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瑛士編5. 贈り物*
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お好み焼きも食べ終え、ほろ酔い気分で店を出ると、俺と彩乃は地下鉄を乗り継いで家へと帰っていった。
玄関を開けると、人の動きに反応してライトが点く。扉が閉まるのと同時に、俺は彩乃を抱きしめた。足元にバッグが落ちる。
「え?」
戸惑う彩乃を壁に押し付けるように囲い込むと、口付ける。柔らかい、唇の感触。それを愉しむように何度も繰り返し口付けてから最後に甘噛をする。薄っすらと口が開いたところにすかさず舌を滑り込ませ、歯列をなぞり、上顎をくすぐってから絡ませた。
「ん、ふぅ、んっ?」
彩乃が口の中に気を取られている隙に、右手を腰に、左手は首筋に這わせなぞり上げる。びくびくと反応する体。柔らかい抱き心地に、自分の中の欲望があっという間に高まってゆく。
「瑛士?」
ぷはっと息継ぎをするように唇を離すと、戸惑った表情の彩乃が俺を見つめた。そんな彼女の瞳を真っ直ぐ見つめ返し、自分の気持ちを吐露する。
「一週間、我慢した。彩乃に会いたくて、会えなくて。だから」
今度は耳たぶを甘噛すると、そのまま彼女の耳に息を吹き込むようにして、囁いた。
「俺にご褒美を、ちょうだい」
「あっ、んっ……!」
俺の声に反応し、体を震わせる彩乃が可愛い。すでに首まで赤くなり、壁にもたれていないと立っていることすらままならない、腰のくだけた状態だ。俺はそんな彼女をうっとりと見つめると、また唇をついばんだ。
「彩乃」
「だ、め。瑛士……」
鼻にかかった甘い声。力の抜けた体。潤んだ瞳。その全てが俺を誘っているようにしか思えない。
「彩乃」
コートの中に手を伸ばし、スカートのウエスト部分からセーターをかき分け、インナーの下に潜り込み、脇腹の素肌に触れた。
「ああんっ」
彩乃の体がまたびくつく。俺の動きに反応している。ささやかな征服欲が満たされて、そしてよりいっそう刺激された。前回付けたキスマークを思い出し、首元に顔を埋める。
「彩乃」
「だっ」
彼女を感じたくて思い切り息を吸ったら、とんっと胸に軽い衝撃を受けた。
「駄目ーっ」
思わぬ拒絶に驚いて顔を上げると、真っ赤な顔のまま、困り果てたような表情でこちらをにらみつける彩乃と目があった。
「だって私、お好み焼き臭い」
「え?」
一瞬動きが止まり、ほんの少し冷静になる。ふわりと、今まで気にもしていなかったお好み焼きソースの香りが立ち上った。
「……彩乃だけじゃなくて、俺からもしているけれど」
それに、彩乃からは彩乃のいい匂いもちゃんとしている。というか、そういえばそれしか嗅ぎ取っていなかった。
「そういう問題じゃないの」
むくれた表情で、彩乃が反論する。なんだか可笑しくなってきて、クスクスと笑いながら彼女の鼻の頭に音を立てて口付けた。
「分かった。それなら、匂いを消さなきゃね」
「えー」
思い切り警戒した表情の彩乃の手を引き、ようやく玄関先から家の中へと上がってゆく。うん。匂いを消したいのなら、先ずはお風呂に入らなくては。
ということで、数十分後──。
玄関を開けると、人の動きに反応してライトが点く。扉が閉まるのと同時に、俺は彩乃を抱きしめた。足元にバッグが落ちる。
「え?」
戸惑う彩乃を壁に押し付けるように囲い込むと、口付ける。柔らかい、唇の感触。それを愉しむように何度も繰り返し口付けてから最後に甘噛をする。薄っすらと口が開いたところにすかさず舌を滑り込ませ、歯列をなぞり、上顎をくすぐってから絡ませた。
「ん、ふぅ、んっ?」
彩乃が口の中に気を取られている隙に、右手を腰に、左手は首筋に這わせなぞり上げる。びくびくと反応する体。柔らかい抱き心地に、自分の中の欲望があっという間に高まってゆく。
「瑛士?」
ぷはっと息継ぎをするように唇を離すと、戸惑った表情の彩乃が俺を見つめた。そんな彼女の瞳を真っ直ぐ見つめ返し、自分の気持ちを吐露する。
「一週間、我慢した。彩乃に会いたくて、会えなくて。だから」
今度は耳たぶを甘噛すると、そのまま彼女の耳に息を吹き込むようにして、囁いた。
「俺にご褒美を、ちょうだい」
「あっ、んっ……!」
俺の声に反応し、体を震わせる彩乃が可愛い。すでに首まで赤くなり、壁にもたれていないと立っていることすらままならない、腰のくだけた状態だ。俺はそんな彼女をうっとりと見つめると、また唇をついばんだ。
「彩乃」
「だ、め。瑛士……」
鼻にかかった甘い声。力の抜けた体。潤んだ瞳。その全てが俺を誘っているようにしか思えない。
「彩乃」
コートの中に手を伸ばし、スカートのウエスト部分からセーターをかき分け、インナーの下に潜り込み、脇腹の素肌に触れた。
「ああんっ」
彩乃の体がまたびくつく。俺の動きに反応している。ささやかな征服欲が満たされて、そしてよりいっそう刺激された。前回付けたキスマークを思い出し、首元に顔を埋める。
「彩乃」
「だっ」
彼女を感じたくて思い切り息を吸ったら、とんっと胸に軽い衝撃を受けた。
「駄目ーっ」
思わぬ拒絶に驚いて顔を上げると、真っ赤な顔のまま、困り果てたような表情でこちらをにらみつける彩乃と目があった。
「だって私、お好み焼き臭い」
「え?」
一瞬動きが止まり、ほんの少し冷静になる。ふわりと、今まで気にもしていなかったお好み焼きソースの香りが立ち上った。
「……彩乃だけじゃなくて、俺からもしているけれど」
それに、彩乃からは彩乃のいい匂いもちゃんとしている。というか、そういえばそれしか嗅ぎ取っていなかった。
「そういう問題じゃないの」
むくれた表情で、彩乃が反論する。なんだか可笑しくなってきて、クスクスと笑いながら彼女の鼻の頭に音を立てて口付けた。
「分かった。それなら、匂いを消さなきゃね」
「えー」
思い切り警戒した表情の彩乃の手を引き、ようやく玄関先から家の中へと上がってゆく。うん。匂いを消したいのなら、先ずはお風呂に入らなくては。
ということで、数十分後──。
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