麗しの殺し屋御殿

妃月未符

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第1幕 ~レモンドーナッツと味わいたいもの~

1

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 とっさに応えられなかった。

 五人の男にというより自分自身に確認するために、華は言葉を反芻する。

「みなさんは、人を消すことを専門にお仕事をしている……?」

 身近にいるという話はフィクションの中でしか聞いたことがないが。
 それはつまり。

「殺し屋、さん……?」

 沈黙と彼らの表情が肯定を示す。

「ものすごく、強い……!」

 一種の高揚状態が、脳を普段よりも早く回転させ、結果。
「それならっ」

 目の前にいる碧の両手を華は握っていた。

 頭の中の斜め上の部分がそんな自分を意外そうに見下ろすのを感じる。

 異性の手を握るなんて、今まで一度としてしたことがないし、平生の自分では考えられないと。

「今とある人たちから追われていて……少しの間かくまってほしいんです!」
「……!」

 ところが。
 碧は言葉を失ったかのように口を開閉し、握られた手をまじまじと見つめるだけだ。

 あわてて手を離して反省する。
 彼も異性に免疫がないのかもしれない。
 澄春がそれに近いことを言っていたのをぼんやりと思い出す。 
 この美貌で意外だが。

 かわりに返答したのは凪だった。
 首筋に手をあてた拍子に、ふんわりと髪が持ち上がる。

「おや、つまらないねぇ。かくまってほしい、それだけ? 僕としてはそろそろ派手に暴れたいんだけど……」

 澄春がやんわりと続きをひきとる。

「まぁ、いいんじゃない? 部屋は余ってるんだし。護衛が殺し屋5人なんて、これ以上ないほど安全だしね」

 さらりと言われたが。
 予想していたがやはり、そういうことなのだろう。

「それに、そのうちに誰か、消したい人が出てくるかもしれない。華ちゃんがそれを見つけて、我々が任務を果たすまでって約束でいかがかな?」
 顎に親指の腹をあて、そう提案する澄春はどこか楽し気だ。
 ちゃん付けで呼ばれたことに戸惑いはあったものの、ここはひとまずスルーすることにする。

「あ。はい。それで、いいです。いつまでも居座るわけにはいかないし」

「ふん。しゃーねーな」

 けだるげに短髪をかきあげながら、路空が斜め前方に体重を傾けて睨んでくる。

「とっとと憎いやつ見つけろ。『わたしは誰も憎みません』とか聖母づらしていすわるなんて、こすいことは考えんなよ」

 うう。この路空って人、ちょっといじわるかも。
 そんなふうに思いつつ、

「そ、それは。もちろん……」

 やや気おされながら、それでもきっぱりと華は伝えた。

「そこは、だいじょうぶです。わたし、そんなできた人間じゃないですし……」

 ふーんと、険しい目つきはそのままに路空が体勢を戻したのが合図のように、

「決まりですね」

 湊が結論付けた。

「碧くん?」

 それまでずっと自分の手を見つめ続けていた碧は、澄春の呼びかけで我に返ったように、華に向きなおる。

 彼は少しだけはにかんだように、微笑んだ。


「では、——我々の殺し屋御殿にようこそ、華さん」
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