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終幕 ~頭の中の銃弾~
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「姿を現してくださるのを待っていました。暗殺者様」
夜明けは、全身を抱き留めるぬくもりとともに、訪れた。
意識を取り戻した時、華は、海が見下ろせる空港の屋上の柵を乗り越え、その際にいた。
後ろから、抱き留め、声を発しているのは、碧だ。
――暗殺者様。
そう呼ばれたとき、呼応するように滝のような涙が頬を伝う。
「暗殺者は……わたし?」
ふっと力が抜け、倒れそうになるのをなおも、強い力で後方へ引き寄せられる。
すぐ横にある碧の顔がそっと頷いた。
「わたしは、ずっと、わたしを消したかった……」
視界が見えなくなる。
世の中に、家族に適応できない自分を憎み。
ついにはいなくなれと呪う。
「暗殺者はあなたです。華さん」
死ねという赤くおどろおどろしい文字も。
食事に混入させた毒。
部屋の戸に仕込んだナイフ。
そして、殺意のこもった手紙。
「ぜんぶ、わたしが、わたしに……」
「でもそれは、ほんとうにあなたの声ですか?」
自分を殺してしまえと――。
「ほんとうに、そんなふうに考えたかったのですか」
「……」
ずっと謎だった、暗殺者の存在。
それが頭の中で今、自動しかけのように、口を開く。
「わたしは」
「わたしは一人ではなにもできなくて」
「いつだって家族の言うがまま。言いたいことも飲み込んできた、わたしに似合いです」
「みなさんを危険にさらさないと、何一つ――」
あやすように頭を抱き寄せられる。
屋上の激しい風の中ふいにレモンドーナッツが香った気がした。
「素直で」
とある少女と語った戦士のキャラクター。黄色いリボン。
「優しくて」
御殿と呼ばれる、高級マンションのリビング。季節の料理に、響く笑い声。
「優しすぎて」
帰属する家族というもので得られなかったなにかの欠片が埋まっていくような、どこか懐かしい映像が脳裏に浮かんでは、消えゆく。
「理不尽な外からの声までも抵抗できずに、とりこんでしまった。ご自身の中に」
華は、振り返る。
「碧、さん……」
「銃弾を頭に抱えているのはもう、限界ではないですか」
「うっ。……ううっ」
回される碧の腕に縋りながら、想う。
わたしは、ずっと死にたかった。
いや、違う。
死にたいと言う言葉で覆っていた感情は。
自由に生きたい。
心も身体も時間も、搾取されない。
そんな自由が、ほしかった。
「大切に……されたい」
ようやくたどり着いた。
答えに対する答えを。
しゃくりをあげながら、待つ。
「そんな簡単なことでしたら、いつでもしてさしあげます。あなたは我々にとってすでに欠くことのできない大切な人ですから」
片腕がすっと目の前に差し出される。
「どうぞ。俺と、仲間のもとへお帰り下さい。お客さま」
「碧さん。みなさん……」
何度も頷き、顔をぐちゃぐちゃにしながら華は、頭を下げた。
夜明けは、全身を抱き留めるぬくもりとともに、訪れた。
意識を取り戻した時、華は、海が見下ろせる空港の屋上の柵を乗り越え、その際にいた。
後ろから、抱き留め、声を発しているのは、碧だ。
――暗殺者様。
そう呼ばれたとき、呼応するように滝のような涙が頬を伝う。
「暗殺者は……わたし?」
ふっと力が抜け、倒れそうになるのをなおも、強い力で後方へ引き寄せられる。
すぐ横にある碧の顔がそっと頷いた。
「わたしは、ずっと、わたしを消したかった……」
視界が見えなくなる。
世の中に、家族に適応できない自分を憎み。
ついにはいなくなれと呪う。
「暗殺者はあなたです。華さん」
死ねという赤くおどろおどろしい文字も。
食事に混入させた毒。
部屋の戸に仕込んだナイフ。
そして、殺意のこもった手紙。
「ぜんぶ、わたしが、わたしに……」
「でもそれは、ほんとうにあなたの声ですか?」
自分を殺してしまえと――。
「ほんとうに、そんなふうに考えたかったのですか」
「……」
ずっと謎だった、暗殺者の存在。
それが頭の中で今、自動しかけのように、口を開く。
「わたしは」
「わたしは一人ではなにもできなくて」
「いつだって家族の言うがまま。言いたいことも飲み込んできた、わたしに似合いです」
「みなさんを危険にさらさないと、何一つ――」
あやすように頭を抱き寄せられる。
屋上の激しい風の中ふいにレモンドーナッツが香った気がした。
「素直で」
とある少女と語った戦士のキャラクター。黄色いリボン。
「優しくて」
御殿と呼ばれる、高級マンションのリビング。季節の料理に、響く笑い声。
「優しすぎて」
帰属する家族というもので得られなかったなにかの欠片が埋まっていくような、どこか懐かしい映像が脳裏に浮かんでは、消えゆく。
「理不尽な外からの声までも抵抗できずに、とりこんでしまった。ご自身の中に」
華は、振り返る。
「碧、さん……」
「銃弾を頭に抱えているのはもう、限界ではないですか」
「うっ。……ううっ」
回される碧の腕に縋りながら、想う。
わたしは、ずっと死にたかった。
いや、違う。
死にたいと言う言葉で覆っていた感情は。
自由に生きたい。
心も身体も時間も、搾取されない。
そんな自由が、ほしかった。
「大切に……されたい」
ようやくたどり着いた。
答えに対する答えを。
しゃくりをあげながら、待つ。
「そんな簡単なことでしたら、いつでもしてさしあげます。あなたは我々にとってすでに欠くことのできない大切な人ですから」
片腕がすっと目の前に差し出される。
「どうぞ。俺と、仲間のもとへお帰り下さい。お客さま」
「碧さん。みなさん……」
何度も頷き、顔をぐちゃぐちゃにしながら華は、頭を下げた。
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