陰茎は勢いよく起ち上っていた。
 
 「・・・はぁ・・・咲弥様・・・・ずっと待っておりました・・・・」

吐息交じりにそう言いながら陰部を擦りつける。
自分の太腿の上で前後に動く細い腰を両手で掴むと、ぐっと抑え込んでその太腿を強く突き上げる。

 「あっ・・・はぁぁ・・・っ!」

強く突き上げられる刺激にしなやかに躰を反らせた。その動きに合わせて茶色のさらりとした髪が揺れる。
その細いわりに骨格のしっかりとした躰を、咲弥は軽々と持ち上げてソファに座らせる。それから、両手で彼の両膝を開くと、ぐっと押し上げた。
ソファの上で彼の躰がくの字になる。
そこには、はち切れんばかりに細部まで血管が浮き上がった陰茎が、早く、と待っている。

 「・・・・彌景・・・・・」

咲弥の舌先がしっかりと立ち上がった陰茎それを上下になぞると、ふるふると彼の躰が震え始める。

 「咲・・・弥様っ・・・いい・・・・っ・・・!」
 「・・・もう少し・・・解そう・・・・」

湿った舌がその陰茎に絡みつくように下部へ下りていくと、更に唾液を含ませた舌で薄紅の裂肛を解す。
途端に、彼の全身が強く痙攣のように震え上がった。

 「あ・・・っんん・・・っ!」
 「もう少し・・・と思ったのに・・・もうダメ・・・か?・・・彌景――」
 「・・・はい・・・咲・・・弥さまぁ・・・しばらくぶり・・・です・・・ので・・・っ」

悶える彼がそう息を吐きながら笑う。

 「それなら・・・・・」と、

一気に咲弥の唇が先端に吸い付いた。

 「はっ・・・・あぁぁ・・・・んん・・・っ!」

くぅ・・・っと、咲弥の唇が彼の陰茎ものを吸い込んでいく。
その濡れた口内で自分のモノを強く上下に吸われて、

 「あぁぁ・・・っんっ!咲・・・弥さま・・・っ!いっぱい・・・呑ん・・・で・・・っ!!」

自分の股間の中で上下する咲弥の頭部を両手に感じながら、彼は放出した―――


 ソファに背凭れる咲弥の腕の中にまだ火照る躰を預けながら、

 「咲弥様――・・・どうか、無理はされないで・・・いつでもお呼び下さい」

その為に、このわたしは居るのですから。
こうして、貴方様の傍に居られるのなら。

彼はそっと笑った。


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