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6話 ネギを投げたら、ねぎらわれた。
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駄洒 麗(だじゃ れい)、35歳。
職業:フリーター、
特技:ダジャレ、
人生:割と崖っぷち。
でもそんな彼に、毎日続けているルーティンがある。
「一日一ダジャレ」
朝起きてから夜寝るまで、どんなことがあっても、必ず一つはダジャレを生み出す。
それが彼の、たったひとつの矜持だった。
⸻
今日は日曜日。
風も穏やかで、雲ひとつない空が広がっていた。
「……天気良すぎて、洗濯物も“天気に舞って喜んでる”って感じだな。いや、もうちょいひねれんか……」
麗はボロボロの洗濯機を回しながら、頭の中で軽くダジャレを回転させていた。
だが、どうにも言葉がまとまらない。
「ダメだ……今日は“湧かない”日かもな……」
冷蔵庫を開ける。中には卵一つ、冷凍ご飯、そして――一本の長ネギ。
「……こいつしかいないか」
味噌も切れている。醤油は残り数滴。
だが、空腹は人を強くする。
麗は小さなフライパンに油を敷き、ごま油の香りを頼りにネギを細かく刻んだ。
ジャッと炒める。冷凍ご飯を投入。
最後に卵を絡めて、完成。
「ネギチャーハンもどき……」
彼はそれをボソボソと食べながら、何度かスマホに手を伸ばし、ため息をついた。
「いいダジャレが……浮かばん……」
⸻
昼過ぎ、麗は思い立って、久しぶりに地元の公園へ出かけることにした。
運動ではなく、言葉の風通しが悪くなったとき、外に出るのが彼なりのリセット術だ。
近所の公園は、草野球やバーベキューでにぎわっていた。
子どもたちがボールを追いかけ、家族連れがレジャーシートの上でおにぎりを頬張る。
麗は木陰のベンチに腰を下ろし、カバンからスマホを取り出す。
ダジャレ帳を開いて、昨日のエントリーを見直す。
「“スマホなくして、モバイル(もぅ倍)泣いた。”か……昨日のは良かったな……」
と、そのときだった。
「おい、そこの人!避けてくれー!」
子どもの声が響いた。
振り向いた麗の目の前に、野球ボールが迫っていた。
「うわっ!」
バチンッ!!
反射的に手にしていたカバンで防いだが、中からポロリと一本のネギが飛び出し、放物線を描いて――
「ぴゅっ」
そのままボールを投げた子どものお父さんの額に直撃した。
「……っ!!」
静まり返る公園。
お父さんはネギを握りしめ、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
「おい、お前……今、ネギ……俺に……」
麗は、まず何を謝るか、どんな言い訳をするか、頭の中がパンクしそうだった。
が――
お父さんが不意に、笑った。
「すげぇ……ナイスコントロール……!どこで練習してんの?」
「……へ?」
「いやいや、避けなきゃと思ってたら、ボールじゃなくてネギが飛んできて笑っちゃったよ。うちの子も吹き出してた」
見ると、さっきの少年も「ネギwwww」と転げ回っていた。
「ありがとうな、なんか変な空気が笑いに変わったわ。いやほんと、ねぎらうよ。マジで。」
その瞬間――
麗の脳に、ダジャレの神が降りた。
「ネギを投げたら、ねぎらわれた。」
きた。完璧だった。
「やっと今日のが……降りてきた……」
ボールとネギの奇跡の衝突。
しかも相手が“ねぎらう”と言ってくれるというミラクル展開。
ネギと感謝が交差した、言葉の奇跡。
⸻
帰宅後。
麗はすぐにダジャレ帳に記録した。
「ネギを投げたら、ねぎらわれた。」
達成感と余韻の中、彼は思った。
「ネギって、栄養だけじゃなくて、感謝も運んでくれるんだな……」
