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2】そうと決まれば
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2】そうと決まれば
私、魔王・サタン。
年は300歳くらいから数えるのを止めた。だが、まだまだ元気! そして若い! 止まらない結婚ムーブと、自身が密かに憧れるものが合致した時。私は閃いたとばかりに、広い部屋の真ん中で大きな声で叫んだ。
「……恋愛結婚じゃ!!」
「はぁ……?」
何ですと? と首を傾げる長年連れ添う臣下に、もう一度言った。
「聞けい、リリス! 私は、見合い結婚ではなく恋愛結婚をするぞ!」
バァァァン! と効果音が付いてきそうな勢い。
そう────お膳立てられ、気をつかうような見合い結婚などしたくない。私がしたいのは、恋愛だ。それこそ、胸を躍らせるような。あの、「人間界」で見るマンガやアニメのような色恋。ドキドキと本当に胸は高鳴るのか? 気になって仕方がない恋愛。
お見合いも良いだろうが、私は自分から進んで恋愛がしたい。
だが、私の考えと臣下は違ったようで。
「恋愛! 良いではないですが。では早速、恋愛結婚をすると通知を出しましょうか?恋人募集しますとか、なんとか」
きっと沢山集まりますよ? と言葉を続ける臣下に、「それは見合いじゃろうが」と制止するように手を前に出し。先ほどの恋愛結婚宣言に言葉を付け足した。
「不要じゃ。私は……私は、人間界で恋愛をする!」
「は……はいいいいいいい!?!!?」
普段であれば落ち着いた臣下であるリリスが、思わず声を裏返らせた。だが私は気にしない。
「そうと決まれば、さっそく転送魔法じゃ。なーに、今どうやら人間界で異世界転生が人気らしいし、私が逆に行ったところで驚く者もおらんじゃろうて」
私、結構人間界に詳しいし。なんならよく自分の部屋の鏡で人間界を見ているし。
「ま、待って下さい! 魔王様、あの、に、人間界に行かれるのですか?」
「だから言っておるじゃろう? リリス、私は人間界に行くぞ」
「そのっ……つまり、恋愛の対象は魔族ではなく、相手は人間で?」
「当たり前じゃろ。何でわざわざ人間界へ出向いて、動物らと恋愛するんじゃ。人間界には魔族なんておらんからな……ん? もしかしておるのか? まぁ良い。私はとりあえず人間界に行くからな」
「魔王様!」
玉座から飛び降りてやってきた部屋の中央へ。目を閉じて静かに呪文を唱える。知識と魔力だけは、十分にある。たまには魔王らしいこともせねば、魔王の肩書が泣いてしまう。
「呼応せよ。サタンの声に、呼応せよ」
ブワッ……! と大きな円陣と共に風が吹いた。それから円陣が光り出し、中央から目的の人間界へと繋がっていくのが分かる。
「…………転生の扉よ、人間界との扉を開け……!」
その言葉と共に、ブォン……! と光が固定された。これで転移の準備は万端。
「じゃあリリス。行ってく……グエッ!」
そう言えば、背後からガバッ! と勢いよく抱き着かれ。思わず空気を壊すような声が漏れてしまった。背中に当たるボリュームのある肉厚感に、言わずもがな。部屋にもう一人しかいない自身の臣下だと分かる。
「待って下さい! 私もお供いたします! 魔王様一人でなんて、心配で心配で……!」
「おぬし。だから私は子供じゃないと……まぁ良い。行くぞ! リリス!」
「はい! 魔王様に寄りつく変な虫は、私が追い払ってやります!」
「いや、追い払ったらいかんじゃろ」
最後は冷静に思いながら、だんだんと光が強く、大きくなり。私たちは光に包まれながら人間界へと向かったのだった。
*********
タイトル変更・ノマカプから百合に変わるかもしれません
雰囲気緩い百合みたいな
私、魔王・サタン。
年は300歳くらいから数えるのを止めた。だが、まだまだ元気! そして若い! 止まらない結婚ムーブと、自身が密かに憧れるものが合致した時。私は閃いたとばかりに、広い部屋の真ん中で大きな声で叫んだ。
「……恋愛結婚じゃ!!」
「はぁ……?」
何ですと? と首を傾げる長年連れ添う臣下に、もう一度言った。
「聞けい、リリス! 私は、見合い結婚ではなく恋愛結婚をするぞ!」
バァァァン! と効果音が付いてきそうな勢い。
そう────お膳立てられ、気をつかうような見合い結婚などしたくない。私がしたいのは、恋愛だ。それこそ、胸を躍らせるような。あの、「人間界」で見るマンガやアニメのような色恋。ドキドキと本当に胸は高鳴るのか? 気になって仕方がない恋愛。
お見合いも良いだろうが、私は自分から進んで恋愛がしたい。
だが、私の考えと臣下は違ったようで。
「恋愛! 良いではないですが。では早速、恋愛結婚をすると通知を出しましょうか?恋人募集しますとか、なんとか」
きっと沢山集まりますよ? と言葉を続ける臣下に、「それは見合いじゃろうが」と制止するように手を前に出し。先ほどの恋愛結婚宣言に言葉を付け足した。
「不要じゃ。私は……私は、人間界で恋愛をする!」
「は……はいいいいいいい!?!!?」
普段であれば落ち着いた臣下であるリリスが、思わず声を裏返らせた。だが私は気にしない。
「そうと決まれば、さっそく転送魔法じゃ。なーに、今どうやら人間界で異世界転生が人気らしいし、私が逆に行ったところで驚く者もおらんじゃろうて」
私、結構人間界に詳しいし。なんならよく自分の部屋の鏡で人間界を見ているし。
「ま、待って下さい! 魔王様、あの、に、人間界に行かれるのですか?」
「だから言っておるじゃろう? リリス、私は人間界に行くぞ」
「そのっ……つまり、恋愛の対象は魔族ではなく、相手は人間で?」
「当たり前じゃろ。何でわざわざ人間界へ出向いて、動物らと恋愛するんじゃ。人間界には魔族なんておらんからな……ん? もしかしておるのか? まぁ良い。私はとりあえず人間界に行くからな」
「魔王様!」
玉座から飛び降りてやってきた部屋の中央へ。目を閉じて静かに呪文を唱える。知識と魔力だけは、十分にある。たまには魔王らしいこともせねば、魔王の肩書が泣いてしまう。
「呼応せよ。サタンの声に、呼応せよ」
ブワッ……! と大きな円陣と共に風が吹いた。それから円陣が光り出し、中央から目的の人間界へと繋がっていくのが分かる。
「…………転生の扉よ、人間界との扉を開け……!」
その言葉と共に、ブォン……! と光が固定された。これで転移の準備は万端。
「じゃあリリス。行ってく……グエッ!」
そう言えば、背後からガバッ! と勢いよく抱き着かれ。思わず空気を壊すような声が漏れてしまった。背中に当たるボリュームのある肉厚感に、言わずもがな。部屋にもう一人しかいない自身の臣下だと分かる。
「待って下さい! 私もお供いたします! 魔王様一人でなんて、心配で心配で……!」
「おぬし。だから私は子供じゃないと……まぁ良い。行くぞ! リリス!」
「はい! 魔王様に寄りつく変な虫は、私が追い払ってやります!」
「いや、追い払ったらいかんじゃろ」
最後は冷静に思いながら、だんだんと光が強く、大きくなり。私たちは光に包まれながら人間界へと向かったのだった。
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タイトル変更・ノマカプから百合に変わるかもしれません
雰囲気緩い百合みたいな
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