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第3幕 ~栄光の蜜~
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「すごいね、華ちゃん。僕はきみを誇りに思うよ」
「すべては、華さんの努力のたまものでございます」
十月も半ばに差し掛かったある日。
澄春が仕事を終えて御殿に帰宅すると、華を中心に輪ができあがっていた。
何度目かの光景に相好を崩しながら、キッチンへと足を踏み入れる。
「みなさん。ありがとうございます……!」
凪は華の手をとって踊りだし。
いつもの美辞麗句で滔々と華の偉業らしき事柄を称える湊の傍ら。
「みんな盛り上がっているね。なにかあったのかい?」
澄春にまず答えたのは碧だった。
「澄春さん。それは直接、華さんから――」
「——はい」
くるくると凪に回されて眩暈を抑えながら、華が答える。
「新しい事務所が、出演作品の宣伝を大幅にしてくれて。子ども向け動画とのタイアップやグッズ化も実現しそうな勢いで。そのおかげか、『ラブリー戦士』の視聴率が今月アニメの中で一位になったって、キッズ向け雑誌で報道されたんです!」
「華さんの演じているキャラクターも、大きく特集されているんですよ」
妹もファンで、と碧がさしたのは、生き生きとした金の髪の女子キャラクターだ。
「わぁ。それはめでたいなぁ。お祝いしなくちゃね」
「澄春先生。そう言ってまた飲みすぎるのはダメですからね?」
「これはまた、凪くんにはかなわないな」
そんな軽口を交わしつつも、込み上げてくる温かな心地に澄春もしみじみと言わずにはいられない。
「でもほんとうの話。華ちゃんがここに来てから、度々屋敷が祝福ムードに包まれて。みんながとても活き活きしたよ」
「まったくですね。華さんは我々を照らす太陽の女神です!」
賛美の言葉には事欠かない湊も、静かに頷く碧も。
一人傍らでまだ、不可思議な踊りを踊る凪も。
そのことを誰一人、否定する術を持たない。
「ま、よく頑張ったんじゃねーか?」
路空が持ち出してきた大ぶりの皿には、生クリームを塗ったスポンジの上、ルビーとミルク色のいちじくが、切った断面を重ねた花形に、所狭しと並べられている。
「路空! その豪華なケーキは」
「おしゃれでおいしそうだね」
にっと、路空は口元を歪めた。
「今夜みんなで食べるぞ」
「ありがとう、路空!」
「……別に。俺が作りたかっただけだし」
華の満面の笑顔に、路空は少しだけ気まずそうにそっぽを向く。
「では、会のはじまりですね。こほん。僭越ではありますが、謹んで私、浦湊が開式の辞を――」
「やたらなげー挨拶したがる奴はほっといて、さっさと食おうぜ」
「なっ。路空……」
「今回ばかりは、路空に一票だな」
「碧さんまで……」
「ケーキが終わったあとは、みんなで舞踏会はどうかな?」
祝福ムードになってしまう一同を見守りながら、澄春は一人、微笑んだ。
「う~んこれはひょっとすると、絶好にいいタイミング、かもしれないね……」
だが、ワインセラーへ向かう際に呟かれたその一言は、その場の喧騒に溶け、聞きとがめる者はいないのだった。
「すべては、華さんの努力のたまものでございます」
十月も半ばに差し掛かったある日。
澄春が仕事を終えて御殿に帰宅すると、華を中心に輪ができあがっていた。
何度目かの光景に相好を崩しながら、キッチンへと足を踏み入れる。
「みなさん。ありがとうございます……!」
凪は華の手をとって踊りだし。
いつもの美辞麗句で滔々と華の偉業らしき事柄を称える湊の傍ら。
「みんな盛り上がっているね。なにかあったのかい?」
澄春にまず答えたのは碧だった。
「澄春さん。それは直接、華さんから――」
「——はい」
くるくると凪に回されて眩暈を抑えながら、華が答える。
「新しい事務所が、出演作品の宣伝を大幅にしてくれて。子ども向け動画とのタイアップやグッズ化も実現しそうな勢いで。そのおかげか、『ラブリー戦士』の視聴率が今月アニメの中で一位になったって、キッズ向け雑誌で報道されたんです!」
「華さんの演じているキャラクターも、大きく特集されているんですよ」
妹もファンで、と碧がさしたのは、生き生きとした金の髪の女子キャラクターだ。
「わぁ。それはめでたいなぁ。お祝いしなくちゃね」
「澄春先生。そう言ってまた飲みすぎるのはダメですからね?」
「これはまた、凪くんにはかなわないな」
そんな軽口を交わしつつも、込み上げてくる温かな心地に澄春もしみじみと言わずにはいられない。
「でもほんとうの話。華ちゃんがここに来てから、度々屋敷が祝福ムードに包まれて。みんながとても活き活きしたよ」
「まったくですね。華さんは我々を照らす太陽の女神です!」
賛美の言葉には事欠かない湊も、静かに頷く碧も。
一人傍らでまだ、不可思議な踊りを踊る凪も。
そのことを誰一人、否定する術を持たない。
「ま、よく頑張ったんじゃねーか?」
路空が持ち出してきた大ぶりの皿には、生クリームを塗ったスポンジの上、ルビーとミルク色のいちじくが、切った断面を重ねた花形に、所狭しと並べられている。
「路空! その豪華なケーキは」
「おしゃれでおいしそうだね」
にっと、路空は口元を歪めた。
「今夜みんなで食べるぞ」
「ありがとう、路空!」
「……別に。俺が作りたかっただけだし」
華の満面の笑顔に、路空は少しだけ気まずそうにそっぽを向く。
「では、会のはじまりですね。こほん。僭越ではありますが、謹んで私、浦湊が開式の辞を――」
「やたらなげー挨拶したがる奴はほっといて、さっさと食おうぜ」
「なっ。路空……」
「今回ばかりは、路空に一票だな」
「碧さんまで……」
「ケーキが終わったあとは、みんなで舞踏会はどうかな?」
祝福ムードになってしまう一同を見守りながら、澄春は一人、微笑んだ。
「う~んこれはひょっとすると、絶好にいいタイミング、かもしれないね……」
だが、ワインセラーへ向かう際に呟かれたその一言は、その場の喧騒に溶け、聞きとがめる者はいないのだった。
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