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14】ずっと好きな人がいるらしい

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14】ずっと好きな人がいるらしい

 やっと会えた! と喜ぶように。興奮気味に、ゆりちゃんが一週間ぶりにやって来た久保君の傍に駆け寄って言った。

「あの! 先輩は彼女いますか!」

思いのほか大きな声に、斎藤先生も僕の傍にやってきて「あら~」と言っている。斎藤先生が言う通り、今ゆりちゃんのお母さんがまだお迎えに来てなくて良かったと思う。

「ん? 彼女?」

「そう! あのね。ゆり、先輩が好きだから! だから、あの……彼女に……なりたいなって……」

ゆりちゃんの告白は、どこか昔の久保君の告白した光景に似ていた。


「…………そっか」

久保君の表情は、優しかった。それからゆっくりと、眉が八の字になっていく。困ったなぁと顔に書いていて、適当に流すのか一体どうするんだろう? と思ったが、視線をゆりちゃんに合わせて返事をした。

「俺を好きになってくれて有難う。嬉しいよ。でも俺、好きな人がいるんだ。だから、ゆりちゃんの気持ちに答えてあげることは出来ない。ごめんな……? でもゆりちゃん可愛いからさ、俺以上に良い男がこの先絶対現れるよ」

久保君の告白に似ていても、返事は違っていた。
嘘でも良いとも言わなければ、適当にあしらうこともしない。傷つけないように言葉を選んで。それでいて、真剣にゆりちゃんの告白を受けている久保君。その事は、ゆりちゃんにも伝わっているらしい。ゆりちゃんの顔が、だんだんと下がっていって聞こえる声は小さくなっていく。

「……ゆりに好きなって貰えて嬉しい?」

「ああ、勿論」

「でも先輩は、別に好きな人がいるの?」

「うん。そうだよ。俺ね、その人のこと、ずっと好きなんだ」

「ずっと?」

「ずっと」

「そうなんだ……ゆりみたいに、好きって言った?」

「うーん……、どうだろうな。俺もね、振り向いてもらえるように頑張ってるんだ」

「恰好良い先輩でもダメなの!?」

ションボリしていたゆりちゃんだったが、久保君でも頑張っていると聞いて表情を変えた。どうして!? と食い気味な様子。失恋の悲しさは、もう忘れてしまったんだろう。(それが良いけど)

「恰好良いかは、さておき……そうなの。俺もね、片思いしてるの」

「ゆり、応援する! 先輩が好きな人に好きだよって言って貰えるようにね、応援するからね!」

「ありがと」

「だから先輩、諦めちゃだめだよ?」

「うん」

「あらあらあら~。水野先生、何だかキュンキュンしちゃいますね? 久保君ってば、ゆりちゃんのことも、ちゃんと一人の女の子として接してくれて……はぁ~、久保君がずっと好きな人って誰かしら? 水野先生、知ってます?」

キャー! と僕の肩を叩く斎藤先生に「ははっ……誰なんでしょうね?」と知らないフリをした僕だった。


(多分。いや、多分じゃないけど。それ僕です、なんて言えるわけないだろう?)

*******
短く終わるかな? と思います(多分)
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