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19】予定のない週末③

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19】予定のない週末③

予定が無かったはずの週末に、一つイベントが発生してしまう事態になっている今。昔の教え子であり、今では立派な青少年へと成長を遂げている俗にいうイケメンが年相応と言うべきか。幾分照れながら僕に言った。

「先生、そのっ……先生が良ければで良いんですけど。断って貰って良いんですけど」

「うん?」

「良かったら、この後。俺とデートしませんか?」

「うん??」

(え??? デート????)

デートって、アレだよね? こう、好意を抱いている人と一緒に過ごすっていう……うん? ちょっとした混乱が僕を襲い、目の前にいる久保君に返事をしたものの数分の沈黙。僕が黙っていることに、不安がったのか久保君が「やっぱり駄目ですよね?」と視線を床に移した。

「いきなりデートとか嫌ですよね? すみません。先生の都合も考えずに。ちょっと映画でも一緒に見れたらなって程度だったんですが……」

「あ、待って! 久保君」

また気を遣わせてしまっただとか、僕だけが自意識過剰だったとか。それよりも、久保君の残念そうな表情に弱い僕は、踵を返そうとしていた久保君の手を取った。

「先生?」

「あ……、えと……そのっ……」

気付けば僕よりも身長の伸びていた久保君の、キョトンとした視線と眼が合った。何か言わなくちゃ。どうしよう? デートしよう! とは言えない。でも、このまま久保君を一人にするのも悪い。そうだ! お茶だ! お茶なら大丈夫だろう。

「久保君が良かったら、お茶でも……」

グゥゥゥゥッ~~~~ッ。

「あ……///」

「……」

これまたどうしてと言いたい。
思いの外大きな空腹を知らせる音が、僕から聞こえ。お茶では足りないだろうなと、また気を遣ってくれた久保君が笑うことなく。残念そうな表情の消えた久保君がテキパキと言った。

「先生はハンバーガーと、ドーナツ。どっちが食べたいですか?」

僕が朝に食べたいと思ったものの二択だ。ちょっと久保君ってば、僕の心が読めるの? と子供のようなことを思ってしまったが、大人の僕が頭の中で「そんなことないでしょ」と切り捨てる。それよりも、二択の答えだ。ハンバーガーとドーナツ。どちらも食べたいけれど、コンディション的に選べるのは一つだけ。

「……ドーナツ」

「分かりました。じゃあ、ドーナツ食べに行きましょう」

「うん」

30を過ぎた身体に、急な油物は無理があるとドーナツを所望した僕だった。

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