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淡い気持ち
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ユリウスが学園に戻った、その日ーー
「……聞いた!?フィナンシェ家のユリウス様が帰ってきたって!!」
「背、伸びすぎじゃない!?前は細い少年だったのに……」
「なにあの落ち着き……素敵だわ」
学園は、朝からざわめいていた。というより――騒然としていた。
背が高く、引き締まった体躯、無駄な動きのない所作。
以前の面影を残しつつも、すっかり“立派な青年”になったユリウスの存在感は、圧倒的だわ。
「……ふん!何よ、ついこの前までガイア王子ガイア王子!とか言ってたくせに!大体みんなおかしいですわ!
周りをみたら、それなりにもっと良い殿方がいるのに!」
「うん、ソラは素敵よね。ミーアさん」
「ぎゃっ!?な、ななんで、後ろに!?と、とりあえずこの前の事、今週末に伺いますわ!」
そう走り去るミーアさんだった。
「ユリウス様、今度のお茶会、ご一緒に――」
「……」
「ユリウス様!お話だけでも――」
「……」
誰も私に目もくれず、ユリウス一直線だった。
彼がまともに言葉を交わすのは、私とソラ――それだけだった。
「あ、ユリウス様、薬草庫の鍵どこだっけ」
「第二棚の奥」
「忘れてた。サンキュ」
「……姉上、足は?」
「え!もう平気よ」
その様子を見て、周囲の令嬢たちはざわつく。
「え、なに……シャーロット様だけ特別?」
「……義姉弟、よね?」
「でも距離近くない……?」
学園だけではない屋敷には、たくさんの手紙がきていた。
「ご挨拶だけでも」
「ご縁談のご相談を」
と、婚約の話が次々と舞い込んでいた。
「……はあ。全部、断ってください」
即答するユリウスに、義母はため息をつく。
「えぇ!?せめて、顔合わせだけでも――」
「必要ありません」
義母は私をチラッと見て「そうよね、そぅだものね」と諦めた様子だった。
そんなある日、学園の中庭に、白い法衣が現れた。
「……オフィーリア様だわ」
柔らかな微笑みを浮かべ、頬を淡く染めながら歩いてくる。その視線の先は当然のように、ユリウスだった。
「お久しぶりです。ユリウス様」
呼び止められ、彼は足を止める。
「……何か」
周囲の生徒が、息を呑む。
「今度のパーティー……もし、よろしければ……」
彼女は、両手を胸元で組み、はにかむ。
「あの、、、私を、エスコートしていただけませんか?」
――一瞬。
「……え?」
「ちょっと待って、オフィーリア様って……」
「ガイア王子の……恋人よね?」
ひそひそ声が広がるものの、オフィーリアは生徒達に微笑み返す。
「え、でも……まあ、素敵じゃない?」
「ユリウス様なら……!」
阿呆な声も混じつつ、オフィーリアは、周囲を一切気にしていない様子で、ただユリウスだけを見つめていた。
ユリウスは、数秒沈黙した後‥‥
「……お断りします」
「理由を、伺っても?」
「貴女のパートナーは遠慮したいので」
「……っ!」
ユリウスは一切、表情を変えず、その言葉に、空気が凍る。オフィーリアの笑顔が、一瞬だけ揺らいでいたが、すぐに取り繕う。
「……そう。残念ですわ」
そう言って去っていく背中を、多くの視線が追った。
その場に残された生徒たちは、ざわめきを抑えきれない。
ユリウスの隣りにいたソラは肩をポンとたたきながら話す。
「……やっぱ、すげぇな」
「何が?」
「全部断ってんのに、株上がってくの」
ユリウスは、肩をすくめた。
「……面倒なだけです」
視線の先には――校舎の陰で、こちらを睨むガイア王子の姿にユリウスは気づく。
「……師匠も言っていたが、そろそろ教会も動き出しだすはずだ。ウィリアム王太子と会わないと…」
「え、ごめん。師匠って?」
「…アドルフ師匠…」
「何それ、そんな関係になってたのか!?てか、もう少し聖域に詳しいこと話せよ!?」
学園の中庭私は一人でぼーとしていた。
……周囲の令嬢たちの、あの視線、、
「前前世でも、、、モテてたわね」
ただその時は、オフィーリアのそばにいた……。
ユリウスとは以前よりかは、仲良くなったとは思うけど、もしかしたらユリウスはオフィーリアに興味を持つかもしれない……そう思うと、、イライラしてくる。何故かイライラする。
「こういうときはビールが飲んで忘れたい」
そう呟いてると、目の前にユリウスが現れた。
「わっ!ビックリするじゃない!」
「……姉上、まさか隠れてビールなど飲んでませよね」
疑う眼差しに、私は否定をするもののまだ疑うユリウスだった。
「ソラは?」
「……購買のパンを買いに行くといきました」
「…そっか…」
「「………」」
何を話せば良いのかしら、バタバタしててゆっくり話す事もなかったし、色々聞きたいこともたくさんある。
だけど、顔が、熱くなる自分を知られたくない。
「……背が大きくなったわよね」
まだ私より小さな少年だったユリウスは、私の言葉にただ頷き微笑み返してくれた。
その距離、その声、その表情が胸の鼓動が、うるさすぎて、私はそれ以上、何も言えなかった。
――きっと、この気持ちに名前をつけたら、
もう戻れなくなりそうで、そう思いながら、
私はただ、視線を落とした。
少し離れた場所で、パンを3つ持っているソラが腕を組み、二人を見つめていた。
「……まったく、ありゃ、自覚してんのかね」
そう寂しそうに、その場から立ち去っていった。
「……聞いた!?フィナンシェ家のユリウス様が帰ってきたって!!」
「背、伸びすぎじゃない!?前は細い少年だったのに……」
「なにあの落ち着き……素敵だわ」
学園は、朝からざわめいていた。というより――騒然としていた。
背が高く、引き締まった体躯、無駄な動きのない所作。
以前の面影を残しつつも、すっかり“立派な青年”になったユリウスの存在感は、圧倒的だわ。
「……ふん!何よ、ついこの前までガイア王子ガイア王子!とか言ってたくせに!大体みんなおかしいですわ!
