【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華

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31】俺ばっかり意識してる②

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31】俺ばっかり意識してる②

 ああ、本当に俺ばかり意識してる。

店長権限で、俺が来るなり早く店じまいをした海野さんと店の中に二人きり。え? と思う俺に、「そういうもん」と変わらない口調で話す海野さん。幸い、弁当は残り3つあり、俺が好きなのを選んで良いので晩御飯を食いっぱぐれることは無さそうだ。

だが! だが!! だ!!!(この展開、何回目だよ)

ロコモコ丼を材料の状況は分かる。それに加えて、俺のためみたいに作ってくれてたり、今だってこうして早く店じまいするし。

ドキドキドキ。

俺の心臓が急に煩く、速くなる。静かに深呼吸をして、何とか平静を装う俺。

「水野さん?」

どうしたの? と小首を傾げる海野さん。カウンターの所にある椅子に座って、普段は俺より高い身長が、俺の顔を覗きこんだ。

(うぅ゛~~! か、顔が良い゛っ……!)

これまた何回目だ。心の中の俺が、頭を抱えながら、身体を反らす。うわぁ~! と叫びたくなるが、何とか耐えた。一周回って、海野さんはイケメンじゃないと言いながら、どうしたら自分の顔が一層良く見えるか分かっているんじゃないかと思う。それくらい、俺にとってイケメンに。魅力的に見える表情や角度で俺を見てきた。(イケメンの無駄遣い過ぎる)

(って! 今日来た目的を忘れているぞ!)

グリンッ! と心の中で反った身体を戻す。海野さんに言うぞ! と気合を入れつつ、一旦「ちょっとタンマ」と海野さんにストップをかけた。

「今日の水野さん、面白いね」

ハハッと笑う顔すらイケメンだ。ドキドキと違う、僅かにキュンとしたのは気のせい。そもそもだ、どうして俺がこんなに誰のせいだと思っているんだ。

(全部、海野さんのせいなのに)

僅かに唇と尖らせて、俺はようやく口を開いた。

「海野さんが」

「うん? 俺がどうしたの」

「海野さんが、俺の事口説いてるんじゃないかって思って……それで……」

それで決まづくて来れなかった。

最後は尻蕾で、声が小さくなってしまった。だが、目の前にいるんだ。きっと聞こえていると信じたい。

「……」

「……」

ようやく言えたと思ったのに、海野さんも黙って急に静かになる室内。俺は言ったんだ、頼む、何か返事をしてくれ。

『あははっ! 水野さん、そんな風に思ってたの?』とか、なんとか言って、笑ってこの妙な空気を消し去ってくれ。そう思ったのに。

「あの、海野さん?」

本当に何か言ってくれ。俺の方を見たまま黙ったままの海野さんに、返事を促した。

******
次か、その次くらいで多分終わります。
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