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53.反省-1
しおりを挟むやってしまったーー
ビアは、城で自室としてあてがわれた部屋で、ベッドに顔を埋めさせながら一人静かに反省していた。理由はただ一つ。昨日、再会したテオドアに、半ば八つ当たりのような逆ギレを起こしてそのまま帰ってきてしまったことだ。
久しぶりにテオドアに会えて嬉しかったはずなのに、五体満足で動く彼の姿を見てほっとしたはずなのに、その気持ちは一周回って怒りにかたちを変えていた。
その上、あのさも何事もなかったかのような彼の態度だ。テオドアなりの優しさや気遣いであることは重々承知の上で、それがビアの怒りにさらなる拍車をかけた。
ここ数日のビアの気持ちを、あの男は軽んじ過ぎだ。
(……とはいえ、実際私がノイマン副隊長だったとしても、おんなじことするだろうなあ……)
テオドアは彼が城に運ばれてきた時の姿を、ビアが目撃していることを知らない。だったら、わざわざ不要な心配を招く事実など、言わぬほうが良いと考えるのが普通だろう。実際彼が軽んじたのは彼自身の身体であって、その事実になぜかビアが、勝手に裏切られた気持ちになっているだけなのだ。つまりは単なる八つ当たりだ。だから今、こんなに自己嫌悪に陥っている。
(結局昨日は、自分が泣いてるのに気づいた途端、なんだか恥ずかしくなって逃げるように帰っちゃったのよね――)
あの時のテオドアの凍りついた表情が忘れられない。可愛いブラックシェパードは、あのあと困ったようにひたすらオロオロととまどっていた。逃げるように去る間際、その姿さえかわいいとて思ってしまった自分が憎い。
今頃、騎士団寮で項垂れているのではなかろうか。それとも美味しいご飯をもらって悩みなど吹き飛んでいる頃だろうか。いずれにせよ、本来のテオドアではなくブラックシェパードの姿で想像してしまったので、自分の頭はもう手が負えないのかもしれなかった。
「失礼。ビア様、今、よろしいでしょうか?」
顔を枕にぐりぐり擦り付け自己嫌悪に悶絶していたところで、ドアの向こうからノックの音とメイドの声が聞こえた。
「は、はいっ!少々お待ちください!」
すぐさま起き上がりさっと髪と服を整える。最後に鏡で軽くチェックを終えると、ビアは自室のドアに手をかける。一礼して部屋に入ってきた。
「急ですが、フェリクス様より言伝があり、十六時からお茶でもいかがかとのことです。なんでも話したいことがあるそうで……」
メイドの言葉に一瞬首を傾げる。十六時まであと二時間ほど。フェリクスが急な誘いとは珍しい。――とはいえ今日は予定は入っていないので問題はなかろう。ビアが軽やかに返事をすると、お茶会に向けて身支度を始めることにした。
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