麗しの殺し屋御殿

妃月未符

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第4幕 ~愚かな天使~

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「なるほど。華ちゃんをつけていた女性か」

 ソファに腰掛けた澄春が神妙に呟く。

 御殿のリビング。深夜。
 華を除いたメンバーの全員が集合していた。

 報告があるという凪を囲んで、ソファ席を囲っている。

「父親の手先ってか。相変わらず性質わりい。手っ取り早くあぶり出しちまうか。出没場所は絞れてんだろ」

 ソファに両手を投げ出して毒づく路空の傍らで、碧が思案気に手を顎にあてる。

「だがそれには、華さんをおとりにする必要がある。危険だな」
 呟きの後、ソファ席からひらりと立ちあがった者があった。
 湊である。

「では、我々のうち誰かが、華さんとともにおとり役を務めるのはいかがでしょう? もう一人を観察役に置き――ターゲットが現れたらしとめるのです」

「ふむ。まぁ今のところはそれが妥当なところだね」

 澄春の相槌を受け、胸に手をあてつついつものポエム口調で湊は語る。

「憚りながら、この私、隠密行動には長けております。観察役には適任かと」

「そうだな。では、しとめる役は湊に――」

「今回は、僕にやらせてくれませんか? 碧にいさん」

 会話の流れを遮った凪に、一同の視線が集う。

「ふむ。凪も気配を消すのには慣れているから、それはかまわないが。なにか理由が?」

 軽く腕を組みながら、いつもの食えない表情を、凪は心持ち曇らせる。

「明確なものはなにも。ただ……この胸がざわつくのです。華ちゃんを揺さぶるあの方を、生かしてはいけないと……」
「凪」
 胸に手をあて切なげに語るがやはりその姿は危うげで、碧の忠告を誘う。

「その女性はターゲットからは外れている。ほどほどにしておくんだ」

「ふむ。つまらないですねぇ」

「凪くん。私たちのお客様は華ちゃんだ。その女性が間接的にしろ、華ちゃんの心に害があろうことはわかるけれど。彼女の指示がないのに、ターゲット外の人をねらうわけにはいかないよ」

「澄春先生がそう言うのなら、わかりました。……たぶん」

「わかってねーな。こりゃ」

 苦虫をかみつぶすように顔を歪める路空の隣で、湊が纏め上げる。
 
「では今回は、出る幕を凪くんにお譲りするとしましょう」

 と、作戦が進むはずが――またしても凪の中止が入る。

「いいえ。実は湊さんにも、お願いしたいことがあるのです」

「おや、なんでしょうか」

「阿久津菜々緒という女性の身辺を、隠密行動で調べてほしいのです」

 うっすらと、儚げに微笑むその瞳の下に底なしの闇が宿るように見えて、一瞬ほかの四人は黙した。

「驚きましたね。凪くん。どうやって、華さんを追っていた女性の名前を」
「華ちゃんが知っていました。長年、父親の仕事に、些末事にと、深く関わっているようですね」
「なるほど。そういうことでしたか」
 眼鏡の位置を直し、湊は路空に向きなおる。

「わかりました。ご期待に沿う働きをいたしましょう」

「では、おとり役は俺が務める。それでいいか?」

 そう提案する碧に、路空が手を上げる。

「俺、やってもいいけど。碧にいも色々忙しいだろ?」

「いや、路空は貴重なターゲットとの連絡係だ。なにか相手に動きがあったとき、すぐに対応できたほうがいい」

「そうかぁ? 別に一日くらい――」
「こういう時は先輩を頼れ」

 押し問答が始まりそうに思えた時、ふふふと含んだ笑い声がそれを遮った。

 口元に手をあて、澄春が楽しげに笑っている。

「みんな、お姫様を護衛したくてしかたないんだね」

「別にそういうんじゃねぇっすよ……」

 うっすらと顔を赤らめ、路空は否定するが。

「……」

「おや? 碧くんは否定しないのかい?」

「と、とにかく。そういう配置でいきます」

 彼にしては歯切れ悪く、碧は会議のまとめに入る。

「決行日は、一週間後からターゲットが現れるまでの毎日。場所は、凪と華さんが先日行ったモールがいいでしょう」
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