そして、冷蔵庫を見て、笑った。
「……明日はニンジン投げてみっか?」
職業:フリーター、
特技:ダジャレ、
人生:割と崖っぷち。
でもそんな彼に、毎日続けているルーティンがある。
「一日一ダジャレ」
朝起きてから夜寝るまで、どんなことがあっても、必ず一つはダジャレを生み出す。
それが彼の、たったひとつの矜持だった。
⸻
今日は日曜日。
風も穏やかで、雲ひとつない空が広がっていた。
「……天気良すぎて、洗濯物も“天気に舞って喜んでる”って感じだな。いや、もうちょいひねれんか……」
麗はボロボロの洗濯機を回しながら、頭の中で軽くダジャレを回転させていた。
だが、どうにも言葉がまとまらない。
「ダメだ……今日は“湧かない”日かもな……」
冷蔵庫を開ける。中には卵一つ、冷凍ご飯、そして――一本の長ネギ。
「……こいつしかいないか」
味噌も切れている。醤油は残り数滴。
だが、空腹は人を強くする。
麗は小さなフライパンに油を敷き、ごま油の香りを頼りにネギを細かく刻んだ。
ジャッと炒める。冷凍ご飯を投入。
最後に卵を絡めて、完成。
「ネギチャーハンもどき……」
彼はそれをボソボソと食べながら、何度かスマホに手を伸ばし、ため息をついた。
「いいダジャレが……浮かばん……」
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昼過ぎ、麗は思い立って、久しぶりに地元の公園へ出かけることにした。
運動ではなく、言葉の風通しが悪くなったとき、外に出るのが彼なりのリセット術だ。
近所の公園は、草野球やバーベキューでにぎわっていた。
子どもたちがボールを追いかけ、家族連れがレジャーシートの上でおにぎりを頬張る。
麗は木陰のベンチに腰を下ろし、カバンからスマホを取り出す。
ダジャレ帳を開いて、昨日のエントリーを見直す。
「“スマホなくして、モバイル(もぅ倍)泣いた。”か……昨日のは良かったな……」
と、そのときだった。
「おい、そこの人!避けてくれー!」
子どもの声が響いた。
振り向いた麗の目の前に、野球ボールが迫っていた。
「うわっ!」
バチンッ!!
反射的に手にしていたカバンで防いだが、中からポロリと一本のネギが飛び出し、放物線を描いて――
「ぴゅっ」
そのままボールを投げた子どものお父さんの額に直撃した。
「……っ!!」
静まり返る公園。
お父さんはネギを握りしめ、ゆっくりとこちらに歩いてきた。
「おい、お前……今、ネギ……俺に……」
麗は、まず何を謝るか、どんな言い訳をするか、頭の中がパンクしそうだった。
が――
お父さんが不意に、笑った。
「すげぇ……ナイスコントロール……!どこで練習してんの?」
「……へ?」
「いやいや、避けなきゃと思ってたら、ボールじゃなくてネギが飛んできて笑っちゃったよ。うちの子も吹き出してた」
見ると、さっきの少年も「ネギwwww」と転げ回っていた。
「ありがとうな、なんか変な空気が笑いに変わったわ。いやほんと、ねぎらうよ。マジで。」
その瞬間――
麗の脳に、ダジャレの神が降りた。
「ネギを投げたら、ねぎらわれた。」
きた。完璧だった。
「やっと今日のが……降りてきた……」
ボールとネギの奇跡の衝突。
しかも相手が“ねぎらう”と言ってくれるというミラクル展開。
ネギと感謝が交差した、言葉の奇跡。
⸻
帰宅後。
麗はすぐにダジャレ帳に記録した。
「ネギを投げたら、ねぎらわれた。」
達成感と余韻の中、彼は思った。
「ネギって、栄養だけじゃなくて、感謝も運んでくれるんだな……」
そして、冷蔵庫を見て、笑った。
「……明日はニンジン投げてみっか?」
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