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106】偶然、街中で見かけた

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106】偶然、街中で見かけた

 「アラン様、見回りお疲れ様です!」

「アラン様!」

「おはようございます、アラン様」

アラン。私の名前だ。今日も自身の生まれた国は穏やかで平和。人々も同じく。大きな問題も無く過ごしているように見える。
個人的には、色々なことがあったが、私は騎士団長。悩み一つで生活に支障が出てしまえば、この国を守ることは出来ない。気持ちを切り替え、騎士団長としての職務を務めていた。

正直、今の私にはそうすることで悩みを考える余裕を無くようにしている。このような方法をとるとは柄にもない方法を取っていると思うが、考える余裕を無くすのが一番良い。だが、仕事のし過ぎで疲労が溜まり。身体が悲鳴を上げれば、夜には一瞬で気を失ったように眠る日々。

(だが、毎日こうしているも良くないな)

頭では分かっているが、悩みの種────レオ殿とどうやって話せば良いかと解決策が未だに見つからないでいる。今では以前ように城へ訪れる頻度も上がっていて、王様も喜んでいた。私としても、レオ殿の姿を遠目ながら確認できるのは嬉しい。……声をかけられないのは、少しばかり寂しいが。

「アラン様?」

「すまない、ちょっと考え事をしてしまっていた」

賑やかな街中を、自身の騎士団員たちと見回っている最中。日もまだ高い昼時だというのに、ぼんやりと気をやっていた。眠気に落とされたような状態ではないが、ただぼんやりと僅かな時間ながらしてしまった。
「アラン様。言いづらいですが、最近あまり顔色が良くないですよ」

「そうですよ。それに、痩せましたよね?」

「そうか……? 気のせいだろう」

嘘だ。確かに、ここ最近ズボンにゆとりがあれば、鏡で見た自身の顔回りが細くなったように感じていた。

「熱がある様子ではないですが、明らかに働き過ぎなのでは?」

「そうか? だが、私が勝手に働いているだけだからなぁ」

誤魔化すように笑ってみれば、団員たちからの追撃は終わらない。

「アラン様、俺たち心配してるんですよ」

「……分かっている。気遣い有難う。体調が悪いわけじゃないんだが、こう……食欲がなくてな」

「ただでさえ細いんですから、ちゃんと食べて下さい!」

「ははっ……分かった。出来るだけ食べるようにするから、怒らないでくれ」

助けてくれと別の団員によれば、笑いながらも「俺も同じ気持ちですよ。アラン様、無理しないで下さい」とくぎを刺されてしまった。

「あ~あ。こんな時、賢者様がいてくれたら、俺たち以上にビシッとアラン様に言ってくれるのになぁ」

「そういえばアラン様。賢者様と最近ご一緒じゃないんですね」

「あー……そうだな」

その一言に、またどこか遠くを見てしまった。

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