周りをみたら、それなりにもっと良い殿方がいるのに!」
「うん、ソラは素敵よね。ミーアさん」
「ぎゃっ!?な、ななんで、後ろに!?と、とりあえずこの前の事、今週末に伺いますわ!」
そう走り去るミーアさんだった。
「ユリウス様、今度のお茶会、ご一緒に――」
「……」
「ユリウス様!お話だけでも――」
「……」
誰も私に目もくれず、ユリウス一直線だった。
彼がまともに言葉を交わすのは、私とソラ――それだけだった。
「あ、ユリウス様、薬草庫の鍵どこだっけ」
「第二棚の奥」
「忘れてた。サンキュ」
「……姉上、足は?」
「え!もう平気よ」
その様子を見て、周囲の令嬢たちはざわつく。
「え、なに……シャーロット様だけ特別?」
「……義姉弟、よね?」
「でも距離近くない……?」
学園だけではない屋敷には、たくさんの手紙がきていた。
「ご挨拶だけでも」
「ご縁談のご相談を」
と、婚約の話が次々と舞い込んでいた。
「……はあ。全部、断ってください」
即答するユリウスに、義母はため息をつく。
「えぇ!?せめて、顔合わせだけでも――」
「必要ありません」
義母は私をチラッと見て「そうよね、そぅだものね」と諦めた様子だった。
そんなある日、学園の中庭に、白い法衣が現れた。
「……オフィーリア様だわ」
柔らかな微笑みを浮かべ、頬を淡く染めながら歩いてくる。その視線の先は当然のように、ユリウスだった。
「お久しぶりです。ユリウス様」
呼び止められ、彼は足を止める。
「……何か」
周囲の生徒が、息を呑む。
「今度のパーティー……もし、よろしければ……」
彼女は、両手を胸元で組み、はにかむ。
「あの、、、私を、エスコートしていただけませんか?」
――一瞬。
「……え?」
「ちょっと待って、オフィーリア様って……」
「ガイア王子の……恋人よね?」
ひそひそ声が広がるものの、オフィーリアは生徒達に微笑み返す。
「え、でも……まあ、素敵じゃない?」
「ユリウス様なら……!」
阿呆な声も混じつつ、オフィーリアは、周囲を一切気にしていない様子で、ただユリウスだけを見つめていた。
ユリウスは、数秒沈黙した後‥‥
「……お断りします」
「理由を、伺っても?」
「貴女のパートナーは遠慮したいので」
「……っ!」
ユリウスは一切、表情を変えず、その言葉に、空気が凍る。オフィーリアの笑顔が、一瞬だけ揺らいでいたが、すぐに取り繕う。
「……そう。残念ですわ」
そう言って去っていく背中を、多くの視線が追った。
その場に残された生徒たちは、ざわめきを抑えきれない。
ユリウスの隣りにいたソラは肩をポンとたたきながら話す。
「……やっぱ、すげぇな」
「何が?」
「全部断ってんのに、株上がってくの」
ユリウスは、肩をすくめた。
「……面倒なだけです」
視線の先には――校舎の陰で、こちらを睨むガイア王子の姿にユリウスは気づく。
「……師匠も言っていたが、そろそろ教会も動き出しだすはずだ。ウィリアム王太子と会わないと…」
「え、ごめん。師匠って?」
「…アドルフ師匠…」
「何それ、そんな関係になってたのか!?てか、もう少し聖域に詳しいこと話せよ!?」
学園の中庭私は一人でぼーとしていた。
……周囲の令嬢たちの、あの視線、、
「前前世でも、、、モテてたわね」
ただその時は、オフィーリアのそばにいた……。
ユリウスとは以前よりかは、仲良くなったとは思うけど、もしかしたらユリウスはオフィーリアに興味を持つかもしれない……そう思うと、、イライラしてくる。何故かイライラする。
「こういうときはビールが飲んで忘れたい」
そう呟いてると、目の前にユリウスが現れた。
「わっ!ビックリするじゃない!」
「……姉上、まさか隠れてビールなど飲んでませよね」
疑う眼差しに、私は否定をするもののまだ疑うユリウスだった。
「ソラは?」
「……購買のパンを買いに行くといきました」
「…そっか…」
「「………」」
何を話せば良いのかしら、バタバタしててゆっくり話す事もなかったし、色々聞きたいこともたくさんある。
だけど、顔が、熱くなる自分を知られたくない。
「……背が大きくなったわよね」
まだ私より小さな少年だったユリウスは、私の言葉にただ頷き微笑み返してくれた。
その距離、その声、その表情が胸の鼓動が、うるさすぎて、私はそれ以上、何も言えなかった。
――きっと、この気持ちに名前をつけたら、
もう戻れなくなりそうで、そう思いながら、
私はただ、視線を落とした。
少し離れた場所で、パンを3つ持っているソラが腕を組み、二人を見つめていた。
「……まったく、ありゃ、自覚してんのかね」
そう寂しそうに、その場から立ち去っていった。
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