騎士学生と教官の百合物語

コマドリ

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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第256話 天賦の才

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魔力の霧が晴れるころには、グラウンドは森に変わっていた。

エリシア「これは…まさかモニカが、あの時のマリスと同じことをしてみせるとは…!」

マリスミゼル「……フレイが『すでに』植物魔法を覚えれる基礎を作っていてくれていたので、仕事の合間などで効率よく最短に教えることができました。

フレイの知識と、生徒の適性を見る眼には、私も昔から変わらず今でも驚かされますよ…いったい『いつ』から、そしてどこまでモニカさんの才能を『見通して』いたのでしょうね。」

モニカ「まだまだいきます! 大地に満ちたる命の躍動、その花を咲かせ、全ての者にあらゆる祝福を!」

モニカが詠唱し魔法を発動すると…地面に琥珀色の花が咲き、琥珀色の花粉を一気に撒き散らし始める。


三姉妹「っ…これは…!?」

コトリ&セイバー「身体に力が…!」

モニカ「特製の花粉です…私が敵と認識した人の動きは鈍らせ、私が味方と認識した人の動きは活性化させる…そんなプログラムを魔法に組み込みました。

このまま一気に叩きますよ、コトリちゃんにセイバーちゃん!」

コトリ「ん…いく…!」

セイバー「ええ、了解ですわ!」

あらかじめ用意していたのか、三姉妹の真下から、勢いよく地面が盛り上って太い木が現れ、それにより三姉妹たちを分断させて…モニカとアルティナ&クレイシア、私&セイバーとドウセツになる状況を作り出した。


2人の戦乙女を捕まえようと、硬質化させた大量の蔓で追いかけまわし…2人は手に持つ槍で、その蔓を裂いたり振り払ったりし逃れる。

モニカ「ーーー新緑の射手の戯れ」

クレイシア「あぁんもう! まるでこっちの動きを予測した攻撃、すっごく厄介極まりないんですけどぉ!」

アルティナ「勘の良さ、察知能力、情報分析能力…そして、それを活かせるだけの手足のように自由自在に動かせる植物魔法…全てが噛み合った、実に見事な戦い方です…まるでマリスミゼルと戦っているみたいですよ。」

その動きに合わせ、大樹の枝に着いていた無数の葉 が『硬質化』し刃となって、戦乙女に襲いかかる…なんとか躱し続ける戦乙女だが、2人の動きを予め予測した猛攻の数々に、2人は驚きなどを隠せなくて。


アルティナ「しかし、動きを鈍らせているとはいえ、私たち2人を1人で倒せるとは思わないでください…クレイシア姉さま。」

クレイシア「OK! 2人同時にいっくよぉ! 我は射手、走れ、閃光よーーーレイ」

無数の小さな光のキューブが、アルティナさんとクレイシアさんの周囲に浮かんで…光魔法によるビーム状の弾丸が、多角的に光が降り注ぎ、着弾すると爆発を起こし、硬質化された蔓を砕き、モニカを襲う。


モニカ「……別に倒せなくてもいいんです…私が足止めしている間に、コトリちゃんとセイバーちゃんがドウセツさんをやっつけてくれますから…!」

クレイシア「おお…あれを全部防ぎきっちゃうなんて、モニカは本当にすっごいね。」

アルティナ「彼女たちへの信頼ですか。確かにあの2人なら可能性はなくはないです…ですがドウセツ姉さまには『切り札』がありますので、その可能性も1%に満たないですが。」

硬質化された蔓の壁を複数枚作り出し、モニカは戦乙女2人の攻撃を防ぎきっていた。


モニカが抑え込んでくれている間に、私とセイバーはドウセツさんと切り結び合っていた…剣と槍、拳と槍、ぶつかり合って大きな剣戟音が響き合う。

セイバー「もらいましたわ!」

ドウセツ「甘いですよ、ホーリーシールド…そして…我は射手、走れ、閃光よーーーレイ」

セイバー「くっ! はぁああっ!」

ドウセツ「む…まさかそんな力技で躱すとは…あの魔の状態になったコトリさんほどではないですが、やはりセイバーさんもなかなかやりますね。」

セイバーが繰り出した掌底打ちは、ドウセツさんが作り出した光の盾に防がれる…そのままドウセツさんは攻撃に移り、光魔法が放たれる。

セイバーはそれを回避するため…魔力を右足に集わせ、真下の地面を思いっきり蹴り、少し陥没させ、高低差を作り避けることに成功し…息を切らしながら距離を取る。


ドウセツ「これは私1人で、2人同時に相手にするのは骨が折れますね。やはり1人づつ落としていくのがよさそうです…重力魔法を発動されると厄介なので、まずはコトリさんから集中的に潰させてもらいます。」

