【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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30】俺ばっかり意識してる

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30】俺ばっかり意識してる

 一週ぶりに、俺は海野食堂へとやって来た。扉を開ければ、先に出たお客さんと入れ替わるように、俺が室内で一人の客となる。つまり、海野さんと二人きり。少しくらいお客さんがいてくれた方が心の準備が出来たのに……!
最初、俺に気づいていなかった水野さんが「いらっしゃいませ……」と言いつつ、顔を動かし。

「あ! 水野さん!」

久しぶり~! と嬉しそうな顔と、語尾が大きくなる声色で俺の名前を呼んだ。変わらず緊張しているのは、俺だけ。つまり、意識しているのも俺だけ。

「コンバンハ」

海野さんとは違い、カタコトになった俺。(ほら、やっぱり意識してる)
だがそんな俺の横を通り過ぎ、海野さんが一度店の外へ。戻って来たかと思えば、握られていたのは看板等で。

「え? 海野さん何してるの?」

「今日は、早めに店じまいにした」

(何で??)

これまた嬉しそうに店じまいというから、驚いた。

「いや、俺もいるし。俺もお客さんだけど?」

「うん。残りお弁当も3つあるから、その中から水野さん選んでもらうことになるね」

確かに、残り3つ。種類の違う弁当が並んでいる。

「いいの? お店しめて」

「いいの。俺が店長だから」

何というパワーワード。そんな言葉、俺も言ってみたい。

「何だか俺だけ悪いよ」

「水野さんは気にしなくて良いんだよ。弁当も残り少ないし。水野さんが1つなら、俺が2つ食べれば問題なしだし」

「そういうもん?」

「そういうもん」

拍子抜けしつつ、「どうぞ」と海野さんが戻って来て俺の前に弁当を並べる。どれも美味しそうで、残っているのは「ハンバーグ」「からあげ」「肉じゃが」だった。

(全部美味しそうだな)

「残念ながら、またロコモコ丼は売り切れちゃったけど」

「ロコモコ丼、メニューに加えたんだ」

「うーん、作ったり作らなかったり。その日の材料と気分」

「気分?」

「そ。水野さんが来るかなって思ったり、俺が食べて貰いたいなって時だけ作ったりしてるの」

「ふ、フーン」

(俺が来るかなって思ったり、俺に食べさせたいなって思った時だけ?)

ドキドキドキ。

止めろ、意識するな。きっとアレだ。俺がロコモコ丼好きだって言ったから、友達ボーナスでちょっと優遇してくれているだけだ。

(何で俺の心臓、ドキドキしてるんだよ)

生きているからドキドキするのは当たり前だと思ったが、そのドキドキとは違う。何だか息苦しいし、走ってもないのに走ったあとみたいにドキドキする。また喉がヒュッとして、言葉が上手く出てこない。

(落ち着け、落ち着くんだ俺)

『意識しすぎ』『水野君も、実はその人のこと好きなんじゃないの?』

頭の中で、田中さんが現れて俺に言った。

(本当、俺ばっかり意識してますね!)

******
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