【完結・BL】アルファの王子は幼馴染アルファの騎士と番になりたい【騎士×王子】

彩華

文字の大きさ
18 / 24

16】一曲、踊って頂けますか

しおりを挟む
16】一曲、踊って頂けますか

 早くこの会場から出るつもりだったのに。
気づけば、ダンスの時間だというように部屋に響く音楽が変わってしまった。中央のホール部分には、人が集まりだし踊り始めている人もいる。だが私もギルベルトも、女性陣に囲まれたまま。それどころか、誰とダンスを踊るのかと女性同士でピリリとした空気を肌で感じる。いうなれば、女の戦い。誰か一人と踊ろうものなら、時間が許す限り続々と続いてしまいそう雰囲気と、もともと踊る気の無い気持ちで気が滅入った。それこそ、心の中でギルベルトに助けを求めるほどに。

「アーサー様」
「アーサー様、私と」

変わらず名前を呼ばれ続けている。申し訳ないが、全く踊る気になれない。誰か城の者が、私を呼びに来てくれたら良いのに。

「皆さん、とても魅力的なので、とても難しく……」

「なら一人と言わず、交代で踊って下されば良いのですわ!」

「そうですね。いかがですか? アーサー様」

名案を思い立ったとばかりに、弾む声がする。ああ困った。どう言ってこの場を納めよう。その時だ。グイッ、と肩を掴まれ私に向けられていた視線が一斉に私から逸れた。

「失礼。我が王子は、皆さまご存知の通り、アルファですので。我々アルファのフェロモンが、皆さまの体調に影響を及ぼすことを危惧し、何かあっては大変だとアーサー王子は考えているのです。そうでしょう? アーサー王子」

「あ、ああ。そうだね」

「ギルベルト様!」

きゃぁ! とまた黄色い声が上がった。あの人だかりを抜け、私の所に来てくれたのだ。すぐにギルベルトの後ろから「ギルベルト様!」とギルベルト狙いであろう女性陣達がやって来て、ダンスどころではない。チラリと横目でギルベルトの顔を見れば、変わらずまだ余所行きの顔だった。

「それに、アーサー王子も言っておりましたが、このように美しい方々の中から選ぶというのは、大変難しい問題なので」

そのまま私の手を引いて、ギルベルトがホールの方へと向かっていく。

「ギルベルト様。どちらへ!?」

「皆様、お許し下さい。アーサー王子は、私が攫っていきます」

「え……!?」

その答えだと言うように、周囲に人がいないホールでギルベルトが私の手を取って、お辞儀した。灯りに照らされ。キラキラと光る衣装のせいなのか。私の視界に映ったギルベルトは、いつも以上にキラキラと映る。それに、胸がドキドキする。

ドキドキドキ。

私はお姫様じゃないのに。こんなことされれば、また都合よく勘違いしてしまうし、嬉しくなってしまう。

(ああ、本当にズルイ。いつだって、私ばかりがギルベルトのことが好きで。悩んでいるのに、どうしても諦められない。墓場まで持って行く気持ちが大きくなっていくばかりじゃないか)

「王子。俺と一曲、躍って頂けますか?」

*********
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者様への片思いを拗らせていた僕は勇者様から溺愛される

八朔バニラ
BL
蓮とリアムは共に孤児院育ちの幼馴染。 蓮とリアムは切磋琢磨しながら成長し、リアムは村の勇者として祭り上げられた。 リアムは勇者として村に入ってくる魔物退治をしていたが、だんだんと疲れが見えてきた。 ある日、蓮は何者かに誘拐されてしまい…… スパダリ勇者×ツンデレ陰陽師(忘却の術熟練者)

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

貧乏子爵のオメガ令息は、王子妃候補になりたくない

こたま
BL
山あいの田舎で、子爵とは名ばかりの殆ど農家な仲良し一家で育ったラリー。男オメガで貧乏子爵。このまま実家で生きていくつもりであったが。王から未婚の貴族オメガにはすべからく王子妃候補の選定のため王宮に集うようお達しが出た。行きたくないしお金も無い。辞退するよう手紙を書いたのに、近くに遠征している騎士団が帰る時、迎えに行って一緒に連れていくと連絡があった。断れないの?高貴なお嬢様にイジメられない?不安だらけのラリーを迎えに来たのは美丈夫な騎士のニールだった。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話

須宮りんこ
BL
【あらすじ】 高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。 二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。 そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。 青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。 けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――? ※本編完結済み。後日談連載中。

いい加減観念して結婚してください

彩根梨愛
BL
平凡なオメガが成り行きで決まった婚約解消予定のアルファに結婚を迫られる話 元々ショートショートでしたが、続編を書きましたので短編になりました。 2025/05/05時点でBL18位ありがとうございます。 作者自身驚いていますが、お楽しみ頂き光栄です。

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

処理中です...