セイバー「はぁはぁ…っ…コトリさん、そちらにいきましたわ!」

コトリ「んっ……ふぅ…『小鳥の舞』」

空中に魔力で無数に作り出された光の足場を使って、ドウセツさんは縦横無尽に飛び回り…超速で移動を繰り返し、槍がほぼ360度から私に向かって襲い掛かってくる。

それに対抗するために私は瞳を一度閉じて…自分の中の『スイッチ』を入れると、瞳を開けて身体の感覚が研ぎ澄まされる。


ドウセツ「っ…この…動きは…!?」

コトリ「……。」

頭で覚えると反応が遅れてしまうので、眼と身体で相手の動きを覚えていき…見切りの技で襲い来る刃を躱し、ドウセツさんの攻撃を学習していく。


コトリ「そこ! せゃあああ!」

ドウセツ「っ…!」

コトリ「まだまだ…はぁあああ!」

ドウセツ「く…ぅ…!」

ドウセツさんの攻撃に合わせて、私は剣を同時に叩き込み相打ちとなり…それを皮切りにステップを交え、フェイントを入れた何重の剣閃により…相打ちから徐々に優勢となり、やがて打ち勝ち、ダメージを与えつつ、ドウセツさんを地面へと撃ち落とすことに成功し。


コトリ「ーーー七翼流 闇の型 重力剣!」

ドウセツ「ホーリーシールド! ぐっ!」

私は大剣を振り下ろすような力強い踏み込みと鋭い振り下ろしで一閃し、ドウセツさんの光の盾ごと彼女を吹き飛ばす。

コトリ「七翼流 風の型 風神…ふっ!」

ドウセツ「く…ぁあ…!」

私は剣に纏わせた魔力を風魔法に変化させ…剣の鍔から『蒼い光の帯』が13本伸び…私が剣を振るうと、剣から蒼い一筋の斬撃が飛び…

その斬撃はまるで風のように盾や槍のガードを自動で避け…すり抜け、ドウセツさんへとヒットしてダメージを与える…

その斬撃を繰り出すと、その斬撃の数だけ光の帯が消費していて…込めた魔力量により、光の帯の数は変化する。


ドウセツ(これがコトリさんの剣…あの回避技術もそうですが、この歳でこれほどの域まで達しているとは…。

驚くべきことは三つの流派の剣術を教えられ、その違いによって型を一切崩すことなく『絶妙なバランスで、複合させ自分の型へと…自分の剣へと昇華し始めて』いることです…

それも七翼流の技にだけじゃない…彼女の全ての動作の中に『王国騎士の剣術』『教会騎士の剣術』の剣筋や動きが混じっている…。

異なった三つを一つにするなんて…こんな神がかったことができるなんて…しかもこの歳で…

騎士学生という歳で、七翼流の奥義を会得したことで『闇の剣聖』と呼ばれるようになった剣の天才ミクの娘で…

『剣理』の孫で、オーレリアには先を越されたが、次期『剣聖』となるであろうレインと…

『蒼天の極地を目指す剣』…王国騎士団最強の剣の腕前で『剣鬼』と呼ばれたアイリスの弟子なだけあり…

『聖剣』と『魔神の力』も含めれば、この子は…マサキと同じ称号を…『人類最強』の域まで達するのではないだろうか…。)

普通なら今あるフォームに、違うフォームも使えと教えられたら、感覚が狂って、どちらも混じって訳がわからなくなってしまい、型のバランスを崩し全てがぐちゃぐちゃになってしまうものだ…しかしそれが見られなく、むしろ高い完成度を誇る剣術へと昇華されてることにドウセツは驚く。

銀色の剣を持つ王国騎士アイリスの剣術、教会騎士レインの剣術…の強みである『速さ』…

蒼の剣を持つ王国騎士アイリスの剣術、王国騎士キールの剣術…の強みである『力強さ』…

アイリスの魔法騎士の知識、レインの魔法剣…の強みである『魔法と剣の奇跡の複合剣術』…

それら教わった、または見て覚えた彼女は、殺さず全てを活かし、自分だけの剣への糧としていた……。
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