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8】知らなかったこと
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8】知らなかったこと
(ああ、どうして今日に限って、先生はこんな話を私にするのか)
普段ならば、あまり思ったりしないような気持ちが私も人間なので沸いてしまった。幼少より知っている知れた間からの先生。今でも内勤の文官として働いてくれている臣下が、珍しく私に助けを求めるように言った。
「アーサー様。聞いていますか?」
「ああ、勿論。聞いているとも」
「でしたら……っ! でしたら是非、ギルベルト殿へ一度でも良いので見合いを受けることを勧めて下さい……!」
「あ……あはは」
これだ。最初こそ、いつも通りの世間話だった。町の様子や、王室の様子。それから貿易関係の話とか。そうしていると、「実は」と先生が言った。
「アーサー様。実はギルベルト殿がモテるのはご存知で?」
「勿論。ギルベルトがモテているのは、今に始まったことじゃないだろう? いつからだっけ? 私よりも早く社交界デビューをした時から、この国の令嬢たちだけじゃない。隣国の令嬢たちまで、一目で目を奪われたと聞いているよ」
昔はギルベルトの事を呼び捨てにしていた先生が、大人になったギルベルトをギルベルト殿と呼んでいる。それから、国の政策に関わる者として、ちゃんと大人として接していて不思議な感じがする。
「まぁ……そうですね。ギルベルト殿は、端正な顔立ちでしたし。更にはアルファなので、注目の的でしたね。ただ今のようにアルファのフェロモン調整が不慣れだったので、大変でしたよ」
「大変?」
「今はそんなことありませんが、まだ不慣れな時期だったのでしょうね。無意識にアルファのフェロモンが出てしまうんです。なので、普段より強めの抑制剤を飲んだりしていたので、体調管理が大変だったと思いますよ」
「え……?」
「おっと。知りませんでしたか?」
「ああ、うん。知らなかった」
「ギルベルト殿も、臣下なのでアーサー様へ心配させたくなかったのでしょう」
「……」
ギルベルトの見合いの話だけかと思ったのに。私が知らなかったアルファとしての一面を知って、内心驚いてしまった。今まで体調が悪そうなギルベルトを見たことがない。随分昔に熱を出したくらいで、互いにそれぞれ勉学や鍛錬を始めた頃から体調を崩した姿を見たことが無かった。
(私に隠していたのか……?)
「まぁ、アルファは希少ですし個人差があると聞きます。とりわけ、ギルベルト殿はアルファとしてのフェロモンが強い様子でしたから。アーサー様は、同じアルファですが、そういったことはないでしょう?」
「そうだね」
「それよりもです! このように、昔からモテているギルベルト殿に、見合いが厳しくてもどなたかとダンスの一曲でも踊って頂いたいのですが……私のところに、随分とギルベルト殿は? と頼み込むことが多くて断るのも一苦労なのです。なので、一度でも良いのでアーサー様からもギルベルト殿に恋愛に興味を持つように言ってくれませんか?」
「あー……うん……あはは……先生も大変だねぇ」
チクリとする胸を押さえたくなったが、私は濁すように曖昧に笑うことしか出来なかった。
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(ああ、どうして今日に限って、先生はこんな話を私にするのか)
普段ならば、あまり思ったりしないような気持ちが私も人間なので沸いてしまった。幼少より知っている知れた間からの先生。今でも内勤の文官として働いてくれている臣下が、珍しく私に助けを求めるように言った。
「アーサー様。聞いていますか?」
「ああ、勿論。聞いているとも」
「でしたら……っ! でしたら是非、ギルベルト殿へ一度でも良いので見合いを受けることを勧めて下さい……!」
「あ……あはは」
これだ。最初こそ、いつも通りの世間話だった。町の様子や、王室の様子。それから貿易関係の話とか。そうしていると、「実は」と先生が言った。
「アーサー様。実はギルベルト殿がモテるのはご存知で?」
「勿論。ギルベルトがモテているのは、今に始まったことじゃないだろう? いつからだっけ? 私よりも早く社交界デビューをした時から、この国の令嬢たちだけじゃない。隣国の令嬢たちまで、一目で目を奪われたと聞いているよ」
昔はギルベルトの事を呼び捨てにしていた先生が、大人になったギルベルトをギルベルト殿と呼んでいる。それから、国の政策に関わる者として、ちゃんと大人として接していて不思議な感じがする。
「まぁ……そうですね。ギルベルト殿は、端正な顔立ちでしたし。更にはアルファなので、注目の的でしたね。ただ今のようにアルファのフェロモン調整が不慣れだったので、大変でしたよ」
「大変?」
「今はそんなことありませんが、まだ不慣れな時期だったのでしょうね。無意識にアルファのフェロモンが出てしまうんです。なので、普段より強めの抑制剤を飲んだりしていたので、体調管理が大変だったと思いますよ」
「え……?」
「おっと。知りませんでしたか?」
「ああ、うん。知らなかった」
「ギルベルト殿も、臣下なのでアーサー様へ心配させたくなかったのでしょう」
「……」
ギルベルトの見合いの話だけかと思ったのに。私が知らなかったアルファとしての一面を知って、内心驚いてしまった。今まで体調が悪そうなギルベルトを見たことがない。随分昔に熱を出したくらいで、互いにそれぞれ勉学や鍛錬を始めた頃から体調を崩した姿を見たことが無かった。
(私に隠していたのか……?)
「まぁ、アルファは希少ですし個人差があると聞きます。とりわけ、ギルベルト殿はアルファとしてのフェロモンが強い様子でしたから。アーサー様は、同じアルファですが、そういったことはないでしょう?」
「そうだね」
「それよりもです! このように、昔からモテているギルベルト殿に、見合いが厳しくてもどなたかとダンスの一曲でも踊って頂いたいのですが……私のところに、随分とギルベルト殿は? と頼み込むことが多くて断るのも一苦労なのです。なので、一度でも良いのでアーサー様からもギルベルト殿に恋愛に興味を持つように言ってくれませんか?」
「あー……うん……あはは……先生も大変だねぇ」
チクリとする胸を押さえたくなったが、私は濁すように曖昧に笑うことしか出来なかった。
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